BLACKPINK、アジア人初の『コーチェラ』ヘッドライナーに至るまで 歴史を打ち破ったブレないスタイル

 2023年4月15日(現地時間)、BLACKPINKが自身にとって二度目となる『Coachella Valley Music and Arts Festival(コーチェラ・フェスティバル/以下、コーチェラ)』の出演を終えると、様々なメディアが“Historic”(歴史上重要な)という言葉を使い、そのステージの模様を伝えた。フェスティバル期間中のソーシャルメディアやYouTubeのコメント欄はBLACKPINKへの言葉で溢れ、『VOGUE』などのファッションメディアは瞬く間にメンバーがステージで着用していた衣装の詳細を報じていた。

 『コーチェラ』史上初となるアジア人ヘッドライナーとしての役目を見事に務めてみせたBLACKPINKだが、もはやこのグループにとってこのような熱狂は珍しいものではないだろう。むしろ、今回の出演がアナウンスされたタイミングにおいても、筆者個人の感覚としては「まさか」というより、「遂に実現するのか」という感慨の方が大きかった。2019年の『コーチェラ』初出演時のパフォーマンスにおける壮絶な熱狂と、この数年間におけるグループの世界的な活躍を追いかけていれば、そう考えるのも自然に思えるはずだ。

 その存在感を世界中に強くアピールする大きなきっかけとなった2019年の『コーチェラ』出演を経て、2020年にリリースされた『THE ALBUM』、昨年リリースの『BORN PINK』の2つのアルバムを筆頭に、BLACKPINKはその勢いを損なうことなく作品における成功を着実に重ねてきた。「How You Like That」や「Lovesick Girls」を収録した前者は全米・全英ともにアルバムチャートで2位という韓国の女性グループとして史上初の記録を打ち立て、さらに「Pink Venom」をリードシングルに据えた後者では全米・全英チャート1位を達成と、自身で打ち立てた記録を見事に更新してみせた。『BORN PINK』は米Billboard誌や米Rolling Stone誌における年間ベストアルバムにも名を連ねており、売上だけではなく評価の面においてもシーンに存在感を示す作品となっていたと言えるだろう。

BLACKPINK - 'How You Like That' M/V
BLACKPINK - 'Lovesick Girls' M/V

 だが、そういった数字よりも重要なのは、BLACKPINKが(良い意味で)デビュー初期の頃から大きく音楽性や表現の在り方を変えることなく、このような成功を手にしたということではないだろうか。EDMの高揚感とキレのあるヒップホップビート、硬い質感のベースを軸としたトラックの上で圧倒的な強さを誇示するという、YGエンターテインメントのシグネチャースタイルとでも言うべき楽曲は最初期の「BOOMBAYAH」から「Pink Venom」に至るまで続いており、USのメインストリームに寄せるどころか、むしろコムンゴのような韓国の伝統的な楽器の音色などトラディショナルな要素を取り入れることによって、その唯一無二の存在感を強めていった。それはBLACKPINKというグループが持つ「媚びることのない圧倒的な強さと美しさ」を考える上では欠かすことのできないものであり、驚異的な作り込みを誇るMVやファッションにおいても、その強さと美しさは一切のブレがないほどに一貫している。シャネルやディオール、サンローラン、セリーヌなど数多もの高級ブランドがラブコールを送り続けているのは、まさにそんなグループの持つスタイルや存在感こそが今の時代におけるロールモデルとして求められるものだからなのではないだろうか。「狙いに行く」のではなく、「自らが先頭を率いる」という在り方が今のBLACKPINKの成功を実現させたのだろう。

BLACKPINK - '붐바야 (BOOMBAYAH)' M/V
BLACKPINK - ‘Pink Venom’ M/V

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