安斉かれん、音楽と飾らない言葉で体現した“アンチヒロイン”の精神 「私のことを“ウザイ”と思う人もいっぱいいる」
アンチを見つけたら野菜だと思っとけばいい
ーーその結果、ものすごく人間味のある、人間臭いアルバムになりましたよね。
安斉:ありがとうございます(笑)。自分でもそう思います。ちょっと前まではいろんな自分がいることはよくないことなのかなと思っていたんですよ。人によって受け答えの仕方を変えたりとか、そういうのはダメなんじゃないかなって。でも、友達としゃべるときと大人の人としゃべるときではやっぱり違う自分になっていると思うし、それって自然なことかもなと思うようになったんですよね。なので、このアルバムの曲たちは「全部自分だし」みたいな感覚で書いていったところもあったと思います。情緒不安定なのかっていうくらい本当にいろんなヒロイン像を描いた曲が入っているので、きっと聴く人ごとに共感してもらえる曲は違うんじゃないかな。
ーーでは、全15曲の中で特にご自身のヒロイズムを体現している曲と言うと?
安斉:私の中のヒロインはやっぱりドキンちゃんなんですよ。だから「私はドキンちゃん」かもしれない(笑)。
ーーアニメ『それいけ!アンパンマン!』に登場するドキンちゃんのテーマソングですね。今作における唯一のカバー曲。
安斉:世間的に言ったらメロンパンナちゃんの方がヒロインなのかもしれないけど、私は昔からずっとドキンちゃんになりたかったんですよ。バイキンだからくっつけないことはわかっているのにしょくぱんまんに恋してしまう感じとか、すごくわかるっていうか。変に気取らず、いい子ぶらないところとかも好きなんです。私もそうなっていきたい(笑)。
ーーある意味、ダークヒロイン的な立ち位置ですよね。曲の内容もかなり言いたい放題で(笑)。
安斉:そうそう(笑)。ああいう歌詞の内容はドキンちゃんだから許されると思うんですよ。そういう部分にもすごく惹かれますね。実は、「私はドキンちゃん」は“ANTI HEROINE”というテーマが決まった後に入れることにしたんです。アルバムの締切りがかなり迫っていたんですけど、このテーマであれば絶対に「私はドキンちゃん」を入れるべきだなと思って。やっぱり自分がずっと憧れてきたヒロインの曲が入っていた方がアルバムとして締まるじゃないですか(笑)。カバーできて本当によかったなって思います。
ーーそのほかの曲で言うと、ご自身的にやりたいことができたと強く思えたものってありましたか?
安斉:私はもともと少し昔の洋楽ロックが好きなので、「恋愛周辺(Demo)」のサウンド感はすごく好きですね。あと「へゔん」とか「ギブミー♡すとっぷ」はCHVRCHESのメンバーやDANNY L HARLEが手掛けた曲で! 普段から洋楽を聴くことが多いので、今回やれてよかったなって思いました。他にも作曲した「不眠症☆廃天国」を原曲とはガラッと雰囲気を変えたリミックスしたり。どの曲も大好きなものばかりですね。
ーー「へゔん」と「ギブミー♡すとっぷ」の作詞はどうでしたか?
安斉:元々、デモの段階で英詞が乗っていたので、譜割も考えながら日本語で歌詞を乗せていくという。それもあって、いつもとは違うフレーズが浮かんだ気がします。「ギブミー♡すとっぷ」には〈Nist&myself〉というフレーズが出てくるんですけど、それって私のモバイルアプリの名前“かれにすと”から持ってきたんですよ。要は“ファンのみんなと私自身”っていう意味で。そういう説明しなければわからない言葉がナチュラルに出てきた感じがあって。メロディやサウンドがいいから思いきり遊んじゃえ、みたいな(笑)。
ーー今回のアルバム制作を通して、作詞のアプローチの幅も広がったんでしょうね。
安斉:そうですね。これは別の取材で言ってもらって気づいたことなんですけど、今まではずっと一人称を“僕”で書いていたんですけど、最近は“あたし”で書いているんですよ。あまり意識はしていなかったけど、そこは大きな変化かもしれないです。今まで以上にしっかり自分のことを歌うようになった部分もあるのかなと思いますね。
ーー歌詞でおもしろかったのは「おーる、ベジ♪」。今の時代を反映した、安斉さんっぽい内容だなと。
安斉:ありがとうございます。ネットとかでアンチの人っていっぱいいるじゃないですか。そういう人を見ると、「なんでここまで他人を構っていられるんだろう?」と思っちゃうんですよ(笑)。で、そういう人たちが発する、受け取る側の気持ちを想像していない言葉たちで傷つくこともたくさんあるわけですけど、そこはもうあんまり気にしなくてもよくないかなと思うんです。そういうアンチを見つけたら「野菜だと思っとけばいっか」みたいな(笑)。思ってることをバーッと吐き出した感じですね。
ーーさきほどのドキンちゃんの話じゃないですけど、安斉さんって「おーる、ベジ♪」のようなちょっと尖ったことを歌っても許される部分がありますよね。そこがこの4年で築いてきたひとつの大きな魅力のような気がします。
安斉:そうなんですかね? 私のことを“ウザイ”と思う人もいっぱいいると思いますけど(笑)。でも、そういう人となり、人間性みたいな部分まで愛してもらえるように、ここからもっともっと自分を磨いていこうとは思いますね。何を言っても受け入れてもらえる人になれるように(笑)。