齊藤なぎさ、=LOVE卒業ライブに見たアイドルとしての矜持 5年間伝え続けた「大好き」の言葉

 ほかにも齊藤がやりたいこととして詰め込んだパートには、メンバーとのユニット曲が多く含まれていた。齋藤樹愛羅との“ぴんくえんじぇる”でのSKE48のカバー「狼とプライド」と「いらない ツインテール」、大谷映美里との「わたし、魔法使い」、そして特筆すべきが髙松瞳との「流星群」だ。間奏に齊藤がサプライズで読んだ髙松への手紙には、姉のように、“僕のヒロイン”として髙松を慕う一方で、休養を選ばざるを得なくなった彼女の苦悩に気づけなかった齊藤の後悔が綴られていた。だからこそ齊藤は「これからも心の中でずっと隣にいさせてね」と髙松に誓う。もともと「流星群」は2人の間柄を指原が歌詞に当て書きした楽曲だが、手紙を読み上げてからの〈太陽みたいなその笑顔〉(齊藤)〈ちょっと怒って拗ねた顔〉(髙松)〈うまく言えないけれど ずっと側にいてくれて ありがとう〉(齊藤・髙松)というアカペラでの涙ながらの歌唱は、歌詞と2人の思いがリンクする、リハーサルできない本番一度きりの感動を会場に生んでいた。

 齊藤と髙松については「探せ ダイヤモンドリリー」での演出も見事だった。2019年に発表されたこの楽曲のMVは芸能事務所からスカウトを受けた齊藤演じる女学生を、髙松演じる同級生が追いかけるストーリー仕立ての作品。そこで渡すことができなかったブローチを髙松は、「おめでとう」という餞の言葉とともに齊藤へと贈るのだ。約4年越しに物語が完結すること、ブローチの柄であるダイヤモンドリリーの花言葉が「また会う日を楽しみに」だということ。チームとしての=LOVEのクリエイティブの高さを改めて感じた瞬間だった。

 「探せ ダイヤモンドリリー」はサビの高音パートや振り数の多いダンスから当時としてはパフォーマンスの難易度が高い楽曲とされていた。「ズルいよ ズルいね」は髙松の休養を受けて齊藤が初めてセンターに立ったシングル曲。グループ加入まで歌もダンスも経験のなかった齊藤が大人の失恋ソングに求められる表現力の壁にぶつかり越えていった、「この曲があったから一番成長できた」と語る楽曲だ。今ではそれがアイドルとして、俳優としての表現力/演技力に繋がっている。この日、齊藤の姿を追う「なーたん推しカメラ」の映像が映し出されたスクリーンがステージの両サイドにセットされていた。マスコミ陣に用意された席がスクリーンの目の前だったこともあり、必然と推しカメラを見る時間が多かったのだが、どこを切り取っても隙のない齊藤にアイドルとしての矜持を見た気がした。指原が卒業記念ソングとして書き下ろしたソロ曲「君だけの花道」は、歌が苦手だったとは到底思えない堂々としたパフォーマンスだ。

 齊藤はグループ卒業後、芸能事務所「エイジアクロス」に所属し、俳優として活動していく。=LOVEはメンバー10人、新体制での全国ツアー『Today is your Trigger』と13thシングルのリリースが控えている。本編終盤に披露された「スタート!」、そしてアンコールの「笑顔のレシピ」は、再会の日を夢見ての「いつか」に向けた希望に満ち溢れたエールであり、約束の歌だ。齊藤は横浜アリーナがピンクのサイリウム一色になった景色が忘れられないと語りながらも、アイドルとして一つだけ心残りがあったと明かす。それが東京ドームにメンバーと一緒に立つことができなかったこと。「最高の景色を見てほしい」という齊藤に、「笑顔のレシピ」のセンターであり、リーダーの山本杏奈から「立てる日が来たら、なぎさと一緒に喜びたいです。なぎさと一緒に歌いたいです」という約束の言葉もあった。東京ドームは、=LOVEと齊藤なぎさにとっての物語の余白。また会う日を楽しみに。

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