真田佑馬・諸星翔希・森田美勇人が7ORDERの音楽を語り尽くす バンド&ダンスの追求で確立した唯一無二のスタイル

「さなぴーは多分、メンバーのことをすごく観察してくれている」(森田)

ーー少し余談ですけど……「DTMにハマる人はスパイスカレー作りにハマる」という傾向を、僕は様々なミュージシャンと接しながら感じています。

真田:あっ! 僕もそうなんです(笑)。理論的にはDTMもスパイスカレーも一緒なんです。どっちも足し算引き算の美学なので。

森田:そうなんだ?

真田:うん。ずっとDTMをやってきて足し算をしてきたんですけど、最近は引き算をするようになってます。経験を積んできた中で「クミンとはなんぞや?」がわかってきたというか(笑)。スパイスにも役割があって、音もそれと同じだと思います。そういえば……曲を作り始めて2年目くらいの頃、神戸でスパイスカレーを作ってる人に「何に興味あるの?」って聞かれたんです。「音楽とか好きで」って答えたら「じゃあ、きみはその内スパイスカレー作るね」って言われました。俺が何の仕事をしてるのか教えてなかったのに。その後、スパイスカレーを作るようになって、言われたことの意味がわかるようになりました。

ーー真田さんは、クリエイティブなことが好きですよね? 僕、今回のアルバムの曲ではないですけど、「27」や「夢想人」とかもすごく好きなんです。

真田:ありがとうございます。表の仕事も裏の仕事もやらせてもらえて、すごく良い経験ができていますし、財産になってます。でも、自分だけで表現してるわけではなくて、素敵なメンバーがいるからこそです。メンバーの存在によってプラスの作用が働いて、良いパフォーマンスになっているんだと思います。

ーー「Who I Am」もまさにそうですが、真田さんが書いた言葉はメンバーが抱えている想いの声になっている印象がします。

森田:さなぴーは多分、メンバーのことをすごく観察してくれているんだと思います。

真田:そうかもしれない。僕、ぶっちゃけるのが得意なんです。恥ずかしさがないので。「お腹痛い」とか、すぐ言いますし。それが意外と歌詞に活かせてるのかも。

諸星:さなぴー、あんまり酔ってないのに「酔ったから言うけど」ってよく言うんですよ。まだ1杯くらいしか飲んでないのに(笑)。だからぶっちゃけ力が高いっていうのは、その通りなんだと思います。

真田:「酔ったから言うけど」っていうのを口実に、ぶっちゃけて言いたいだけ(笑)。

ーー(笑)。「27」の〈暗闇は怖いから〉とか、ぶっちゃけ力から生まれた言葉かもしれないですよ。

真田:そうですね。僕、閉所恐怖症なんですけど、押し入れの中とか、閉所が好きだったりもして。そういう矛盾みたいなものも持ってます。あと、いつも客観的に何かを見ながら歌詞を書いている感じもあって。そういうのも曲に出てるかもしれないです。

ーーみなさんそれぞれの作風が発揮されているのも、今回のアルバムの大きな聴きどころだと思います。「F」は、作曲は真田さん。歌詞は諸星さんと森田さんの共作ですが、タイトルはコードネームが由来ですか?

森田:そうです。キーはCメジャーですけど、Fから始まるので(笑)。あと、歌詞で〈Fu Fu Fu〉と言ってますし。たしか(阿部)顕嵐が言ったんですよ。「タイトル、Fとかどうですか?」って。

ーー諸星さんのサックスの温かな音色も気持ちいいです。どんどん良い音を鳴らすようになっていますよね?

真田:俺もそう思います。

諸星:ありがとうございます。録音すると「こうやって聴こえているんだ?」って、自分の音がわかりやすくなるというか、「まだまだ倍音成分が弱いな」とかよくわかるんです。そういう経験を重ねながら、音色もどんどん更新していきたいです。

ーー諸星さんは練習熱心でもありますよね? 昨年の取材の際、撮影スタジオの白ホリの壁に譜面をテープで貼って、合間の時間に練習していたのを目撃しました。

諸星:見ていたんですね(笑)。

ーー他のメンバーのみなさんも、合間のちょっとした時間に楽器を弾いているのをよく見かけます。真田さんも、よくギターを弾いているじゃないですか?

真田:はい。でも、練習熱心ということだと、モロ(諸星)は断トツですよ。この間、ロケで海に行ったんですけど、「海からサックスの音が聞こえるなあ」って思ったらモロでした(笑)。「まるで『BLUE GIANT』じゃねえか!」ってなりました。

ーー諸星さん、『BLUE GIANT』の劇場版アニメのモーションキャプチャーをやりましたからね。

諸星:はい。まさかの嬉しいお仕事でした。

ーー海辺でサックスを吹くって、なんかかっこいいですね。

真田:かっこいいですけど、「錆びるよ」って思いながら見てました(笑)。

森田:たしかに、潮風は錆びる(笑)。

ーー(笑)。そんな練習の成果も発揮されている「F」の歌詞は、おふたりでどんなことを話し合いながら書いたんですか?

森田:恋愛妄想的な要素がテーマでした。あまり恋愛のことを描く感じのグループではないんですけど、「F」っていうタイトルになったので、「不二子ちゃんっていう意味も込めようぜ」っていう話にもなっていきました。

ーー『ルパン三世』の峰不二子ですか?

森田:はい。捕まらない女性を追いかけてるようなイメージをふたりで想像しながら歌詞を書いていきました。2番の歌詞はモロがデモの段階で作ってたので、ベースとなる要素はあったんです。そこからさらに膨らませていく感じでしたね。

ーーやっぱり曲って、作った人の個性が表れますね。長妻(怜央)さんが作詞作曲をした「なんとかやってますわ」も、彼の顔が浮かびます。

真田:彼の心を覗き見た感じがしますよね(笑)。「文字をぶち込んで、溢れたとしてもそれが素敵」っていう感じは、ナガツ(長妻)の性格の良さがすごく出てると思います。

ーー不思議な魅力がある歌詞です。語りかけてくると同時にひとりごとのようでもあるこの感じ、井上陽水さんの「夢の中へ」をちょっと思い浮かべたんですけど。

真田:なるほど(笑)。本人がどう思っているかはわからないですけど、50TA(狩野英孝の音楽プロジェクト)の要素も感じました。彼は50TAに対するリスペクトもあるから。「歌詞も楽しませる! そして最後はいいことを言いますよ」っていうエンタメ性に富んだこの姿勢、素晴らしいなと思ってます。

ーーメンバーのみなさんが手掛けたこういう曲と並んで、ものすごいクリエイターのみなさんの提供曲も堪能できるのが楽しいです。新羅慎二さん(湘南乃風 若旦那)と大沢伸一さんが手掛けた「レスポール」は、ロック色の強いギターサウンドが気持ちいいですね。

真田:シューゲイザー、UKロックのテイストですね。顕嵐が、そういう音楽が好きなんです。彼はいろいろ聴いてるんですよ。クラシックも好きですから。

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