落日飛車、拍謝少年……『2022 TCCF 創意內容大會』から見えた台湾インディーズの未来 現地の模様とともにレポート
そしてもう1組の注目アーティストは羅妍婷(YenTing Lo)です。
彼女は『GIMA(Golden Indie Music Awards)』でベストジャズアルバム賞を2020年、2021年と連続して受賞するという快挙を成し遂げながらも、まだまだ才能に見合った知名度を得られていない印象です。これまで3枚のCDをリリース。作品を重ねるごとにミクスチャー感を強めて、2020年に発売されたEP『OFF-SCORE』は「台湾のHiatus Kaiyote」とでも評したくなるジャズの解釈を押し拡げた名作で、もっと日本でも注目されても良いのでは? と感じていたので、ライブをとても楽しみにしていました。
今回は彼女がキーボード&ボーカルで、他にギター、ベース、ドラムという4人編成でしたが、それぞれのメンバーがポップスと接点を持ったジャズプレイヤーというところがポイント(ドラムのDee ChenはLiliumというバンドに所属しながらThe Chairsなど数多くのサポートを務める話題のプレイヤー)。新しい何かを生み出しそうな予感をさせるバリエーションに富んだプレイで聴衆を魅了しました。羅妍婷(YenTing Lo)本人の歌声もスタジオ音源より、さらにパワフルに感じられて、なんだかステージがとても狭く感じました。
彼女がこの先、どこに向かおうとしているのかーーもちろん知る由もありませんが、日本でMELRAWや石若駿、WONKなどがポップスと絶妙な距離感でマーケットを作り上げたように、彼女の器用さでフライング・ロータスによる<ブレインフィーダー>的なシーンを台湾に作ってくれたら面白くなるんじゃないだろうかという妄想に駆られながら、台湾の涼しい夜風に吹かれて、3日間に渡るショーケースは終わりを迎えました。
まだまだ他にも紹介したいアーティストがたくさんいるのですが、ページの都合で今回はここまでです。今回、出演していた台湾のアーティストはほんの一部ですが、改めて台湾には日本や欧米のシーンと共振できる部分が無限にあるような気がしました。すでに落日飛車(Sunset Rollercoaster)がアメリカで話題になりつつありますが、これを皮切りに、K-POPに続いてT-POPが世界を席巻する日が来るかもしれません。音楽がストリーミングに移行して、世界中の音源を瞬時に聴く環境が整った今だからこそ、オンラインできっかけを作り、リアルな交流の場で新しいもの作りをしていくことを日本も意識的に取り組んでいくべきだと感じた3日間でした。
■「台湾クリエイティブ‧コンテンツ‧エイジェンシー(TAICCA)」とは
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台湾政府のもとに2019年に創設された「台湾クリエイティブ・コンテンツ・エイジェンシー(Taiwan Creative Content Agency)」(通称TAICCA)は、台湾文化コンテンツの産業化、国際化を促進する独立行政法人です。TAICCAは国際共同制作資金、コンテンツ開発支援投資資金などの産業促進プランを用意しており民間と協業しながら台湾発の文化コンテンツをサポートし、海外発信にも力を入れてきました。ドラマ、映画、音楽、出版、アニメ、ゲーム、コミック、ファッションデザインから文化的テクノロジー応用まで、あらゆる台湾発の文化的コンテンツを支援し、またそのコンテンツの普及と、ビジネスの活性化を目的に活動しています。