DEZOLVE、インストならではの垣根のなさを体感させるアンサンブルの妙味 『CoMOVE』ツアー最終公演レポ

 国内屈指の若手インストゥルメンタルフュージョンバンド・DEZOLVEがニューアルバム『CoMOVE』を携えたツアー最終公演を4月2日、東京都丸の内・COTTON CLUBで開催。ここでは2nd Showの様子をレポートする。

 会場のCOTTON CLUBには往年のJ-FUSIONファンと思しきシニアから若い世代まで混在し性別も半々。まさに老若男女のオーディエンスが集まっている。来場した人のコメントをSNSで見てみると、メンバーが参加/演奏しているアイドルマスターシリーズなど、アイドルやアニメソングを発端にDEZOLVEに出会った人もいれば、大ヒット上映中の映画『BLUE GIANT』に登場する架空のジャズクラブ“COTTON”のモデルになったCOTTON CLUBのいわゆる聖地巡礼を兼ねて訪れた音楽ファンもいるようだ。この日のロビーにも同映画のパネルが掲出されており、新しいファン層がジャズクラブに足を運ぶきっかけになっていることが窺えた。

 場内が暗転し、ドラマチックなSEが流れ、濃いブルーのライティングでステージが照らし出される演出の中、北川翔也(Gt)、友田ジュン(Key)、山本真央樹(Dr)、兼子拓真(Ba)がオンステージ。兼子が腕を振りウォーミングアップした次の瞬間、彼のスラップで攻め入るように新作のキラーチューン「Heart of the World」でスタート。食らいつくようにステージを凝視するオーディエンス。それもそのはずで一瞬でも目を離せない超絶技巧と4人でせめぎ合うアンサンブルの洪水なのだから、息をするのも忘れて彼らが作り出すジェットコースター級の展開に身を任せてしまう。兼子がメロディ楽器的にベースを操ったかと思えば、北川のソロではタッピングやアーミングを駆使したスリリングなプレイで目と耳を奪う。山本のドラムはビートというより、止まることのないスラロームのようだ。この体感はエクストリームスポーツやゲームに近い。フィジカルに訴えるアンサンブルの中でメインテーマを支える友田のシンセソロもアトラクティブ。音源とも違うアレンジを盛り込みつつ、後半は変拍子の上で自然にオーディエンスからクラップが起こり、この曲のスタジオライブMVを観ているファンの多さを実感した。1曲目からぶっ込んできた! という歓声と拍手に包まれ、何かこの空間全体で一つの旅を経験したかのように濃厚な一体感が生まれていた。

DEZOLVE - Heart of the World(Studio Live)

 ユニークなのは1、2曲ごとに作曲者が曲の説明をしっかりと行い、演奏に入っていくところ。山本が「EDM要素をDEZOLVEに乗せた『Vantablack』」と説明し、友田が「いつもと違わないDEZOLVEらしい『Coruscate』はいつもの感じで聴いてください」と、ユーモアも利いている。兼子がアレンジも演奏も難しかったと説明した「Vantablack」ではベースを5弦に持ち替えて、クランチなリフやロングトーンなどを駆使する様子に釘付けになり、これぞJ-FUSIONな「Coruscate」では友田のオーセンティックなピアノソロを堪能。だが、もちろん意表を突くフィルを山本が入れたり、絶妙なハイハットワークを聴かせたり、油断できないプレイが頻発する。

 中盤にはメンバー個人の感性を反映した楽曲を披露したのだが、そこでもまた楽曲の説明があるのがいい。怒涛の演奏を聴かせた後にトークショーさながらの曲説明がある落差もDEZOLVEの本当の凄みを感じる所以だ。曰く、友田のコロナ期間のマイブームである入浴からインスピレーションを得た「The Room of Serendip」、山本の第一子誕生のタイミングでポップで可愛い曲のイメージがさらに広がったという「Tiny Vision」が披露される。曲の説明を受けて聴くと、確かに「The Room of Serendip」の浮遊感に聴き手のイメージを付与して楽しむことができるし、「Tiny Vision」では音選びやフレージングがプレーヤーのキャラクターを色濃く反映していることに気づけた。言葉のない音楽=インストの豊かさを実感する2曲だった。

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