wacci、コロナ禍の悔しさから「恋だろ」ヒットで強まるライブへの想い 10年で磨き上げた“バンドサウンド”への絶対的な自信

 今年メジャーデビュー10周年を迎えた5人組ポップロックバンド、wacciが2022年9月10日の福岡県「ももちパレス」を皮切りにスタートしたホールツアー『wacci Hall Tour 2022 ~Boost!~』が2023年1月7日、いよいよファイナル公演を迎える。場所は、彼らが「ホーム」と呼ぶ神奈川県民ホール。「別の人の彼女になったよ」や「恋だろ」のヒットにより、新規のファンも着実に獲得し続ける彼らが、新旧全てのファンに向けて放つ集大成的なステージになること必至だ。

 この記念すべき公演を、WOWOWプラスにて生中継することも決定しているwacci。ツアーのこれまでと、バンドのこれからについて、現在どのような心境でいるのだろうか。「恋だろ」制作エピソードも含めてメンバー全員にじっくり話を聞いた。(黒田隆憲)【最終ページに読者プレゼントあり】

“wacciの10年”を伝えられるライブが出来ている(橋口)

ーー福岡から始まった全国ホールツアーですが、ここまでの手応えはいかがですか?

橋口洋平:デビュー10周年というタイミングでのホールツアーで、新しく出したアルバムの中からの曲もやるし、これまで積み重ねてきた曲の中から“代表曲”と呼べるものもセットリストに織り交ぜているので、“wacciの10年”を伝えられるライブが出来ている気がしています。

横山祐介:手応えはとても良いですね。特に「恋だろ」の影響なのか、初めてwacciのライブを観にきてくださった方がとても多くて。そういう方達が、今までずっと応援してきてくれたファンの方たちと一緒に盛り上がってくれることがとても嬉しかったです。

村中慧慈:しかも、初めて観にきてくださった方たちの熱量が、今までとはまた全然違うんですよ。これまで47都道府県ツアーをはじめ、様々な試みをしてきたことがようやく実を結んだというか。頑張っていい曲を作って届けているということが、ちゃんと伝わっていることを確認できたという意味でもいいツアーになっていると思います。

因幡始:今までのツアーは、結構日程が詰まっていて。1公演やったらすぐに次の公演ということが多かったんですけど、今回は結構間が空いているんです。そのぶん記憶もちょっと曖昧になるわけですが(笑)、それが今回すごくいい方向に僕らを運んでくれたのではないかと。適度な緊張感と新鮮味を保ちながら、毎回1本目のような気持ちで演奏できました。そうやって楽しんでいる様子が、お客さんにも伝わっていたら嬉しいです。

小野裕基:今みんなが言ってくれたように、今回は「恋だろ」で初めて僕らを知ってくれたお客さんがたくさん来てくれていますね。思えば2018年に「別の人の彼女になったよ」という曲を出した時も、新しいお客さんが結構増えて、その頃47都道府県ツアーをやっていて、「東京からこんなに離れていても、お客さんがこんなに入ってくれるようになったんだ」としみじみ感じました。ところがその矢先にコロナ禍になってしまって。せっかくのチャンスをうまく活かしきれなかったところがあったので、今回「恋だろ」が話題になっている絶好のタイミングでツアーをまわれていることが嬉しいです。

ーーキャリアを重ねる中で、ライブに対する考え方の変化やパフォーマンスの成長についてはお互いにどう思っているのでしょうか。

橋口:まず何より、演奏を褒められることが多くなりました。それってバンドの演奏スキルが上がっているということだと思うんですよね。例えば何か企画ライブがあった時、対バンしていたシンガーソングライターと最後にセッションする機会が多いのですが、そうすると「橋口はいつも、こんないいバンドを背負って歌っているなんて羨ましい」と言ってもらうことが多くて。シンプルに誇らしい気持ちになるし、バンドのみんなにはもっと感謝しなきゃなとそのたびに強く思っていますね。

小野:デビュー時と比べたらいろんなことが出来るようになったのかなと思います。当時からお世話になっている楽器テックのスタッフが、先日メジャーデビューして初めてのワンマンライブの同録を「これ聴いてみたほうがいいよ」と言って送ってくださったんですよ。それを見ると、まだまだ荒さもあるのですが、やっぱり最近は力の入れどころや抜きどころがだんだん分かってきたのかなという気がします。

因幡:やっぱり、経験値が上がりましたよね。ライブ中にちょっとしたアクシデントがあっても、すぐにそれをリカバーできるし、常に揺らがないアンサンブルに自分たちの歴史を感じます。技術的な部分は、もちろん続けていけばそれなりに上手くいくと思うのですが、メンタル面での強さや対応力に「俺たちも大人になったな」と(笑)。例えば武道館ライブの時、ど頭からギターの音が出ないというトラブルがあり、その影響で村中はステージで横を向いてギターを弾かなければならなくなったのですが、かえってそれがめちゃくちゃかっこいいステージングになったんです(笑)。何かトラブルがあったとき、各々が前向きに対処できるようになったのは大きな成長かなと。

村中:年々、肩の力の抜け方が上手くなってきた気がします。年齢的な部分もあるのかもしれないけど、どんどん自然体になって楽しんで音楽ができる心境になれたのは、長年やってきたからなのかなと思っていますね。それは何かターニングポイントがあってそうなったわけではなくて、気が付いたらここまで来ていたというか。思えば47都道府県ツアーをやっていた頃は、週に3回、4回のペースでライブをやっていて、生活の中に音楽が溶け込んでいたような状況だったのも大きかったと思っています。

横山:去年、武道館ライブを経験したことも僕らの自信につながっている気がします。僕はドラマーなので、ステージの一番奥でメンバーの後ろ姿を見ていることが多いのですが、みんな気負いなくベストのパフォーマンスを出せている気がします。

神社仏閣めぐりがツアー中の楽しみ(小野)

wacci Live at 日本武道館 2021 ~YOUdience~ | 別の人の彼女になったよ

ーーみなさん、ツアーの時はどんなことを楽しみにしていますか?

横山:僕はその土地のサウナへ行くのが毎回楽しみですね。確かwacciにとって最初のツアーだったから2018年ごろかな、andropのメンバーと滞在先のホテルで偶然会った時にサウナの良さを熱弁され、そこから行くようになったんです。熊本の『湯らっくす』が特におすすめですね。

村中:僕も横山と一緒にサウナへ行くことが多いですね。ライブで心地よく疲れた後の、その土地のサウナは格別で。出た後、もう一回ライブ出来るんじゃないか? と思うくらい元気になるんですよ(笑)。

橋口:僕は歌うこともあって、体調管理のためにあまり外出しないようにしているんですけど、僕だけ入りを遅くしてもらっている時が結構あるので、知らない土地を散歩したり、地元の人しか行かないようなところへ行ったりするのが楽しみですね。そこで出会った人や、見つけたものをMCのネタにすることも、たまにありますよ。

因幡:僕は結構インドアなので、あまり外出することはないのですが、ツアー先で1日オフになった時など車を借りて色々巡ることもありますね。最近だと熊本へ行った時に天草一周観光をしようと思ったんですけど、広すぎて途中で「こりゃ無理だな」と思って半周だけして帰ってきました(笑)。

小野:神社仏閣めぐりがツアー中の楽しみです。朝早く起きて、ホテルから30分くらいのところにあるなら散歩がてら徒歩で行くし、例えば長野で1日オフだった時は、長野駅からバスに乗って戸隠五社まで行きました。別に神社そのものに詳しいわけでもないんですけど、その空間が好きでよく行っていますね。

関連記事