indigo la End、ドラマとライブが交差する初の武道館公演『藍』 リスナーとの愛と信頼が重なり合った美しい一夜

indigo la End、武道館公演レポ

 ライブ後半では、エモーショナルな歌と直球のロックサウンドをストレートに轟かせる楽曲が次々と放たれていく。特に、佐藤栄太郎(Dr)のパワフルなドラムソロから幕を開けた「名もなきハッピーエンド」では、この日一番大きな手拍子が起き、間奏における長田と後鳥の熾烈なソロ回しが生み出す熱狂が凄まじかった。それに呼応するように川谷のギタープレイも昂っていく展開は圧巻で、改めてindigo la Endのロックバンドとしての計り知れないポテンシャルを味わうことができた。

 そして「藍色好きさ」の途中から、ライブ演奏と並走するようにビジョンにドラマが映し出される。まるで〈走る速度が上がれど時間は早くはならない〉という歌詞とリンクするように主人公が夜道を駆けていくシーンが描かれ、その途中で思い出のキーホルダーを道に落としてしまうが、少し逡巡した後、それを拾うことなく意を決したように再び夜道を走り出す。辿り着いたのは日本武道館、そして、実際に会場にドラマの主人公が現れ、ステージを見つめる横顔がビジョンに大きく映し出される。ドラマの枠を飛び越えた演出で、まさに、主人公と観客の“indigo la Endのライブを観る”という体験がぴったりと重なった瞬間であった。

 そのまま続けて披露された「夏夜のマジック」では、主人公と恋人の思い出が詰まったシャボン玉が会場内いっぱいに放たれた。演出と相まって、〈記憶に蓋をするのは勿体無いよ/時間が流れて少しは綺麗な言葉になって/夏になると思い出す別れの歌も/今なら僕を救う気がする〉という一節の切実さが何倍も増幅されていく。過去と決別して前を向くことは、想いが深ければ深いほど簡単なことではなく、その過程には数え切れない苦しみや迷いが伴う。それでもindigo la Endの音楽は、そうした孤独な夜に優しく寄り添い、その後に続いていく人生を強く生きていく力を授けてくれる。その温かく眩い事実を、改めて深く噛み締める時間となった。

 「Play Back End Roll」で、この日のドラマチックなライブを美しく締め括った後、観客からのアンコールに応えて、「通り恋」「冬夜のマジック」を披露。そして、この日最後に披露されたのは未発表の新曲であった。indigo la Endの新境地を切り開くようなカラフルに弾けるポップナンバーではあるが、その節々には彼ら特有の切なさが深く滲んでいた。変化と不変の両方を堪能できるような楽曲で、未来への期待がさらに高まるような素晴らしいパフォーマンスだった。

 今回のライブは、長年にわたりindigo la Endの音楽を聴き続けてきた、そして、救われ続けてきたリスナーにとって、あまりにも特別なものになったと思う。それはきっとメンバーにとっても同じで、武道館という特別な場で、これまでの歩みを総括した上で次の新たな一歩を共にできたことは、彼らの大きな自信と誇りに繋がったはずだ。お互いへの愛と信頼が重なり合うような、美しい一夜だった。

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