時代の変化の中で『紅白』らしさを保てるか ウタの初出場が映し出す番組の課題と方向性

 Adoについてはもうひとつ、今年アメリカの<ゲフィン・レコード>とパートナーシップを締結、本格的な海外進出に向けて一歩踏み出すというニュースがあった。そこには、今回の『紅白』のもうひとつのキーワード、「海外」と結びつく部分がある。

 今回の出場歌手には、海外志向、あるいは海外とかかわりのあるアーティストが多い。初出場組のIVE、LE SSERAFIM、JO1、さらにTWICEやNiziUは、音楽面、メンバー構成や出身オーディション番組の面などで韓国とのつながりが深い。BE:FIRSTも、当初から世界を目指すことを公言している。むろんそうしたことの大きな背景としては、K-POPの世界的成功があるだろう。また残念な事ではあったが、King & Princeも海外進出への思いがメンバー3人の脱退決意に至る背景にあった。当然こうしたグローバル志向は、ネットを基盤にしたボーダーレスな音楽環境の発達と連動しているものでもある。

 最大の問題は、こうした時代の変化のなかで「『紅白』らしさ」は保てるのか? ということである。

 ポイントはやはり、「一体感」だろう。テレビからネットへ、またグローバル志向の強まりといった『紅白』の伝統的な土台を揺るがすような変化はあるにせよ、音楽がもたらす感動、そして一体感は本質的に変わらないはずだ。

 確かに『紅白』の全盛期、みんながテレビで歌謡曲を聴き、苦労せずとも一体感が得られた時代ではもうない。だがたとえ世代によって聴く音楽がバラバラな時代になったとしても、新しい/古いに関係なく自分にとって新鮮な音楽を発見し、他世代と共有することは可能なはずだ。今回の『紅白』のテーマにある表現を借りれば、個々の嗜好を尊重したうえでの「シェア」という形の一体感である。

 そのためには、今年であれば、噂にもなった吉田拓郎、松任谷由実、松田聖子、中森明菜のような世代の枠を超える力を持つアーティストの出演が叶うなら、それに越したことはない。今後あるかもしれない出場歌手の追加発表を期待しながら待つことにしたい。

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