岸田教団&THE明星ロケッツ、新たな10年へ歩みを進める所信表明 『転生したら剣でした』が結ぶバンドの過去・現在・未来

 岸田教団&THE明星ロケッツのニューシングル『転生したら剣でした』が11月30日にリリースされた。前作『nameless story』から2年10カ月ぶり、通算10作目のシングルとなる今作は、そのタイトルからもわかるようにこの10月からスタートしたTVアニメ『転生したら剣でした』(TOKYO MXほか)のオープニングテーマ。タイアップ作品と同タイトルのアニメソングも最近では珍しいかもしれないが、こと彼らに関しては初期から「HIGHSCHOOL OF THE DEAD」(『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』オープニングテーマ)や「天鏡のアルデラミン」(『ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン』オープニングテーマ)などを手掛けており、ことさら不思議なことではないし、むしろ通常運転と受け取ることができる。

 もはや説明はいらないかもしれないが、岸田教団&THE明星ロケッツはすでに10年以上のキャリアを持つ4人組ロックバンドで、2010年のメジャーデビューシングル『HIGHSCHOOL OF THE DEAD』以降、数々のアニメ主題歌を手掛けている。2021年10月にはデビュー10周年を記念したベストアルバム『異世界転生したらベストアルバムでした。』を発表し、翌2022年に同作を携えたライブツアー『異世界転生したらライブハウスでした。』を成功させたばかりだ。

岸田教団&THE明星ロケッツ - HIGHSCHOOL OF THE DEAD[2021] Music Video(Official)

 そんな彼らが新たに主題歌を担当する『転生したら剣でした』は、シリーズ累計発行部数200万部突破のライトノベルが原作。「知性を持つ武器(インテリジェンス・ウェポン)」と呼ばれる“剣”として異世界に転生した主人公“師匠”が、奴隷として虐げられていた黒猫族の少女・フランと出会うことで共闘し、数々のクエストをこなしながらそれぞれの“願い”を叶えるために冒険を繰り広げていく人気無機物転生ファンタジー作品となっている。

岸田教団&THE明星ロケッツ - 転生したら剣でした Music Video(Official)

 バンドにとって初の“異世界転生モノ”主題歌となる本楽曲は、眼前に待ち受ける逆境に立ち向かう主人公の強い意志が、焦燥感溢れるシャープなバンドサウンドで表現された極上のロックチューン。アニメで使用される89秒バージョンだけでもリスナーや視聴者の士気を上げるに十分な内容だが、フルコーラスで聴くと起承転結がしっかりと表現されたアレンジであることに気づかされる。

 ダイナミックなオープニングから一度落ち着いたマイナートーンへと移ると、〈希望なんてもう 久しく見ていない/絶望になれきった意思と瞳〉とネガティブな歌い出しで曲の空気が一変。そこから〈このままじゃ終われない だけど進めない〉と葛藤する主人公の心情がカオティックなアンサンブルで描かれるも、サビでは〈だからその手を伸ばして 限界を穿く〉のフレーズとともに、開放感の強いメジャーキーで一気に爆発する。この曲の主人公にとって掴み取るべき“剣”とは“ミライ”であり、ichigo(Vo)の伸びやかなボーカルが輝く“セカイ”に向けて勇気と覚悟を持って一歩前進するための後押しをする。その後も縦横無尽にのたうち回るはやぴ〜(Gt)のギターと、スリリングな旅の道のりを重厚感の強いサウンドで表現する岸田(Ba)&みっちゃん(Dr)のリズムセクション、そして聴き手にポジティブな感情を与えるichigoの歌声が、“美しい明日”を掴み取ろうとする主人公を最良の形で応援。聴き終えたあとの爽快感は筆舌に尽くし難いものがあり、まさに岸田教団&THE明星ロケッツの真骨頂と呼ぶにふさわしい1曲だ。

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