Tani Yuuki、幅広い世代を魅了する理由とは? 蔦谷好位置、片寄涼太、天月-あまつき-、足立佳奈……著名人のコメントから紐解く

【総括】Tani Yuuki、変化し続けることで研ぎ澄まされる魅力

 Tani Yuukiの「Myra」がTikTokで流行ったのは2020年のこと。先の見えない不安に人々が困惑していたあの頃、「Myra」に宿っていた切なくもどこか優しいメロディが、若い世代を中心にヒットした。孤独に寄り添う歌として、あるいは、何気ない日常を讃えるBGMとして。

 そしてその翌年、「Myra」とは違った形で「W/X/Y」にも火がつく。今度は振り付けが重なり、曲を通して人と人とが繋がることができるようなヒットとなった。「W/X/Y」は人間同士の関わり方の歌だ。何かとギスギスしがちなこの時代に、この曲は求められるようにして支持された。

 短期間のうちに起きたこの二つのヒット。かくしてTani Yuukiは、TikTok世代を代表する新時代のミュージシャンとして名を馳せたわけだが、彼を一口にSNS発のアーティストと括ってしまうのは、いささか短絡的のような気がしてならない。“バズった人”という側面が際立ちすぎていて、彼が持つ本来のソングライティングの才能が気づかれていないと感じるからだ。

 彼の楽曲に息づくポップセンスには、幅広い世代を虜にするポテンシャルがある。例えばメロディには、ラップ文化を通過した現代的な感覚がありつつも、自然と口ずさみたくなるような絶妙なリズム感がある。流れるように違和感なく乗せられたリリックには、遊び心がありながらも普遍的なワードチョイスで徹底されている。これらは一見簡単なようで難しい。

おかえり - Tani Yuuki【MV】

 また彼の歌声には、優しさと誠実さがある。真っ直ぐで素直な声質だ。ゆえに繊細で傷つきやすく、どこか脆さも孕んでいる。だからこそ彼の歌は、多くの人々の琴線に触れるのかもしれない。

 そして何より、人がいい。何度か取材を重ねてみて分かったのは、彼は自然と人が寄ってくるタイプの人間だということ。穏やかな性格で人柄も柔らかく、人懐っこさのある好青年。だから周りのアーティストたちも彼に協力したくなるし、逆に彼に協力してほしくもなるのだろう。

自分自信 - Tani Yuuki【MV】

 積極的に新しいことに取り組もうとする姿勢も見逃せない。ライブで盛り上がる曲が欲しいと思えばロックアンセムを書くし、人のライブを見て衝撃を受けた技をすぐに自分でも試したりする。Tani Yuukiは常に変わり続けているのだ。それを「軸がない」と彼は謙遜する。しかしそれは、裏を返せば何にでもなれるということでもある。物事を柔軟に吸収し、一つのスタイルに固執していない。

 「自分自信」や「夢喰」といった今年発表してきた楽曲は、その好例だ。曲ごとに変化を見せ、Tani Yuukiがいかに新しい姿に生まれ変われる存在かを見せつけてきた。かと思えば、先日リリースした新曲「もう一度」は一聴して「W/X/Y」路線の一曲とわかる。しかしそれによって、この数年で彼が果たした成長を感じ取ることができる作品にもなっている。終盤になるにつれて見せる音楽的な広がりは、まさにTani Yuukiが今見せている進化そのもの。楽曲の力と人間的な魅力で着実に輪を広げてきた彼が、また一歩、外の世界へと踏み出そうとしている。Tani Yuukiはこれからも、まだまだ変わり続けることによって、幅広い世代を魅了することだろう。(荻原梓)

もう一度 - Tani Yuuki【MV】
Tani Yuuki「おかえり」

■リリース情報
Tani Yuuki「おかえり」
1stアルバム『Memories』よりシングルカット
配信中
ダウンロード/ストリーミングはこちら

Tani Yuuki「もう一度」
配信中
ダウンロード/ストリーミングはこちら

Tani Yuuki オフィシャルサイト

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