乃木坂46 樋口日奈、慈愛に満ちた優しさでグループを支えた11年 誠実さと気迫で届けたアイドル人生ラストステージ
さらに、すでに乃木坂46としてのライブ活動を終了させていた和田まあやも、サプライズゲストとして会場に駆けつける。1期生の中では年少組だった2人も、すでに20代半ばに突入しようとする今、2人で歌うことを選んだのは白石麻衣&橋本奈々未が歌唱したユニット曲「孤独兄弟」。革ジャンを羽織り、クールさを漂わせながら披露する2人だが、感想では樋口が和田に向けて「まあやと乃木坂で出会えて本当によかったし、最高の親友です」と感謝の気持ちを伝える一幕も。最後は涙交じりの笑顔で抱擁を交わし、会場が感動的な空気に包まれた。
セレモニー本編のラストナンバーに選ばれたのは、昨年の『第72回NHK紅白歌合戦』でも披露された「きっかけ」。樋口がグループ卒業を発表したブログには、この曲のサビの一節が引用されており、この日も「これからも少しでも多くの人に元気や笑顔を与えられる、そんなきっかけの一部になれるように強く生きていきたい」という決意を込めて歌唱された。まさに、新たな旅立ちを目前にした彼女にぴったりな1曲だ。
そんな自身の強い意志を表した1曲を経て、アンコールでは応援してくれたファンに対する愛情を表現した「誰よりそばにいたい」をソロ歌唱。紫を基調としたドレスを身に纏った彼女は、「これからも皆さんのそばに、誰よりもいたいなと思います」と素直な思いを告げる。しんみりしたムードが続いたが、ここからは本人曰く「最後はみんなで楽しく終わりたい」ということで、ライブの定番曲「ロマンスのスタート」へと移行。オレンジ色のライブTシャツに着替えたメンバーがステージに登場すると、その中には本編を欠席した山下美月や清宮レイの姿も見つけられた。彼女たちは樋口へのサプライズで、似顔絵やメッセージを書き込んだみかんをプレゼント。これは冠番組『乃木坂工事中』(テレビ東京系)内で、樋口が4期生との距離を縮めるために図った“みかん大作戦”へのアンサーでもあり、こういったところからもメンバーの樋口に対する強い愛や信頼が窺い知れた。
最後の曲に入る前には、キャプテンの秋元から樋口へ向けたメッセージも。秋元は「後輩はもちろん、同期も年上も大きな愛で包み込んでくれて。私がキャプテンになったときも、引っ張っていくのがあまり得意じゃないとか悩みを抱えていたのに対して、いろいろ察して前向きな言葉をかけてくれたのが印象的で。本当に優しさの塊みたいな人」と樋口を称しつつ、「自分を犠牲にしてみんなを守ってきてくれたちまだから、これからはちま自身のことだけを考えて幸せになってほしい。それを約束して、次の道に進んでくれたら嬉しいです。本当に11年間お疲れ様でした」と労いの言葉を送る。これを受けて樋口も「みんながいたから優しくなれたと思うし、乃木坂って本当に素敵な場所だなって、11年いても思うってすごいと思う。みんながいたから今の私がいます。今日はすべてやり切ったし出し切ったし、みんなとの思い出がたくさんできて幸せです」と感慨深げに語った。最後は「乃木坂の詩」で会場がひとつになったところで終幕。「また皆さんに会えるように頑張るので、忘れないようにいてくれたら嬉しいです」と挨拶すると、客席から「ひなちま ありがとう」と記されたメッセージカードが高く掲げられるサプライズも。この感動的な光景を前に、嬉し涙を流す樋口は「幸せです。また会おうね!」と口にしてステージから去っていった。
選抜とアンダーを行き来し続けた期間を振り返り、「(その当時の乃木坂の曲を)聴くとその当時のつらい思い出が浮かんでくる」(※2)と吐露したことが印象に残る樋口だが、筆者とのインタビューでは2021年1月放送の『教場II』(フジテレビ系)に出演したことが大きなターニングポイントとなり、その後の活動をポジティブに楽しめるようになったと語っている。「今が一番楽しいかも知れません」と笑顔で言えるようになったからこそ(※3)、次の道へ進む覚悟が決まったことは想像に難しくない。前向きな気持ちで旅立ちを迎えた彼女がこの先、新天地でどんな活躍を見せるのか。そして、そんな彼女の背中を見てきた後輩たちがここからどんな成長を遂げるのか。それぞれの進む道を、これからも見守っていきたい。
※1:別冊カドカワ『総力特集 乃木坂46 vol.03』
※2:https://realsound.jp/2021/12/post-925874.html
※3:『日経エンタテインメント! 乃木坂46 Special 2022』
■セットリスト
『乃木坂46 樋口日奈 卒業セレモニー』
2022年10月31日(月)東京国際フォーラム ホールA
00. Overture
01. My rule
02. 左胸の勇気
03. 狼に口笛を
04. やさしさとは
05. 気づいたら片想い
06. あの日 僕は咄嗟に嘘をついた
07. シークレットグラフィティー
08. 思い出ファースト
09. インフルエンサー
10. シンクロニシティ
11. 口ほどにもないKISS
12. 孤独兄弟
13. きっかけ
<アンコール>
14. 誰よりそばにいたい
15. ロマンスのスタート
16. 乃木坂の詩