いよいよライブは後半へと突入。痛快なパンクチューン「ワンドリンク別」では、今はまだ声を出すことができない観客が、お決まりの〈ワンドリンク別〉という合いの手を入れる代わりに全力で手を上げて応えていく。会場の熱量と一体感はクライマックスへ向けてどんどん高まっていき、「星が泳ぐ」では、田辺の渾身のギターソロに呼応して、はっとりが壮絶なシャウトを轟かせた一幕もあった。まるで、残された全ての力をこのツアーファイナルのステージの上で出し尽くすような凄まじい迫力であった。

　希望の唄「ヤングアダルト」を歌い終えたはっとりは、最後のMCパートで胸の内の想いを余すことなく丁寧に語った。自分を救うために音楽を作り始めたものの、はじめの頃は、メッセージや表現とは程遠いどうしようもない歌ばかりだったという。それでも、自分の孤独は自分にしか救えない。一人で音楽をやっていく選択肢もあったけれど、ある日ユニコーンに出会い、どうしてもバンドをやりたいと思った。そして10年前に今のメンバーとバンドを組んだ。そこから今日に至るまで大変なこともたくさんあったし、その過程では大切なメンバーとの別れも経験した。それでも、いつも隣には頼もしいメンバーたちがいてくれて、そして、マカロニえんぴつというバンドを信じてついてきてくれるたくさんのお客さんと出会うことができた。「もう俺なりのユニコーンは、あなたと一緒にできあがりました」。はっとりは、メンバーと一人ひとりの観客に向けてそう真摯に語り、そして本編ラストの「なんでもないよ、」へ。何度も繰り返して聴いてきた〈君といるときの僕が好きだ〉という言葉が、この日はまるではっとりからの直接的なメッセージのように響いていて、いつも以上に温かく心に沁みた。

 

　アンコールでは、新曲「リンジュー・ラヴ」が披露される嬉しいサプライズも。そして、「僕らは夢の中」では、4人は声を重ねて〈ロックバンドは最高だ〉と高らかに歌い上げてみせた。先ほどのはっとりのMCと相まって、音源で聴くのとは比べようもないほどに一つひとつの言葉が深く胸に響く。何より、4人で歌う〈僕らは夢をみたり魅せたりする／ロックバンドは簡単さ  やめなきゃ続くんだ〉という言葉には、これからもロックバンドを続けていくという彼らの揺るがぬ覚悟が滲んでいたように思う。ラストは、初の全国流通盤『アルデンテ』の1曲目を飾った、マカロニえんぴつにとってのはじまりの唄「鳴らせ」で大団円を迎えた。〈鳴らせ  響くまで  ここにいるって／ちゃんとここにいるってさ 叫ぶんだ〉この言葉の響き方は2015年のリリース当時とは大きく変わったけれど、しかし、楽曲に込められた4人のフレッシュな決意は不変だ。さいたまスーパーアリーナは、彼らにとっては一つの通過点に過ぎない。2023年以降のさらなる大躍進を確信させてくれるような、素晴らしい一夜だった。