椿鬼奴、なぜ“少年隊”に行き着いたのか BON JOVIやBIGBANGなど芸の肥やしにもなった音楽の魅力

椿鬼奴、音楽ルーツ語る

ニッキのYouTubeで知った“少年隊のクリエイティブ”

椿鬼奴(写真=小川清也)

――元々ラップ系の音楽がお好きだったのですか?

鬼奴:Beastie Boysとか、The Offspringとか好きでしたからね。でもBIGBANGは全部が新しく感じましたね。他にも2PMとかSHINeeも好きでした。もうみんな上手~! と感動して見ていました。

――子供の頃は日本の歌謡曲で、大学のころから洋楽、大人になってK-POPと、オールジャンルですね。

鬼奴:こだわりが無いんでしょうね。ロックが好きと言っても、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)のハードロック芸人に出たときに気づいたんですけど、「あれ? 私ちょっと違うかも」と思ったんですよ(笑)。オジー・オズボーンとか、そっちのほうは行ってないな、Nirvana好きだったからグランジとか、もう少しポップなロックが好きだったかなとか。何かに詳しいというより、好きになったものを掘り下げるという感じなんだと。

――今現在好きな音楽といえば?

鬼奴:今めちゃめちゃ掘ってるのは、少年隊なんです! 私と(レイザーラモン)RGさんがやってる『歌謡スナック思ひ出』(Amazon Prime Video)の番組にケンコバ(ケンドーコバヤシ)さんがいらしたとき、少年隊の「ふたり」っていう、ASKAさんが作った曲をリクエストされたのが、もう素晴らしい曲で。少年隊ってすごいんだぞっていうことをケンコバさんが教えて下さって、色んな動画を見たり聴いたりして、もうK-POPどころじゃないなと。小さいときは、「仮面舞踏会」とか、「デカメロン伝説」の“ワカチコ!”っていう歌詞とか衣装とかも面白い印象が強くて、ダンスの素晴らしさに目がいかなかったんですよね。でもそれは、ジャニー(喜多川)さんはミュージカルがお好きで、そういう雰囲気の衣装だったっていうのを、YouTubeの『ニッキとかっちゃんねる』を見て知ったんです。当時、なんでこの衣装だったのか、なんで“トゥナイヤイヤイヤ~”だったのかとか、詳しく解説してくれていて、そればっかり見ています(笑)。ニッキ(錦織一清)さんは出る側なのに、ミュージシャンと一緒に制作とかにも関わっていたと聞いて、本当にクリエイティブなグループだったんだなと。

――当時はアイドル音楽を解説するような媒体も無かったですし、今だからこそ、彼らがいかにすごい存在だったかが分かったと。

鬼奴:そうなんですよ。クリエイティブで言うと、ちょっと話は逸れますが、最近はBE:FIRSTも聴いていて、彼らを生んだ『THE FIRST』の中で主催の日高(光啓/SKY-HI)さんが、「クリエイティブファースト、クオリティファースト、アーティシズムファースト」っていうのを、オーディジョンの基準として掲げていて。作ることも意識した人も募集しているオーディションで、面白かったんですよね。それを思うと、ニッキって昔からクリエイティブもやってたんだ……と思って。少年隊って見れば見るほど素晴らしいなと感じます。

――音楽の掘り下げ方が、ある意味オタク的です。

鬼奴:私オタク気質だと思います。だからオカリナ(おかずクラブ)とすごく話が合います。聞いてくれますし(笑)。

――鬼奴さん名義でも、金星ダイヤモンドとしても、楽曲をリリースして作詞作曲もされていますが、ご自身が普段聴いている音楽の影響ってありますか?

鬼奴:めちゃくちゃあります! ひっそりパクっているのもけっこうあります(笑)。金星ダイヤモンドの「土を掘る」っていう曲は、〈ディグダグディグダグ~〉っていうサビのところが、レニー・クラヴィッツの曲を意識して入れました。あと「FOOD SHOW」っていう曲の〈鶏肉揚げたのが好き~〉っていう歌詞の、〈好き~〉のヨーデルみたいな節回しは、ウィーンっていうバンドの曲をマネしています。

――パクリじゃなくて、“リスペクト”ですね!

鬼奴:はい、リスペクトです(笑)! あと『有吉の壁』(日本テレビ系)で、マダムキャットっていうキャラをやったんですけど、〈ワンキャット トゥキャット マダムキャ~ット〉は、バーブラ・ストライサンドが歌った映画『追憶』のテーマ曲が大好きで、そのAメロからサビに行くところのコード進行から作ったりしました。

――そもそも、歌マネを始めたきっかけは?

鬼奴:30歳になってピン芸人を始めてから、お客さんがいるとはいえ1人で喋るって変だなあと思っていたんです。お笑いはコンビとかのほうがいいのになと思っていたけれど、30歳でピンだと組むのも難しくて。元のコンビを解散してすぐ、キュートンっていうユニットに入れてもらったものの、恥ずかしくて1人でネタなんて出来ないと思っていたんですが、先輩のキートンさんから、ライブにネタをエントリーしなよって勧められて。1人で漫談するのも恥ずかしいし、1人でコントして架空の人と受け答えするのも恥ずかしいし……。じゃあ歌なら恥ずかしくないのかなと思って。ウクレレは趣味でやってたので、「FOOD SHOW」はバンドを組む前から1人で歌っていたネタで、そんな感じで歌ネタを始めました。ライブにネタをエントリーしなきゃいけないから始めた、っていうのがきっかけですね。

――それが、のちにBON JOVIとかハードロック系の歌マネで有名になっていくんですね。お話を伺っていると、幼少期のピンクレディが今に繋がっているのではと感じます。

鬼奴:そうですね、思えば中学の修学旅行のバス移動も、お金持ちの子が録音して持ってきたカラオケの音源で、よく「夢芝居」(梅沢富美男)とか歌っていて、それがウケたんですよ。“人前で歌うとウケる”という体験が、人と話すことよりラクで楽しく感じるんだと思います。

――これからも、色んな音楽関係へのチャレンジを期待したいです。

鬼奴:ルミネでなくても、音楽ライブは出たいと思っているんで。音楽のお仕事なら二つ返事で「出るー!」って言いますね、劇場はちょっと……って言うことが多いんですが(笑)。例えばフェスの転換のとき、私ほど盛り上がる芸人いないって自負しています。私がBON JOVIで出て行くと、すっごい盛り上がるんですよ。ご依頼お待ちしています!

バックナンバー

第1回:トンツカタン 森本晋太郎が語る、新垣結衣「heavenly days」の衝撃 「付き合っているテイの日記を書いていました」
第2回:“シティポップ以前”の音楽に共通する湿っぽい感じが好き タブレット純が昭和歌謡を聴き続ける理由

“シティポップ以前”の音楽に共通する湿っぽい感じが好き タブレット純が昭和歌謡を聴き続ける理由

お笑い芸人のルーツ音楽にスポットを当てた連載「芸人と音楽」。第2弾として、シンガーとしても活躍する芸人・タブレット純が出演。小学…

BIGBANG、SHINeeからBLACKPINK、Stray Kidsまで……K-POP×生バンドは定番に? 定着の背景とメリットを考える

ここ数年、ライブにおいて生バンドを入れてパフォーマンスするK-POPグループが目立つ。最近だと、ワールドツアーを行ったStray…

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「連載」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる