3曲目には、タイトル曲「Like Crazy」を収録。JIMINが好きだという映画『Like Crazy（邦題：今日、キミに会えたら）』にインスパイアされたという本楽曲は、80年代のシンセポップやディスコサウンドの雰囲気を感じる幻想的なサウンドに仕上がっている。JIMINのささやくような歌声や切なげに歌い上げる高音域の歌声は圧巻。一方で歌詞に目を向けると、〈Lost in the lights〉〈This will break me〉と、ここ数年のBTSを取り巻く変化と、それに対するJIMINの心境の移ろいが歌詞の物語に組み込まれるような形で描かれている。

　4曲目に収録されたポップバラード「Alone」は、世界的スターとして多くの注目を集め、まばゆいスポットライトを経験したからこその孤独感や自己の揺らぎを率直に吐露した作品。JIMINの繊細ながらも切れ味を感じる高音域の歌声はもちろん、ささやくような中低音域のメロディラインは、部屋の中で物思いにふけりながら歌うかのような空気を感じ、曲全体を通じて彼の表現力の豊かさに触れられる楽曲だ。

　5曲目はアルバムリリース前にMVが先行公開された「Set Me Free Pt.2」。壮大なサウンドから始まるこの楽曲では、低音と高音を自在に行き来するJIMINの歌唱力の高さを堪能できるほか、シンギングラップに挑戦する新たな姿も垣間見ることができる。また、歌詞は〈Finally free〉〈Hey fool, just get out of my way〉〈Set me free〉と挑戦的な言葉も多い。悩みながら内省する時間を経て、ネガティブな意見に惑わされずに自分らしく自由にあるのだと、JIMINの決意を表明したかのような作品となっている。

　このように、コロナ禍やBTSの世界的なスター化にともなう心境の揺れ動きを、ときに率直に、ときに物語に織り交ぜながら表現したアルバム『FACE』。テーマは一貫しながらも、それぞれ表情の異なる多彩なサウンドは、歌手・JIMINの表現力の幅広さを示しながら、さらに彼のソングライティングにおけるセンスとスキルの高さを証明した作品となっている。BTSにおいて、JIMINのソロデビューは、JINやRM、J-HOPEに次いで4人目。ソロ活動は彼に新たな刺激と経験をもたらし、2025年に再開を目指しているグループとしての活動にも影響を与えるだろう。

※1：https://www.hani.co.kr/arti/culture/culture_general/1085122.html（筆者訳）
※2：『AERA』2023年4月3日 No.16 増大号「JIMIN 単独インタビュー」
※3：各楽曲の韓国語歌詞は筆者訳