MUCC、アルバム『新世界』を完結させた全てが濃厚なステージ 『新世界 別巻』発売記念公演をレポート

 12月21日に新作『新世界 別巻』をリリースしたMUCCが、12月22日、23日に恵比寿LIQUIDROOMで『MUCC TOUR 2022「新世界」〜Beginning of the 25th Anniversary〜「新世界 別巻」発売記念公演「新世界 完結編」』を開催した。

 そのライブをレポートする前に、まず新作『新世界 別巻』について。これは、6月9日に発売した16枚目のアルバム『新世界』に収録できなかったアウトテイクナンバーの作品として当初は企画された。ところが6月から夏まで続いた『新世界』のツアーを行なっていく中で、新たな曲やアイデアなどが湧き上がる。その結果、新録曲やツアー会場限定で発売されていたシングルの別ミックスなども加わり、『新世界』の続編と呼べる作品になった。

 今回のライブは、タイトルどおり『新世界』と『新世界 別巻』を一挙に聴かせる、まさに完結編である。

 2デイズの初日となった12月22日のステージは、『新世界』のオープニングでもあるインスト「新世界」をSEに幕を開けた。真っ赤な照明がステージを妖しく演出する中、現われたYUKKE(Ba)、ミヤ(Gt)、サポートのAllen(Dr)と吉田トオル(Key)。最後に逹瑯(Vo)が登場すると、大きな拍手がMUCCを包んだ。期待感が一気に高まる中、ミヤのフレーズを合図に「星に願いを」へ続いた。『新世界』を基調にした始まり方だが、ストイックなまでに曲に入り込んだメンバーが鳴らす音やメロディ、言葉のひとつずつは、すさまじい説得力も持つ。オーディエンスはバンドの放つ世界に引きずり込まれ、興奮と快楽を早くも味わっていた。

 そして3曲目「空-ku-」からは『新世界 別巻』からの曲を叩きつけていくMUCC。最新のレーザー照明を駆使して、歌詞の印象的なワードをステージに映し出しながら、オーディエンスに曲をさらに染み込ませる「空-ku-」もあれば、逹瑯が「猿ども、イケんのか!」と挑発して突入した「猿轡」では、YUKKEがアップライトベースで攻撃的な奏法も決め、ヘッドバンギングするオーディエンスでフロアはカオス状態に。そして「I wanna kiss」ではサイケデリックな匂いも放つフレーズやアンサンブルで、今度はオーディエンスの身も心もとろけさせていく。トドメにはサイケな光の渦の中で「パーフェクトサークル」を披露し、トリップ感覚にも陥らせる。

 1曲ずつが強い個性と中毒性を放っている。もともと『新世界』は、3人体制のMUCCにとって初アルバムということもあり、今の自分たちが聴きたいものや演奏したいものを純粋に追求した作品だった。3人はそれぞれソングライターとして好きなものを遠慮なく表現したことで、ジャンルも時代性も様々な要素が各曲に内包されることに。曲ごとの色合いも違えば、ふり幅も激しい。だが結成から25年続いているバンドだけが持つ実力の高さによって、どれもがMUCCの新たな魅力に昇華されている。

 それら楽曲をステージで披露していくのは、『新世界』の長期に渡ったツアーと、約20年前のアルバム『是空』と『朽木の灯』の再現ツアーを経たMUCC。音源の形からさらに成長した曲になっているのはもちろん、各メンバーの研ぎ澄まされたプレイにも引き込まれるばかり。また逹瑯の凄みさえ感じさせる様々な唱法は、オーディエンス全員の心をわし掴みにしたまま放すことがない。

関連記事