LiSA、ちゃんみな、BE:FIRSTらのボーカルを支える重要人物 佐藤涼子=りょんりょん先生の内面まで鍛え上げるボイトレ術
りょんりょん先生が指導するメンタルの在り方
りょんりょん先生、LiSA、ちゃんみなのコメントからはっきり分かることがひとつある。それは、歌というのはメンタリティと密接に繋がっているということだ。
心が動揺したり、マイナスな感情になったりすると、それが歌にそのまま表れる。良い歌を披露するためには、気持ちの部分から良い方向へと向かわせなければならない。もしも内面がマイナス気味になっていたら、体や表情を元気に楽しく動かして、力づくでも前向きな方へと持っていく。それが良い歌唱のきっかけになる。LiSAに対する「喉おかしいかも、出にくいかもって思ったら、なおかつ余裕の笑顔で」というアドバイスはまさにそういう意味が込められていたように思える。
たしかに2023年5月8日放送『ラヴィット!』(TBS系)にりょんりょん先生が出演した際も、元プロサッカー選手の本並健治のボイストレーニング時、「自分を見て笑うことでより声が出やすくなる」と教えていた。ポジティブであることが良い歌を歌う一番の秘訣なのではないだろうか。
りょんりょん先生は、キミノオルフェの蟻との対談のなかで、ネガティブな心情を持つことを否定はしていない。むしろそれが音楽作りの原動力になることがあるとしている。それでも「『ネガティブだけ』というのはダメ」と語っている。
「作品を作るときはネガティブ満載で書いてもらっていいし、ステージの上では、そういう自分の素直な気持ちや表情を全部歌に出してもらいたい。でもそれ以外は、ちょっと「いい人」というのを足さないとダメなんです」(※1)
そのためには人との接し方などとあらためて向き合い直す必要があると同インタビューでは語っている。「ボイストレーニングでいうと技術だけを鍛えようとするのは、枝葉だけを育てるのと同じで、それだけやってもダメ。根っこのところから、ちゃんと桜が咲く木にしていきましょう、と教えるのが私のやり方です」というコメントは、りょんりょん先生の指導のモットーが詰まっているのではないだろうか。
アーティストというのは、私たちが思っている以上に繊細で孤独なものなのかもしれない。りょんりょん先生のすごさは、そんなアーティストたちと心の底から寄り添い、必要であれば厳しい現実も突きつけながら、その力や可能性を開花させていくところではないか。そういった点で、アーティストたちにとって「親」のような存在なのかもしれない。
※1:https://www.cinra.net/article/interview-201806-kiminoorphee