BUMP OF CHICKENという音楽の生命の源にあるもの 歓声の中で躍動したツアー『be there』有明アリーナ公演

 アリーナへと伸びる花道にあるセンターステージから演奏している時の4人は、友達と遊んでいるかのように無邪気な笑顔を浮かべていて、四方に1万1000人の観客がいるにもかかわらず、小さな秘密基地ごとここにワープしてきてしまったのでは、と錯覚した。最新曲「SOUVENIR」は、歌詞に合わせて歩いたり走ったり転んだりする藤原の立ち振る舞いもユニークで、より人間味溢れる姿をステージ上で見せてくれるようになった今のBUMP OF CHICKENならではのパフォーマンスという印象を受けた。かと思えば、今この時代を生きる人々の想いや願いを代弁するように懐の深い演奏を響かせる瞬間もあるし、長く愛されている曲を演奏すれば、タイムカプセルを開いた時のような感慨と温かさで会場全体を包み込む。前日に結成27周年を迎えたこのバンドの魅力が凝縮された、充実のライブだ。

 そんななか、MCでは、藤原が「『アカシア』って曲を作ったんですよ。それを出した頃には声を出しちゃいけない世の中になっていて」と、2020年9月に発表した楽曲「アカシア」について語る一幕があった。彼が語ったのは、「アカシア」は、ツアー『aurora ark』で観客と声のやりとりができた時の気持ちを形にした曲であること。これだけ分かりやすく掛け合いのある曲は初めてだが、「イェイ」と言ったら「イェイ」と返してくれるだろうと想像して書いたということ。しばらく声出しNGのライブが続いたが、それでも「アカシア」を受け止めて、抱きしめて、命をくれる人がいると実感していたこと。そんな日々の先にあったのが、この日のライブだった。「ようやく『アカシア』って曲が、“僕はこういう曲なんだぜ”って本当の笑顔を見せてくれた気がしました。君たちのおかげだよ。本当にありがとう!」と藤原。音楽があれば、不透明な未来も、彩りにあふれた日々に変わる。だからこそ「これからまた新しい曲を書くので、君の人生の何分間かをまたください」とここでまた約束を交わすのだ。

 「ベタだけど、いってきます!」とライブを締め括り、新たな旅へと出発したBUMP OF CHICKEN。『BUMP OF CHICKEN TOUR 2023 be there』は5月28日のさいたまスーパーアリーナ公演まで続く。

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