椿鬼奴、なぜ“少年隊”に行き着いたのか BON JOVIやBIGBANGなど芸の肥やしにもなった音楽の魅力

椿鬼奴、音楽ルーツ語る

 お笑い芸人のルーツ音楽にスポットを当てた新連載「芸人と音楽」の第3弾は、ハスキーヴォイスでボン・ジョヴィを歌い叫ぶ歌マネに始まり、自身の名義やバンドとしてCDリリースもしている椿鬼奴が登場。幼少期からの歌謡曲好きをはじめ、洋楽にのめり込んだ学生時代、BIGBANGに衝撃を受けたことに加え、現在ドハマりしているジャニーズの“某グループ”への思いなど、コアな音楽トークを思う存分語ってもらった。(筧真帆)

椿鬼奴、RadioheadやBIGBANG、少年隊などどハマりした音楽を語る

本当はNirvanaが一番好きだった

Radiohead - Creep

――子供のころは、どんな環境で音楽を聴いていましたか?

鬼奴:テレビの音楽番組ですね。当時はテレビがサブスクみたいなものでしたから、ジャンルは分からないけれど流行り歌が好きで、明菜ちゃんとか、「雨の慕情」(八代亜紀)とか、「北酒場」(細川たかし)とか、『紅白』(『NHK紅白歌合戦』)に出ているような人たちの音楽を聴いていました。幼稚園のころはピンク・レディーがすごく流行っていて、年長のときに、年小や年中組のところに行って、友だちと「UFO」とか踊って見せていたんですよ。どういういきさつか覚えていないですが(笑)。

――もう幼稚園児のときから、人前に立つことがお好きだったんですね。

鬼奴:そうかもしれないです。人と話すのは苦手でしたが、人前に出るのは恥ずかしいとか無くて、緊張は全然しなかったですね。今も舞台だと緊張しないです。中学のころ覚えているのは、父親が買った「廃盤ベストヒット」っていうテープがあって、何故か聴きこんでいました。他にもグループサウンズとか、「ルビーの指環」(寺尾聰)とか。自分より古い世代の曲を聴いていましたね。高校のときは、友だちとテープに入れた音楽を交換したりする中で、今井美樹さんとかすごく聴いていました。

――鬼奴さんの芸風を見ていると洋楽も詳しい印象がありますが、洋楽との出会いは?

鬼奴:大学のころから洋楽好きになったのですが、当時、海外旅行へ行くのが友だち同士で流行っていて。大学だと2カ月くらい休みがあったから、安いエアチケットを取って、1カ月くらいかけて、NY、ロス、サンフランシスコ、ハワイ、っていうふうに周って。英語にも洋楽にも興味があったので、歌詞を自分で訳したりとかしていました。

――ライブも観に行っていましたか?

鬼奴:はい、すごい行ってました。Radioheadの初来日に行ったのは、今思えば自慢ですね。川崎のクラブチッタだったかな。『BEAT UK』(※2004年までフジテレビで放送された深夜の音楽番組)のレコメンドで「Creep」が流れたとき、ひと目で好きになったんです。当時、洋楽を教えてくれている男友だちに、「このRadioheadってすごくイイと思う」って言っても知らなくて、私が最初に見つけた自負があったから、メジャーになって行くのを見て嬉しかったのを覚えています。あとBeastie Boysもよくライブに行きました。本当はNirvanaが一番好きだったんですけど、亡くなっちゃってライブに行けなかったから、少しでも近づこうと思ってカート・コバーンが好きだったEugeniusが来日したときに行ったっていうのは、すごく印象深く残っています。人が知らなくても、私が好きな曲を掘るという感覚で聴いていました。

――かなりコアに追っていたんですね。おなじみの歌ネタでは、BON JOVIやAEROSMITHのマネをしているイメージがありますが。

鬼奴:若いころは斜に構えていたのもあってか、BON JOVIとかはあまり聴いていなかったんです。それが30代になって高校の同級生たち十数人とカラオケに行ったとき、友だちが「Livin' On A Prayer」を歌ったら、全員が一つになったんですよ。「すげぇBON JOVI!」と思って。なんて力がある楽曲なんだろう! とベストアルバムとかを聴いたら、何もかも素晴らしいなと。自分が落ち着いた年齢になると、やっぱり売れていることは良いことだと思いましたね。昔の曲も含めて売れている人を聴こうと、AEROSMITHや、Led Zeppelin、QUEEN、ホイットニー・ヒューストン、マイケル・ジャクソン、プリンスとかを聴き直しました。

(BIGBANGは)全員ピーター(池畑 慎之介)さんに見えて……

BIGBANG - GARAGARA GO!!(ガラガラ GO!!) M/V

――そして鬼奴さんは、早い時期からK-POPがお好きだと公言されていますが、ハマったきっかけは。

鬼奴:忘れもしない、藤井(隆)さんがMVを紹介してくれたんです。藤井さんは今田(耕司)さんに紹介してもらったというのが、BIGBANGの「ガラガラGO!!」だったんです。

――「ガラガラGO!!」は2009年なので少女時代やKARAの日本デビューより前の、K-POPの大ブームが来る直前ですね。

鬼奴:それ以前は全然聴いていなかったんですよね。とにかく「ガラガラGO!!」は、見たこともないテンポで映像が変わるのが印象的でした。元々、洋楽好きの文化行動の一つとして、『MTV』とか、『ミュートマ』(※『ミュージックトマト』…洋楽のMVなどを流すTVKの音楽番組)や、『BEAT UK』とかの深夜番組が好きで、映像から入って覚えるのが好きだったんです。普通PVって、こんなメンバーがいるって覚えて欲しいから作ってるんじゃないのかなと思うんですけど、「ガラガラGO!!」を見た最初の印象は、服は違うわメイク違うわ、映像をテンポ早く切り替えるから誰が誰か分からなくて、15人くらいのグループかと思ったほど(笑)。日本にあんなにトゥーマッチなメイクをしているアイドルは居なかったし、ともすればカッコイイから離れているんじゃないかという奇抜なビジュアルと、映像のテンポ感に圧倒されて。こんなこと言ったらファンの方に怒られるかもしれませんが、全員ピーター(池畑 慎之介)さんに見えて(笑)、逆に誰が誰なのか知りたくなったんです。

――“全員ピーターさん”から、どうやって区別がつくようになりましたか?

鬼奴:D-LITEさんが(島田)珠代姉さん、あと藤井さんにも似てるなとか。TOPさんは好きな顔のタイプなので、大好きな加藤雅也さんをもっと濃くした感じだなと。G-DRAGONさんとSOLさんは最後までピーターさんで迷っていたんですが、段々情報が入ってくるとSOLさんはダンスがすごく上手いほうって覚えたり。今のK-POPではよくあるパターンだと思いますが、色んなメディアに出るたびに髪型や髪色を変えたりとか、ルックスを安定させないので、覚えなきゃ! っていう気持ちにさせられるのが衝撃でした。音楽的なことで言うと、メロディの高音が歌える人、低音が歌える人、ラップでも高音と低音の人がいて、ひとつのグループだけど色んなジャンルにチャレンジできるのが魅力ですよね。中でもTOPさんの低音ラップが好きでした。

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