Benlou、“J-POP全盛期の歌謡曲”から受けた影響 衒いないメロディ&オルタナティブなセンスから見える新たな方向性

 では20代の仙田がイメージする「J-POP全盛期の歌謡曲」とは、例えばどんな曲を指すのだろうか。

「それこそたくさんありますが、当時の楽曲でしたら寺尾聡さんの『ルビーの指環」が頭にふと浮かびましたね。この楽曲の魅力を挙げるとキリがありませんが、松本隆さんが描く心理描写、情景描写の鮮明さが素晴らしいですね。〈くもり硝子の向うは風の街〉から始まる都会的で大人びた世界観、それを、憂いを帯びたメロディに乗せて淡々と歌い上げる寺尾さんの歌声、洗練されたAORサウンド……。これらすべてが組み合わさることで、唯一無二のクールな質感が表現されているのだと感じます。私はJ-POP全盛期と言われる当時の反響を知らない世代ですが、この曲も含めて今もなお愛され続ける名曲たちには、やはり色褪せない魅力が溢れていると思います」(仙田)

 そんな仙田の、ある種「憧憬」とも表現できる歌謡曲への想いをそのままパッケージせず、持ち前のオルタナティブなセンスと数々の引用を散りばめることで、一筋縄ではいかないアレンジに落とし込んでいるのが山本だ。ケレン味たっぷりのメロディとは裏腹に、涼しげなシンセフレーズや心地よいエレピの残響音、クランチ気味の乾いたカッティングギターが、何ともいえない浮遊感を醸し出している。

「U2の『Discothèque』みたいなギターリフ、Beckの『Where It’s At』のエレピの雰囲気はいつかやってみたいなと思っていました。シンセサイザーはKraftwerkやELO(Electric Light Orchestra)から影響を受けています。引用できるフレーズは、できるだけわかりやすく引用しつつ、まあそこは茶目っ気というか遊び心ですね」(山本)

 なお、レコーディングには前2作に引き続きくるりの佐藤征史(Ba)、元MUTE BEATの屋敷豪太(Dr)、そして山本が所属するプロジェクト 好芻のレコーディングにも参加している西野恵未(Key)といったメンバーが参加し、卓越したアンサンブルを披露している。

 それにしても、3曲並べばBenlouの「音楽的な方向性」がある程度見えてくるかと思いきや、その振り幅は大きくなっていく一方。空を掴むような思いもますます強まった。強いて言えば、ストレートで衒いのない仙田の歌声&ソングライティングと、そこに別の角度から光を当てる山本のシニカルかつ音楽偏愛的なアレンジ、そのミックスバランスこそがBenlouをBenlouたらしめているのかもしれない。

Benlou『路地裏』

■Release info
3rd Digital Single「路地裏」
2022年12月21日(水)配信リリース
https://benlou.lnk.to/backstreet

Official HP
https://www.benlou.jp/

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