「推し活」のおかげで生まれた新たな親子関係 ライブや応援グッズ制作も一緒に
「推し活」ブームを加速させるファン同士の仲間意識
音楽シーンと関連性の高いアイドルやアニメ分野の市場規模は、トータルで約4000億円を超えている(2021年度 ※1)。その市場を支えているのは、熱心な「ファン」の存在だ。アイドルやキャラクターなど、「推し」と言われる特定の対象をファンが愛でたり応援したりする活動=「推し活」は、コロナ禍にSNSを中心に火がつき、2021年には新語・流行語大賞にもノミネートされ、広く普及・定着している。
「推し活」が広がりを見せた理由の一つに、BTSをはじめとしたK-POPファンから一般層へ広がった「ファンダム」という文化がある。数値が可視化されるSNS時代に「対象を人気者に“推し上げる”」ため、ファン同士が団結し力を発揮しているのだ。さらに、ファン同士で対象への感情を共有したり、一緒に盛り上げていくことは応援のモチベーションにもつながり、「推し活」ブームを加速させている。「推し活」とは、“推し”の存在や魅力を誰かに語ったり発信することで“推し”に貢献していく活動という意味合いも強く持っている。
そんな「推し活」を親子で楽しんでいるという家庭も昨今では少なくない。オタク系YouTuber・あくにゃんがユーザー600人を対象に行ったアンケートでは、21.3%が「親と一緒にオタ活 / 推し活をしている」と回答している(※2)。リアルサウンドでは、親子で「推し活」をしているユーザー4組に話を聞いた。
親子での「推し活」がコミュニケーションに与える影響
長女・長男の母であるKさん(57歳)は、『青春スター』というオーディション番組から誕生したグループ・n.SSignを長女とともに推している。たまたま観た同番組で日本人メンバー・カズタのパフォーマンスに惹かれたのをきっかけに、今ではグループ全員を応援する“箱推し”に。
「親子で「推し活」を楽しむようになったのは、娘にライブに付き合ってもらったのが始まりです。もともとアニメやジャニーズ好きの娘は“これ以上推しを増やさない”と思っていたようで一歩引いていましたが、その次に横浜であった事務所のファミリーコンサートにも付き合ってもらった時、メンバーの(イ・)ハンジュンからファンサを受け見事にファンになりました(笑)。ちなみに横浜のコンサートには息子も連れて行きました。息子はaespaのファンですが楽しめたようです」
親子での「推し活」でもっとも変化があったのは「会話」だという。
「とにかくよく話すようになりました。高校生以上になってからプライベートの話は五月蠅がってなかなか話してくれなくなりましたが、「推し活」の話から広がって友人の話などもしてくれるようになりました。娘も息子も共通の話題ができて話すのが楽しいです。娘が特殊な「推し活用語」やマナーを教えてくれます。さらにTwitterやInstagramも登録だけして活用していなかった私に、娘や息子がいろいろ教えてくれます。いいことがたくさんありますが、デメリットをあげるとすれば一緒に行動しすぎていて、お互いのTwitterやInstagram、TikTokやYouTubeのアカウントがバレていることでしょうか」
離れて暮らす長男・長女がいるMさん(54歳)は、今は関ジャニ∞、Snow Man、Aぇ! groupを応援する生粋のジャニーズファン。長女は幼少期の頃から全国各地のジャニーズコンサートに連れていく“英才教育”の結果、立派なジャニーズファンへと成長。もともと親子で「推し活」をしていたことが良好な関係につながっているという。
「娘は物心ついた時から「推し活」をしているので、「推し活」前後というものはありませんが、反抗期がほとんどなかったように思います。喧嘩をしていても、遠征が近くなるとワクワクする気持ちを共有するために仲良くなります(笑)」
「推し活」で共通の話題があることは、離れて暮らす家族にも連絡がしやすいというメリットになる。
「同じものを好きな友達のような関係でもあるので、「推し活」以外の真面目な話もよくします。今は進学のため離れて暮らしている娘に、ジャニーズの話題をきっかけにして連絡がしやすいのもよいところかもしれません。夫は私たちの話題の蚊帳の外になっていますが、遠征の時に駅や空港まで送ってくれて、娘に感謝されてデレデレになっている姿を見ていると、間接的にいい効果がもたらされているよう思います」