King Gnu、2022 NHKサッカーテーマ「Stardom」に刻んだ常田大希自身の物語 「飛行艇」やmillennium paradeとのリンクも

 これを書いているのは11月15日、あと5日でいよいよカタールで『2022 FIFAワールドカップ』が開幕する。いつもなら筆者もワールドカップに入って(結局はできないのだが)仕事をセーブしようとしたり、(だいたいにおいて無理なのだが)拝み倒して締め切りをずらしたりしながら「試合見まくるぞー」と気合を入れている頃なのが、今回は開催時期がズレていることもあってなんだかフワフワしている。「本当にワールドカップ、やるの?」という気持ちがまだ何%かはある。いざ始まったらスイッチが入るのだろうか。

 もしかしたら筆者と同じような感覚の人は結構な数いるかもしれない。気のせいか世の中の盛り上がりも出遅れている感じがする。そうなるとかつてのように国民総出で日本代表を応援するという空気も生まれない。でも大丈夫、そういう人はとりあえずKing Gnuの「Stardom」をエンドレスリピートすればいい。そうすればきっと、横っ面を張り倒されたように気合が入るはずだ。聴いているだけでアドレナリンが出まくって、体温が上がり毛穴が開く。そういう効能効果をもった強力な楽曲である。

 「2022 NHKサッカーテーマ」として書き下ろされたこの「Stardom」。「2022年」といいつつ実質的にはワールドカップ中継のテーマソングとなるわけで、カタールで戦う選手たちを力強くサポートするために生まれた1曲ということだ。中東の砂漠の乾いた風とゆらゆら揺れる陽炎が脳裏に思い浮かぶエキゾチックなイントロから、日本代表のサポーターグループ・ULTRASが参加した力強い掛け声、そしてドラマティックな言葉とメロディが感情を波立たせるサビ。沸々と沸き上がる情熱をそのままトレースしたような楽曲の展開の中で歌われる〈あと一歩 ここからあと一歩〉〈あなたに今応えたいんだ/最後の笛が吹かれるまで〉というフレーズは間違いなく強豪揃いのグループリーグに挑む“サムライブルー”の強力な後押しとなるはずだし、それはリスナーにとっても同じ。この曲を聴けば、何がなんでも応援しなければという気持ちになるはずだ。

 というわけで今からサッカーの映像とともにこの曲が流れるのを待ち侘びているわけだが、サッカー云々をひとまずおいても、この「Stardom」は超重要曲である。つまりKing Gnu自身にとって、という意味だ。楽曲のリリースに際して、今回も常田大希のコメントが発表されているのだが、それを読む限り、そして実際に楽曲の端々に埋め込まれた自伝的ともいえる言葉たちに耳を傾ける限り、これはどう考えてもKing Gnu自身のためのアンセムである。そのコメントの中で常田は2019年にリリースした「飛行艇」に触れつつこんなことを述べている。「(「飛行艇」を)あちこちのスポーツ会場や、様々なスポーツ選手たちが入場曲やテーマソングとして用いてくれていました」。そしてそうした光景を前に気づいたことがある、とも彼は語る。「大変な時代を生き抜く全ての人々の、今日を生き抜くエネルギーになるような音を俺は鳴らしたかったのだ」(※1)。

 確かに「飛行艇」以降King Gnuの姿勢はより鮮明になったし、攻めの姿勢はより強まった。より多くの人に、より強く響く曲を――2019年以降のKing Gnuは、結成当初から描いていたそんなイメージを、加速度的に実現していった。その姿勢は『CEREMONY』というアルバムに結実し、2度のアリーナツアー、そしてまさに11月に開催される東京ドーム公演へと繋がっていった。「飛行艇」によって得た感触がKing Gnuというバンドのギアを一段上げたのかもしれないし、それが正しかったことはその後の軌跡が証明している。

King Gnu - 飛行艇

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