ASP、The Prodigy マキシム原曲提供「TOXiC iNVASiON」から溢れ出る覚悟 気鋭のクリエイターが生んだ凶暴すぎるサウンド

 まるで凶暴な獣が、間もなくただの肉片へと変わるであろう目の前の獲物に向けてじっくりと照準を合わせているかのように唸りを上げるベース音。これから繰り広げられるであろう血祭りをさらに駆り立てるようなノイズ。そして開戦の合図とともに激しく打ち鳴らされる、文字通り血を沸かせ肉が躍るビッグビート。何より、一度始まってしまえば決して止まることのない、けたたましいトラックにも負けることのない力強い言葉のオンパレード。

 『DELiCiOUS ViCiOUS』という名を冠した作品の1曲目を飾る楽曲としてこれ以上適したものは考えられないくらいに、「TOXiC iNVASiON」は凶暴で暴力的で、何より最高にテンションの上がる一曲だ。これがASPにとってメジャー1st EPとなる作品の表題曲なのだから恐れ入ってしまう(2023年4月26日発売)。

ASP / TOXiC iNVASiON [OFFiCiAL ViDEO]

 ファンによっては冒頭のテキストを読んだだけでその「匂い」を感じ取っているかもしれないが、「TOXiC iNVASiON」はまさにその凶暴極まりないサウンドで数多ものダンスフロアをモッシュピットに変えてきたThe Prodigyのマキシムが楽曲の元となるパーツを提供しており、そんな音をHIYADAMのメインサウンドプロデューサーを筆頭にJUBEEやDAOKO、新しい学校のリーダーズといった尖ったセンスを持つアーティストたちの楽曲提供・Remixを手掛けてきたYohji Igarashiが解釈し、ASPらしいサウンドに落とし込むことで生まれた楽曲だ。ビートの持つ覚醒感を最大限に引き出した上で、巧みにトラックの緩急を演出することでダンスミュージックとしての興奮と楽曲の持つ物語性やエモーショナルさを見事に両立させる彼の手腕が、マキシムの手掛けた音によってさらに手に負えないことになっている。

 縦横無尽に暴れまわるトラックももちろん最高だが、何より本楽曲の聴きどころとなっているのは、そんなトラックとしっかりと呼応しながら疾走するASPのマイクリレーだろう。凶暴な音の洪水の中でも、決して埋もれることなく確かに自らの存在感を放つ各メンバーの歌声が楽曲を特別なものへと引き上げている。本楽曲の作詞・作曲を手掛けているのはODD Foot WorksのMCとしても活動しているPecoriだが、激しいビートに対しては軽快なフロウとリリックで攻め込みつつ、聴かせどころでは傷跡を剥き出しにしながらエモーショナルなメロディを展開する構成は、まさにヒップホップをベースにしながらも、エモやパンクの精神性を強く持った彼だからこそ実現できるものなのではないだろうか。音と言葉、トラックとストーリー、そして何よりもパフォーマンスが見事に合致しており、まさにそれぞれのクリエイターの魅力が見事に噛み合った理想的なコラボレーションが実現している。

関連記事