ASP、パンク精神の中に見える優しさ ツアーファイナル公演で作り上げたカオスな空間

 ここからもパンクを軸に様々な方向性のASPで魅了していく。「心を込めて歌いたい曲」と話してから歌われた、シンセサウンドとギターサウンドがMIXしたエモーショナルなナンバー「I won't let you go」では、薄暗い照明の中でクールに洗練されたダンスをしていた。もちろんユメカの叫ぶような煽りから始まった「NO REASON」や、高く拳を突き上げた「WAiT and WASTE」のような、彼女たちの強みが存分に生かされた衝動的なロック曲もしっかり中盤に披露されている。全26曲のステージということもあり、セットリストのバランスは考え抜かれているようだ。ライブも後半に入ると楽しさや感動を与えるような楽曲も。青春パンクの影響を感じる「SPiT OUT」や壮大なトラックに圧倒させられてしまう「I wanna live」など、後半でさらに新たな一面を見せる。チッチチチーチーチーの「この曲と一緒に強くなっていけたら」という言葉から披露された新曲「Tokyo Sky Blues」も、ASPの音楽性の幅を広げる楽曲だろう。モグのラップが印象的で、都会的なクールさとASPのパンクな勢いがミックスされた、唯一無二の楽曲になっていた。

 ASPの存在や活動について歌っているような「A Song of Punk」で感動的な空気を作り出し、ライブの終わりが近づいていることをパフォーマンスを通じて伝える。そして客席天井やステージに設置されたミラーボールが周り会場全体を美しい光で包んだ「SAKEBE」で深い余韻を残し、メンバーはステージを後にした。すかさずアンコールを求め、盛大な拍手を鳴らすならず者。それに導かれ再びステージに登場したメンバーは、一人ずつ今回のライブの感想やグループやならず者への想いを語っていった。特にマチルダー・ツインズの「ライブは一瞬で終わってしまいます。でも今日感じた感情や記憶は、日をまたいでもずっと続いていくものだと思います」という言葉は印象的だった。まさに忘れることができない、心を掴むライブだったからだ。そしてキャッチーなメロディの「Hyper Cracker」、サビでメンバーが前に出て横一列になり客席全体を眺めながら歌った「M」と、幸福感に満ちたパフォーマンスを繰り広げる。ラストは「レリゴ」。衝動的なパンクナンバーではあるが、メンバーが円になり回ったり高くピースを掲げるダンスを見ていると、それだけで心が温かくなる。

 ASPは「ANTi SOCIETY PUNKS」の略称で「反社会的でパンクな奴ら」という意味である。しかしパンクは反社会的であると同時に、優しい音楽でもある。THE BLUE HEARTSも銀杏BOYZも衝動的なパンクではあるが、聴いた者の心を抱きしめてくれる優しさがある。ASPのライブを観て、〈下手くそなラブソング食わせたいから〉と歌う彼女たちもまさに優しいパンクではないかと思った。

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