連載「lit!」第47回:星界、Ci flower、歌愛ユキ、重音テトSV……ネット界隈を賑わしている多様な音声合成ソフト楽曲
今や一大音楽ジャンルとしてその確固たる市場を築いたVOCALOIDというカルチャー。その文化を支えるのは大勢のクリエイターであると同時に、今では実に多彩な種類を展開する音声合成ソフトのラインナップも、ジャンル拡大の支柱のひとつでもあると言えよう。
カルチャーの顔となる初音ミクを筆頭とするVOCALOIDや、近年の目覚ましい技術の発達により肉声と大差ないハイクオリティな歌声を持つCeVIO AI、Synthesizer Vなど。“ボカロシーンを彩るのはVOCALOIDだけではない”という認識は、年々着実に大勢のリスナーに広まりつつあるに違いない。今回はそんな多種多様な音声合成ソフトの中でも、直近で特にニュース性のあったソフトによる注目曲を4曲ピックアップ。曲を制作するボカロPのみならず、各ソフトの色や個性もあわせて聴き比べを楽しんでみてはいかがだろうか。
柊マグネタイト「傀儡阿修羅 feat. 星界」
可不に次ぐ二人目のCeVIO AI『音楽的同位体』として生まれた星界による、初のコンピレーションアルバム『メタファー』が4月27日に発売された。円盤3枚、全36曲もの収録曲から、今回は柊マグネタイトによる今作をピックアップ。強烈なビートアタックと読経を思わせる星界の朗々とした発声をフックとし、狂暴なインタールードから終盤の解放感に満ち溢れたメロディ展開はまさに圧巻。圧倒的な攻撃力でリスナーを最後まで踊らせ、魅せる1曲に仕上がっている。
r-906「Catchy !? feat. Ci flower」
『The VOCALOID Collection~2022 Spring~』での優勝でその確固たる地位を確立し、洗練されたサウンドで着々と活動の幅を広げつつあるr-906。直近開催の『ボカコレ2023春』投稿作となる本曲でも同氏の強みは如実に表れている。軽快なビートとテクニカルなベースラインに乗るのは、今年3月に登場したばかりのCeVIO AI『Ci flower』によるストレートで溌溂としたメロディ。従来より重厚な音圧にも負けない発声が特徴であったflower。強みはそのままにより滑らかな発話を実現可能としたことで、これまで以上に多彩な場面で活躍する彼女の姿が見られることは間違いない。カルチャーにとってさらなる追い風ともなり得る彼女の今後の活躍を想起させるには十分な存在感を放つ1曲だ。