香取慎吾、変化を楽しむ心で“これまで”を脱ぎ捨てさらなる新章へ 中居正広との共演がもたらした進化を考える
香取慎吾がバージョンアップする瞬間を見届けるのは、何度目だろうか。歌って踊るだけではなくトークやコントで笑いを取るアイドルとしてバラエティ番組で輝き出したとき。ドラマ『未成年』(TBS系)や『ドク』(フジテレビ系)で胸を締めつけるような演技を見せてくれたとき。自らを“パーフェクトビジネスアイドル”と称し、光と影の部分を踏まえて“香取慎吾“をプロデュースするようになったとき……。
35年を超える芸歴の中で、香取は幾度となく“これまで”を脱ぎ捨てて、新たな自分を披露してきた。そして今まさにそのタイミングにいるように思う。それは、雑誌『週刊文春WOMAN』2023夏号(文藝春秋)での表紙のイラストの新鮮さからも感じ取れる。
香取の作品といえば、体の内側から溢れ出るものを思いつくままに絵の具で塗り重ねていくカラフルでパワフルなイメージがある。しかし、今回の表紙はこれまで香取が描いてきた絵のタッチとは大きく印象が異なるものだった。
香取慎吾×新技術が出会うワクワク感
清々しいほどに澄んだ青空。そこに大きな入道雲がそびえ、手前には向日葵を持った麦わら帽子の少女が見える。その帽子につけられたリボンの繊細なこと。どうしてこのような絵になったのか、その理由がインタビューで語られている。驚いたのが、「AIを意識した」という言葉だ。
編集部から「AIと暮らす」というテーマでの依頼を受けて、香取が今回制作にあたって思い浮かんだキーワード「入道雲」「向日葵」「麦わら帽子」という単語をAIに入力したらどんな絵が生成されるのだろうかと考え、その想像した絵を自分で描いてみたところ、今回の新しいタッチの絵になったのだという。
なんとも香取らしい、新しい技術との触れ合い方だ。先日、自身のYouTubeチャンネルで今話題のAIチャットサービス「ChatGPT」を体験したばかりの香取。そのときには、慎吾ママについて聞いたところ「情報がありません」と言われてしまったり、逆に「香取慎吾が演じた役のなかで一番人気は?」と尋ねたところ「『SMAP×SMAP』で披露された『がんばれゴエモン』のコントで演じた石川五右衛門」という、今度は香取が「知らない!」と思わず笑ってしまうような珍回答が続出。
そこで質問ではなく「歌詞を作って」「タイトルは『ユーチューブ』」と路線を変えてみると、その性能の高さに「何これ!?」と感心。だが、驚いたのはその出来上がった歌詞を見るや否や「歌ってみよっか!」と即興で曲をつけて口ずさんだことだ。
とにかく触れてみる。そして楽しく遊んでみる。そうしてSNSを使いこなすようになっていったことを思い出す。気づけば、コロナ禍のライブでMC代わりにスマホで文字入力をしてみたり、個展では会場に訪れたお客さんとリモートで会話するなんていう取り組みを披露したりと、いつの間にか技術を習得するばかりではなく、そこから「こんなことができるんだ!」と私たちを喜ばせてくれた。
新技術の出現によってクリエイティブの形が大きく変化していきそうな昨今、そのフットワークの軽さが強みとなることは間違いない。香取が次なるエンターテインメントをさらに広げていくのではないかという予感がしてワクワクする。むしろ、そんな時代の到来を予測して、よりのびのびと活動できる場所を求めて新しい地図を広げたのではとさえ思わせるほどだ。