“ディズニーへの不満”から始まった世界的ブレイク セイレム・イリース、社会に問題提起するポップソングの求心力

 カリフォルニア州生まれ、現在23歳のシンガーソングライター、セイレム・イリース。2020年に“ディズニーに怒っている”と歌った「Mad at Disney」の歌唱動画がTikTokで大バズりしたことにより、彼女の存在を知った人も多いだろう。「Mad at Disney」はカーディ・Bのヒット曲を抑えてSpotifyのバイラルチャート1位を獲得し、Spotifyで2億回再生された。2021年には EP『(L)only Child』のリリースの他、アラン・ウォーカー、Surfaces等とコラボ、さらにはベラ・ポーチの「Build A Bitch」やTOMORROW X TOGETHERの「Anti-Romantic」の楽曲制作などを手掛けてきた。楽曲「Coke & Mentos」はプロが選ぶ2021年のトップ10楽曲として『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)にて紹介され、2022年には『SUMMER SONIC』に出演。2022年8月には、日本独自企画盤EP『Unsponsored Content』もリリースされており、日本でも話題になっているセイレム・イリースの活躍を紹介したい。

 4歳のときに歌いはじめ、12歳の頃にはシェールやデヴィッド・クロスビーなどの楽曲にも携わったボニー・ヘイズによってソングライティングの才能を見出された。ボニー・ヘイズはセイレムのメンターになり、彼女に歌とソングライティングを教えたようだ。セイレムはボニー・ヘイズがバークリー音楽学校の教師になったときに、自身もバークリーに入学することを決心したと明かしている(※1)。大学の2年目に中退、ロサンゼルスに移住し、本格的にアーティスト活動を開始する。21歳の誕生日にTikTokに投稿した「Mad at Disney」の歌唱動画がバズり、数百人ほどだったフォロワー数が今では390万人となるまで成長した。

「私はディズニーに怒っているの」セイレム・イリース | Mad at Disney - salem ilese

 キャッチーなメロディの上で、“ディズニーに怒っている”と歌うセイレム・イリース。バークリー音楽大学の同級生であったボーイフレンド ベンディック・ムラーと、ジェイソン・ハースとともに制作しているときに彼女は「Mad at Disney」のコンセプトを思いついたという(※2)。最近のディズニー映画実写化への不満についての会話が盛り上がっているとき、彼女は別の理由でディズニーに怒っているということに気がついたのである。

 セイレム・イリースは「Mad at Disney」にて、幼少期に彼女が見ていたディズニー映画が描いていた「プリンスに助け出してもらうプリンセス像」に対して問題提起している。また、助けられたプリンセスとプリンスの恋愛が全て「めでたしめでたし」と、順風満帆に終わることに対しても疑問を投げかけている。セイレム・イリースは、「囚われの姫」ばかりを描いていた過去のディズニー映画の多様性の少なさを批判しており、幼少期にそのような設定のディズニー映画を見て育ったため、「ディズニーに騙された」と語っている。

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