SKY-HI、YOSHIKI、三代目JSB ØMIはどんなグループを育て上げる? トップランカーのキャリアが滲み出るプロデュース術の特色

破壊と創造、越境の天才、YOSHIKIが生み出した前代未聞のボーイズグループ・XY

"XY" Debut on Japanese TV Show "Crazy Love" (Composed by YOSHIKI) TV初披露! Winners of YOSHIKI AUDITION

 圧倒的なカリスマ性を誇り、数々の業績を残しているX JAPANのYOSHIKI。彼のキャリアについてはすでに多くの方が知るところだとは思うが、その概要の一部を改めて振り返った上で、プロデュースの手腕について考察したい。

 X JAPANでドラムとピアノを担当するYOSHIKIは、1982年にToshIとバンドを結成。1986年に自らインディーズレーベルを設立し、1989年にアルバム『BLUE BLOOD』でメジャーデビューを果たした。1990年にはバンドとして初の日本武道館ライブを成功させ、1992年には日本人アーティストとして初となる東京ドーム3日間連続公演を開催するなど、一世を風靡。1997年にボーカル・ToshIの脱退をきっかけとしてバンドを解散するも、2007年10月よりX JAPANを再結成し、多くのファンの声に呼応する形で活動を再開した。国内での活動はもちろんのこと、アメリカのマディソン・スクエア・ガーデンでのライブやイギリスのSSEアリーナ・ウェンブリー公演を成功させるなど、今なお数々の功績を残しているバンドである。

 そのような伝説的なバンドで活動を行う一方で、YOSHIKIはソロとしても複数のアルバムを発表し、国内外でのソロツアーも成功させている。特に2017年にはソロでアメリカ・NYのカーネギーホール公演を開催し、過去にはサラ・ブライトマンやKISS、ロジャー・テイラー(QUEEN)、ボノ(U2)など、多数の世界的アーティストとも共演した実績を持つ。ロックバンド出身者でありながらクラシックコンサートも成功させるなど、ソロとしてのセルフプロデュース力にも目を見張るものがある。

 そんなYOSHIKIが、2023年に前代未聞の「バンド&ダンスボーカル」という形態でボーイズグループ・XYをプロデュースするのは、これまでの彼のキャリアから考えると大いに納得できる道のりかもしれない。というのも、彼はX JAPANの活動を通じて、「ビジュアル系」という言葉と概念を生み出し、ひとつのカルチャーとして定着させてきたからだ。ゼロからひとつの大きな道をつくり出してきた上に、現在も過去の実績に胡坐をかくことなく、常にさまざまな情報をインプットしながら、破壊と創造を繰り返して新しい活動を生み出している。そういう人物だからこそ、XYという独自コンセプトのグループが誕生したと言えるのではないだろうか。

 ワインや着物など、異なるジャンルでのプロデュースも行うYOSHIKI。「X JAPANの音楽が、かなりのクロスオーバーだと思う」とかつてインタビューで語っていた彼は(※2)、まさに越境と創造の天才であり、XYの今後の活動もこれまでの固定観念を打ち破るようなものが展開されていくのではないだろうか。

豊かな感性と審美眼、巧みなストーリー構成で見る者を惹きつけるØMI

 2010年に三代目 J SOUL BROTHERSのボーカルとしてデビューしたØMI(登坂広臣)。同グループは「R.Y.U.S.E.I.」がミリオンセラーに輝き、ドームツアーで史上最多の動員数を記録するなど、日本を代表するダンス&ボーカルグループとして音楽シーンの第一線で活躍してきた。

 「R.Y.U.S.E.I.」が大ヒットした2017年、ØMIは以前からあたためてきたというソロプロジェクトを始動。ソロとしてさまざまな楽曲やMV、ライブ、そのほかグッズの展開を自らの手でプロデュースし、活動領域を広げてきた。彼がリリースした楽曲は、その多くがオリコン上位にランクインするなど、多数の実績も残している。そのような人気を博している理由のひとつには、ØMIのつくり出すエンターテインメントが、ひとつの物語としてつくり込まれているという点が挙げられるだろう。MVひとつとっても細部までこだわりを感じる、いちクリエイターとしての表現スキルの高さが、多くのファンを惹きつけてやまないのだ。

 実際、ØMIはインタビューの中で「プロデュースをやるようになってストーリーをもとにエンタメを作ることが好きだと気がついたんです。情景を思い浮かべたり、未来を想像したり、そういうところからキーワードやアイデアが出てきます」と語っている。(※3)ØMIの豊かな感性と表現者としてのストーリーテリングの巧みさは、今後彼のプロデュースするガールズグループにも大いに生かされていくに違いない。

[CDL ∞] "CRASH & BURN" Official Music Video

 その片鱗は2022年末にプロデュースを行った、LDH JAPANのオーディション『iCON Z Girls Group Audition』参加者から選抜された10名によるガールズグループ「CDL ∞」からも垣間見ることができる。2022年12月にリリースされたCDL ∞の「CRASH & BURN」のMVでは、10名のメンバーのダンスの実力の高さを存分に堪能できるシンプルな映像でありながら、くるくると切り替わるシーンによって、全編を視聴してひとつのメッセージ性が伝わる飽きのこないつくりとなっている。各メンバーの自信に満ちた華やかな魅力を描き出したØMIの審美眼が、5月3日にデビューするガールズグループ・MOONCHILDでどのように活かされるのか、期待が高まるところである。

MOONCHILD | "Don't Blow It!" MV Teaser

 それぞれ異なるキャリアと特徴を持つSKY-HIとYOSHIKI、ØMIが、プロデューサーとしても新たな音楽シーンをつくり出そうとしている2023年。3名の手がけるグループはどのようなカラーで活動を展開していくのだろうか。

※1:https://www.businessinsider.jp/post-233176
※2:https://www.oricon.co.jp/special/49496/
※3:https://goetheweb.jp/person/article/20230207-omi

NissyとSKY-HI、それぞれの道で大成した稀有な才能 AAAを起点に拡大、分岐した両者の歩みを辿る

1つの分野で成功を収めることすら非常に難しい、エンターテインメントの世界。しかし、そのような厳しい世界でも、2つ以上の道で長きに…

NewJeansからXY、&TEAM、ShowMinorSavage、SKY-HI、BE:FIRSTまで 『TGC』ライブステージを振り返る

3月4日、代々木第一体育館で『第36回 マイナビ 東京ガールズコレクション 2023 SPRING/SUMMER』(以下、TGC…

関連記事