et-アンド-、同世代の“病み”を歌詞に昇華した「宵宵」制作秘話 「何日か落ち込みながら失恋について考えてた」

栗本「自分が最初から考えた歌詞が入っていると感情が入りやすい」

栗本優音

ーーみなさんは特に気に入っている歌詞はありますか?

モラレス:韻を踏んでるサビの〈今日も熱中ゲーム中 毎日ネット厨嫉妬中〉とかはすごいクセになりますね。

栗本:私は、〈君は言う 「世界は案外綺麗だよ」ってね〉です。ここは私が書いたんですけど、自分が病んで気分も落ちてるのに、その原因になっている元恋人には「世界は案外綺麗だよ」と言われるもやもやというか。残酷だなって思いながら書きました。

山崎:冒頭の〈そうよ上手くいってる わたしは全然大丈夫 ひとりを楽しんでいる 嘘〉はケリーさんと一緒に考えた部分で私が歌っているんですけど、自分に言い聞かせているというか、強がっているけど本当は嘘なんだよっていうのを切なく歌っているので、そこはこだわった部分です。

野島:そのノン(山崎)の冒頭の歌詞がすごく活きていると思うのが、2サビの〈いい子なわたし崩壊中〉という歌詞なんですよ。本当はこんなに病んだり人に執着や嫉妬をするタイプではないのに、あなたのせいで私が壊れていくみたいな。すごいずっしりしたワードだなと思います。そういう歌詞を明るめに歌ってるのもこの曲の良さかなと思います。

ーー失恋の悲しみ以外にも、心のもやもやや、切なさなどいろんな気持ちが乗っている歌詞だと思いますが、レコーディングはいかがでした?

野島:私は〈「世界は案外綺麗だよ」ってね〉とか〈「今夜は月が綺麗だよ」ってね〉というパートを歌っているんですけど、これってちょっとキザじゃないですか。自分自身が言っているんじゃなくて言われている歌詞でもあるので、そっけなく、なんとも思ってないっていう感情を乗せて歌いましたね。

 あとはサビのユニゾンする部分の「中」の歌い方は多分全員ディレクションされたと思うんですけど、曲線のイメージで柔らかく歌ってほしいと要望があって。4人で歌っているように聴こえないくらいまとまってふんわり聴こえるようになったのは、そのディレクションがあったからこそなのかなと思いますね。

モラレス:私は低音パートを歌うことが多くて、そこをかっこよく決めないと曲がぬるっと終わっちゃう感じがしたので、結構頑張りましたね。

栗本:〈Congratulation 苦しい苦しいな 祝福すらできなくてさ〉は、本当に無というか、ロボットみたいな感じで歌いました。でもロボットすぎても歌詞が伝わらないと思ったので、苦しさみたいなのを出してみたり、試行錯誤しながらでしたね。サビ最後の、〈誰も見てないし少し泣いていい?〉は泣き声みたいな感じで、感情を出して歌っています。

モラレスきあら

ーー全員での作詞は「夏海月」に続き2度目ですが、楽曲制作に全員で携わる面白さや醍醐味はどういう部分だと感じますか?

モラレス:それぞれの個性がすごく出るところですね。みんな同じメロディとテーマを渡されているのに全然違う歌詞を書いてくるのが本当に面白いです。

栗本:ライブで実際に歌っているときに、自分が最初から考えたものが入っているとやっぱり感情が入りやすいですね。そのため、より大事に歌えたりするっていうのも、みんなあるんじゃないかなと思います。

ーーみなさんは作詞するためにメモをとったり、普段から意識されていたりすることはあるんですか?

栗本:メモはしています。自分が思ったこともそうですし、TikTokで失恋ソングの動画と一緒に病んでいる気持ちをコメントしている投稿を見て、「これ、自分も感じたことある」と思ったら書き留めてみたり。あと友達の恋愛相談に乗ることが多いんですけど、その話を聞いてメモしたりもしますね。

野島:私はすごく人間観察が大好きで。電車とかカフェでカップルが近くにいたり女子高生同士の恋愛の話が聞こえてくると、面白いなって思いますね。自分が共感できない部分こそネタだなと思ってメモしたりするときもあります。あとは恋愛映画を観て自分が知らない感情になれたりすると、この感情を次の曲に生かせたらいいなと思うことはあります。

山崎:私は恋愛してる友達に体験談を聞いたりします。「どういうときに喧嘩するの?」とか、逆に「仲いいときに何話してるの?」みたいな。

ーー作詞の経験を積んで、自分に合った歌詞の書き方で発見したことなどはありますか?

野島:私は今まで、曲が来たらすぐ聴いて歌詞を考え始めていたんですけど、最近それは私に合ってないかもしれないと気づいたんですよね。締切まで期間があればあるほど、書いたものを次の日に見て「何このキザな文章」とか思っちゃって。それで書き直しを繰り返していると、もちろん良くなっていくこともありますけど、考えすぎちゃって本当に言いたいことを見失っちゃうこともあるんです。今回の「宵宵」もそうなんですけど、最近は今書けるかもしれないっていうスイッチが入るときがあるんです。だからそういうときにすっきりするまでやる方が、自分に合ってるのかもしれないです。

ーーそうなんですね。他のみなさんはいかがですか?

山崎:私は最初からメロディに文字を当てはめるよりは、自分が書きたいことを文章でも単語でもいいんですけど全部書いてからメロディに当てはめる方が合ってるなって思います。文字を最初に当てはめようとすると考えが狭まる感じがするんですよね。

モラレス:私も一通り言いたいことを全部書きます。そのあとに、この言葉だったら他の言葉ないかなとか、検索しながらうまく韻を踏めるように歌詞を作っています。

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