claquepot、細部に至るまでの徹底したこだわり 初のフルアルバム『the test』を機に明かす音楽ルーツや創作の裏側
顔を明かさないスタイルながら、音楽ストリーミングサービスを中心に静かに人気を集めるclaquepotが、初のフルアルバム『the test』を完成させた。claquepotにとって初のフィジカル作品となる本作は、これまでに配信リリースしてきた楽曲をほぼ網羅したベストアルバム的な内容。Novel Coreを迎えた新曲「blue print feat. Novel Core」も収録されている。自ら作詞作曲をこなし、全楽曲をセルフプロデュースするclaquepotの音楽はどのようにして生まれているのか。今回はルーツ音楽を皮切りに、作風の移り変わりや、作り手としての意識の変化、さらに作業手順や歌詞、アレンジ、ミックスに至るまで、楽曲制作の裏側を徹底的に深掘り。細部までこだわり抜くclaquepotの創作を紐解いた。(猪又孝)
ヒット曲を狙うんじゃなくて、背伸びしていないところでやりたい
――claquepotは2019年からリリースを開始しましたが、最初の曲「むすんで」は2016年の段階でYouTubeに投稿されています。そもそも、このプロジェクトはどのように始まったんでしょうか。claquepot:実は投稿後に削除しているものもあるので、2011年くらいから始まってるんです。当時は渋谷界隈のラッパーやアーティストと曲を作ってYouTubeに上げていました。その延長で名前をclaquepotにしたのが2012年頃。ちゃんとリリースするまでに時間がかかったという感じです。
ーーclaquepotの楽曲にはR&Bやソウルミュージックの影響を感じます。ルーツ音楽はどの辺りなんですか?
claquepot:R&Bやヒップホップが強いんですけど、どちらかというとUSというよりUKなんです。
――アシッドジャズのテイストも強く感じます。
claquepot:もともとジャミロクワイとか、そのあたりの人たちが好きなんです。あとはAORとか、ソウルテイストな音楽とか、ブルーアイドソウルとかをよく聴いていたこともあって、無意識に作る曲がそっちに寄ってるのかもしれないです。意図的に寄せているというより自然に出ている感じ。
――そういう音楽性を表現したくてclaquepotを始めたところもあるんですか?
claquepot:いわゆるヒット曲を狙うんじゃなくて、背伸びしていないところでやりたいという気持ちがありましたし、それで結果を出したいという思いもありましたね。
――AORへの入り口はどういうところなんですか? たとえばボビー・コールドウェルとか?
claquepot:大好きです。後追いですけど。入り口はヒップホップですね。たとえばコモンが「The Light」で、ボビー・コールドウェルの「Open Your Eyes」をサンプリングしていたり。そういう元ネタを探していって辿り着いたのがジャズとかAOR系の音楽だったんで、その流れで入っていったところがあるかもしれません。
――だからclaquepotはメロウなタイプの楽曲が多いんですね。日本のR&Bシンガーやラッパーは聴いていましたか?
claquepot:好きなのはRHYMESTERですね。中学生の頃に「ウワサの真相 featuring F.O.H」を聴いていました。いわゆるギャングスタラップというよりは、社会的なことを歌ったり、ちょっと知的なものを中高時代は好んで聴いていました。
――ということは、「ウワサの真相」の流れからF.O.H(Full Of Harmony)を掘ったり?
claquepot:なんだったらF.O.HからRHYMESTERを知ったかも。僕が中学生の頃、ジャパニーズR&Bの全盛期だったんです。それこそ宇多田ヒカルさんとか平井堅さん、CHEMISTRY、Skoop On Somebodyとか。
――松尾潔さんのプロデュースワークスですね。
claquepot:そうです。そこからハマっていったので、ゴリゴリマッチョなR&Bというよりは、より洗練されたもの、シティポップ寄りなものを好んで聴くようになって。そこからさらに掘っていって山下達郎さんとかにたどり着くんです。
――少しツウな名前を挙げると葛谷葉子さんも好きだったのでは?
claquepot:好きでした。CDのクレジットをチェックするのが好きだったので、たとえばCHEMISTRYの曲で「この曲、誰が作ってるんだろう?」って見てみると、お名前があって。いつか曲を作ってもらいたいなと思いながらメモしていました。