オーラル×フォーリミ×ブルエン、ロックの聖地で熱狂的なステージ 辻村勇太の渡米を見送った『ONAKAMA 2023』レポ

 04 Limited Sazabys、THE ORAL CIGARETTES、BLUE ENCOUNTという同世代3組のロックバンドが合同で主催するイベント『ONAKAMA 2023』が関東に雪が降った2023年2月10日、日本武道館で開催された。前回は名古屋、大阪、福岡を回るアリーナツアーだったため、東京開催は2016年の新木場STUDIO COAST公演以来、実に7年ぶりとなる。3回目の開催となる今回、3組が会場に選んだ日本武道館はご存じ、日本のロックの聖地。『ONAKAMA 2023』開催時点では3組とも1度ずつ単独公演を行っているが、この春からニューヨークを拠点としてBLUE ENCONTの活動に参加する辻村勇太(Ba)の壮行会という意味合いも少なからずあったため、『ONAKAMA』として武道館のステージに立つことには感慨深いものがあったようだ。雪から変わった雨にも負けず、武道館に駆けつけた満員の観客が熱烈に歓迎する中、3組が繰り広げた熱演を出演順にレポートする。

 

 ギターリフをジャキジャキとかき鳴らすソリッドなロックナンバー「リコリス」から、「思いっきり踊ってくれ!」と山中拓也(Vo/Gt)が声を上げ、中西雅哉(Dr/Cho)がスウィンギーなビートを鳴らす「Shala La」に繋げ、スタートダッシュをキメたトップバッターのTHE ORAL CIGARETTES(以下、オーラル)。そこから「ブルエンの辻村さんは音楽家をやめてチンピラに転向するらしい。(今回の『ONAKAMA』は)チンピラを送り出す会になった。精一杯送り出して、楽しんでください」と『ONAKAMA』らしいイジリも交え、餞の言葉を辻村に贈りながら、曲をたたみかるように披露。アリーナはもちろん、スタンド席も揺らしていったのだが、シンセのフレーズとトラップのリズムを巧みに使ったダンスナンバー「BUG」、アンセミックなキラーチューン「BLACK MEMORY」を繋げた流れで、2日前に配信リリースしたばかりの、しかもパートごとにリズムが変わる新曲「Enchant」を持ってきたところに持ち前のチャレンジ精神と向こう意気が窺えた。

THE ORAL CIGARETTES

「6年前、武道館で(ワンマンライブを)やった時、2度目は『ONAKAMA』でやろうって決めてました。いや、ウソですけどね(笑)。結果的に2度目は『ONAKAMA』で来られてよかったです!」

 悪天候にもかかわらず、満員の観客とともにこの日を迎えられた歓びを語る言葉が、照れなのか、天邪鬼な性格なのか、人を食った調子になるところが山中らしい。因みに山中が昨日、コンビニで買ったバナナは、エクアドルの田辺農園で栽培されたものだったそうだ。「こんなとこまで出てくんなよ(笑)」(山中)このくだりが後々生きてくることは後述する。

 「カンタンナコト」のファンキーな演奏で観客を跳ねさせる。ラストスパートをかけると、鈴木重伸(Gt)と、あきらかにあきら(Ba/Cho)が交差するようにジャンプをキメ、ステージの左右に駆けていった「狂乱 Hey Kids!!」では「次はあんたらの番だぜ。歌え!」とシンガロングを求める山中に応え、観客がマスク越しに声を上げる(この日の公演はマスク越しの声援が解禁された)。

「ラスト1曲。ほとんどみんなに歌ってもらいたいと思ってます。1回、武道館で歌ってるんで、君らの番ちゃいますか」(山中)

 ラストの「5150」では山中の言葉に応え、「狂乱 Hey Kids!!」以上のシンガロングが響き渡った。その「5150」を演奏する直前、山中が言った「この曲を辻村に贈る……つもりはありません(笑)。俺らに歌ってください」という言葉は、『ONAKAMA』を掲げながらこのイベントが3組による真剣勝負であることを暗に物語っていたように思う。

 そんな真剣勝負に04 Limited Sazabys(以下、フォーリミ)は、いつも以上にストイックに挑んだように感じられた。ライブは「Keep going」でスタート。疾走感あふれる演奏とともにHIROKAZ(Gt/Cho)のメロディアスなギターソロ、RYU-TA(Gt/Cho)、HIROKAZ、KOUHEI(Dr/Cho)も声を重ねるダイナミックなコーラスという聴きどころも印象づけると、「ハイ!ハイ!」とRYU-TAが煽りながら、キュートかつポップな「Kitchen」、2ビートのメロディックパンクナンバー「Now here, No where」と繋げていった。そして、「midnight cruising」ではGEN(Ba/Vo)が「生憎の雪だけど、降らせちゃっていいですか」とミラーボールを回して、武道館に星を降らせるというハイライトと言ってもいい光景を序盤から作り出す。

「辻村、ニューヨークに行くんだってさ。もう、ロングコートにブーツっていうニューヨークスタイルになってて、俺達が魚の弁当を食べてるとき、あいつだけデニッシュを食べてた(笑)。仲間の門出を武道館で祝えるのはうれしいです」(GEN)

 オーラル同様、『ONAKAMA』ならではと言えるイジリも交え、餞の言葉を贈ると、「(フォーリミが)2017年に武道館でやってから、世の中はもちろん、我々の状況も変わったけど、変わらないものもある。今日はその変わらない部分を見せつけたい」と宣言。

 「現在、フォーリミはツアー中、つまり一番仕上がっている。そんな我々の強さ、逞しさ、潔さを見てください!」と2ビートのメロディックパンクナンバー「message」からなだれこんだ中盤は、「fiction」「Finder」「Galapagos II」とほぼノンストップで繋げ、KOUHEIが絶妙におりまぜる4つ打ちのリズムで観客を踊らせながら、熱度満点のグルーヴをアピール。中でも、アップテンポの演奏の中で曲が目まぐるしく展開する「Galapagos II」は、まさに圧巻の一言だった。

04 Limited Sazabys

「気づいたら15年選手。感動することが減ってきた。だからこそ、目の前のことを感じて、味わい尽くして、持って帰りたい。新しい景色を見ようとしている辻村を尊敬してるし、理解もできる。辻村の未来がキラキラと輝くようにこの曲を贈らせてください」(GEN)

 そんな思いを込めた「Horizon」 から「monolith」「swim」とフォーリミのライブには欠かせない楽曲を駆け抜けるようにたたみかけると、ストイックに進行しすぎたせいか、「時間が余ったからもう1曲!」と予定になかった「Remember」を最後に披露。「辻村が俺達を忘れないように!」ーー選曲に意味を持たせるために直前にGENが言ったセリフが心憎かった。

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