AKB48、原点回帰の“王道アイドルサウンド”でシングルチャート首位 『久しぶりのリップグロス』収録曲から伝わるクリエイティブ
カップリングも聴いていきましょう。全形態に収録されているSHOWROOM選抜による「Sugar night」は、オールディーズ風味とロックンロールが絶妙にブレンドした作品。作曲は、櫻坂46の「Nobody’s fault」、日向坂46の「君しか勝たん」の作曲でも知られる謎の人物、デレク・ターナーです。秋元康による歌詞には〈ゲロッパ〉という単語も出てくるのですが、これはジェームス・ブラウンの「Get Up (I Feel Like Being A) Sex Machine」をオマージュしているわけで、ファンクにまで目配せしています。余談ですが、同じ楽曲のフレーズが出てくるのが、モーニング娘。の「DANCEするのだ!」(2000年)です。ともあれ、歌詞と楽曲の呼応という点で、秋元康との綿密な打ち合わせを感じさせるわけで、デレク・ターナーが秋元康と近しい人物だと確信させるものがあります。
Type Aに収録されているAKB48 17期研究生による「Wonderful Love」は、突然のAKB48フリーソウル。この段階で、全形態から1枚選ぶならType Aに決定です。こうしたR&Bナンバーが不意に収録されているところも、AKB48というグループの面白さです。
「メタバースって言いたいだけでは」と思わずツッコミを入れたのが、Type Bに収録されているAKB48 SURREALによる「わがままメタバース」。これも流麗なソウルナンバーなのです。そして作曲は、見事なソウルを聴かせるFAREWELL, MY L.u.vのサウンドプロデューサーでもあるYASUSHI WATANABEだと知って、深く納得しました。
しかも、Type Cに収録されている2nd Generationによる「マジか」もメロウなソウルナンバー。マジか。そして劇場盤に収録されている1st Generationによる「運命の歌」は、激しくもメランコリーな楽曲です。
『久しぶりのリップグロス』は、表題曲で堂々たる48歌謡を聴かせつつ、カップリングではブラックミュージックの要素が濃い楽曲群で攻めるシングル。AKB48のクリエイティブに驚かされるという体験ができる作品です。