西野恵未、ドラマ『作りたい女と食べたい女』を経て完成した初のソロ曲「暁」 “春日さん”と自身の共通点も明かす

西野恵未と“春日さん”の共通点

――「暁」を聴いて、どんな世代にも響くような歌詞に心を掴まれました。〈当たり前なんかじゃない〉というストレートな言葉に強い温度感があるというか。

西野:ありがとうございます。スタジオミュージシャンの私が前に出て歌を出すということに、100%抵抗がなかったわけではないんです。出したら何か言われるかな? って思う自分もいたし。でも2022年のいろんな出来事を経て、人に何と言われようと自分が大切に思うことを本気で伝えれば絶対に分かってもらえると思ったし、それ(今回のリリース)が“当たり前”じゃなかったとしても伝えたい意思があれば行動を起こしていい。たった一度の人生、やりたいことをちゃんとした形でやるのは悪いことじゃないって確信できたから、曲が書けたんだと思います。

――〈たった一度だけ 与えられた世界が 美しくて よかった〉という歌詞も私はすごく染みましたね。そう思えるかどうかは自分次第なんだなって。

西野:人生いろんなことがあるし、美しくないと思って過ごしてる人もたくさんいるかもしれない。けど、美しくしよう、美しく過ごそうとすればいくらでも美しく過ごせる気がして。たった一度だけ与えてもらった人生で、人に何か言われてやりたいことが叶わなかったり、グッと堪えて過ごすっていうのはあまりにも酷だし、それは自分に対しても思う気持ちですね。

――別のインタビュー記事で拝見したのですが、西野さんは幼少期から自分の思うようなことがやれない時期もあったそうですね。

西野:先ほど、ドラマの春日さんとの共通点で「いろんなコンプレックスを持ったまま大人になった」と話しましたが、抑圧されて育ってきたようなところも私は春日さんと似てて。幼少期からクラシック音楽を学んでいたんですけど、いわゆるスパルタ教育という環境で育って、スキルアップを望んで日々レッスンに挑んでいたので、ポジティブではありつつも我慢することに慣れてしまったというのは確実にあったと今は思います。あと意見を言うのが苦手で、授業中も思っていることはあるけど手は挙げられず、大人になってからも周りにすごく気を遣って合わせるタイプで。結構自分でギューってしながら、「私はこういう役割なんだ」って思いながら生きてきました。

――それが一気に解放されたのが2022年?

西野:はい。人間関係も上手くいってると思ってたんですけど、中には自分を抑圧してるからこそできていたコミュニティもあったことに気づきました。今思うと、しんどかったようなことも麻痺していたんだと思います。そこを一気に抜けたら、近くにいる人が変わって。気持ちの良い人たちが残って、さらにそこから新しい出会いに恵まれて、やっと自然に息を吸って言葉を吐けるようになった。そんな2022年だったので、“なーんだ、全ては自分だったんだ”って。話は前後しますが、あのタイミングで春日さんになれたのも改めてすごく良かったなと。春日さんは、人が何と言おうと自分のやりたいことや思ってることを素直に表現できる人なので、演じながら“これでいいんだ”って思えることがたくさんあって救われました。

――「暁」の話に戻りますが、ピアノはご自身の演奏ではなくピアニストの梅井美咲さんに依頼。周りのスタッフは驚いていたようですね。

西野:歌を出すというのは新しい自分だと思っていたので。今までのピアノの技術で今回の歌を出すと、今まで培ってきた強靭なプレイスタイル、それって新しいのか? って思っちゃって。自分のピアノが悪いわけではなく、新しいものを作りたいと思っていたから、今までの経験を要素の一つにしたくないというか。

――そうだったんですね。

西野:スタッフさんには「自分の音のイメージと違うかもしれない。人に発注するって嫌じゃない?」と聞かれたんですけど、「全然!」って(笑)。梅ちゃん(梅井)は面識がなかったけど、紹介していただいた瞬間に“あ、私に合いそう!”って。アレンジもステキに作ってもらいました。今回、私は1秒も鍵盤を触ってないです(笑)。

――バイオリンは岡部磨知さん、チェロは水野由紀さんという著名なお二方が参加されています。

西野:豪華ですよね。まっちー(岡部磨知)はもともとお友達で、仕事やプライベートの話もよくする仲。私の音を彩ってくれるだろうなと思ってお願いしました。で、そのまっちーが紹介してくれたのが水野由紀ちゃん。2人はよく一緒に仕事をしていて、私もよくご一緒させてもらってます。由紀ちゃんもすごく感情のこもったチェロを弾かれる方なのでオファーさせていただきました。

――皆さんの演奏を聴いていかがでしたか?

西野:いや、いいな、素晴らしいなと。サポートミュージシャンってこうじゃなきゃダメだよなって、自分の今までの仕事を客観的に見て反省したりもしました(笑)。

――今後、音楽で伝えたいことや挑戦したいことはありますか?

西野:2023年はバンドのアレンジでEPとか出してみたいなって。そこに何を込めるかはまだ決めてないですけど、最近、若かりし頃に過ごした吉祥寺に行く機会がありまして。本当にうだつの上がらない時期に過ごしていた街なので、いろんなことを思い出して涙が出てきたんですよね。当時はまだ車もなく、でっかい88鍵盤を背負ってライブに通ってたな、今ではできないどんちゃん騒ぎもしてたなとか、忘れていたことがいろいろ蘇ってきて苦しくなったり楽しくなったりして。なので次は、そういう感情から派生したものが曲になるかもしれないです。

――早く聴いてみたいです。

西野:みんな、今の職業や生活に辿りつくまでのドラマが絶対にあるじゃないですか。そういう懐かしい気持ちって誰しも共通するところがあると思うし、忙しいと忘れがちだけど、心に持ち続けていることは大事だと思うので。あとは自分の曲がちゃんと聴いた人に伝わって、その人の生活に少しずつ変化が起こるっていうのを「暁」に寄せられた感想などで初めて知れたので、またそういうことが味わえたらうれしいです。

西野恵未「暁」

■楽曲情報
Artist:西野恵未
Title:暁

作詞・作曲:西野恵未

Piano:梅井美咲
Violin:岡部磨知
Cello:水野由紀

Recording Studio:Studio Happiness
Recording, Mix, Matering Engineer:平野栄二

Jacket Art Work : TaKu‘ ,n(タクエヌ)

Artist Photogragh
art director : Sayuri Kutsuzawa
photographer : haruta
hair&make up : madoka
stylist : Risa Kutsuzawa

■「暁」リリース特設ページ
https://nishinoemi.bitfan.id/

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