ずっと真夜中でいいのに。「残機」が彩る『チェンソーマン』の熾烈なストーリー ACAね流に表現された“デンジの苦悩と幸せ”

 ずとまよがエンディングテーマを担当した第2話でデンジは、メインキャラクターである早川アキとパワーと出会い、ここから3人の共同生活が始まっていく。今回の楽曲制作にあたってMAPPAから、パワーとデンジの関係性、これからバディになる2人の初めての印象、新生活、面倒、波乱が巻き起こる、などのワードが提示されたという。ACAねは『SWITCH』2022年10月号に寄せたコメントの中で、「原作での、パワー『おうおう!ひれ伏せ人間!!』/デンジ『まあいいか!!よろしくな!』の掛け合いとポーズがヒントとなり、ここから3人の勇往邁進で日常な、新生活が始まってゆく興奮と熾烈さなるものを盛り込みたくなりました」という言葉を残していて、またTwitterでは「2話コンテいただき、ここからはじまる3人の勇往邁進な舐め鎖り新生活、自分の生活と交えながら吐きながら魂込めました」(※2)と投稿している。これらのヒントから、「残機」の重要なテーマとなっているのは、3人の新生活であることが分かる。

 その上で注目すべきは、サビにおける〈譲れない日々〉というワードだ。原作では、デンジは、アキとパワーと出会うことで、それまでの人生では味わったことのなかった温かな日常を手にすることになる。もちろん、物語が進んでいくにつれて、悪魔との戦いは熾烈さを増していくが、アキとパワーと過ごす日常は、それまでデンジが手にすることのできなかった、普通で、幸せな、決して譲ることのできない日々となっていく。そしてそれは、アキとパワーにとっても同じで、「残機」においては“めちゃくちゃ”な戦いの日々の中で、3人の間に育まれていく絆がさりげなく表現されている。物語の本質を見事に射抜いた、とても素晴らしいコラボ曲だと思う。

ずっと真夜中でいいのに。『残機』MV (ZUTOMAYO - Time Left)

 もう一つ特筆すべきが、20日に公開された「残機」のMVだ。ずとまよの各MVは、そのどれもが一つのアニメ作品として成立していて、それぞれに深く豊かな世界観がある。同時に、それぞれのMVに共通するキャラクターが登場し、「残機」においても、お馴染みのキャラクター・ニラちゃんが主役として登場している(一瞬ではあるが、うにぐりくんも登場する)。今回のMVは、剣を用いたバトルアクションが軸となっていて、後半に進んでいくにつれて、“もう一人の自分との対峙”というテーマが浮かび上がってくる。そして、その“もう一人の自分”の頭には角があり、おそらくこれはパワーへのオマージュだろう。また、デンジの心の中の開けてはいけない記憶の扉を想起させるシーンもある。このように「残機」のMVは、あくまでも、ずとまよの独立した映像作品として楽しめる仕上がりになっているのと同時に、随所に『チェンソーマン』のモチーフが織り込まれている。今回のエンディングテーマをきっかけにずとまよを知ったアニメファン、原作ファンにも、ぜひ隅々までチェックしてみてほしい。

※1:https://chainsawman.dog/staffcast/
※2:https://twitter.com/zutomayo/status/1582653778842775553?s=20

「残機」ジャケット

■リリース情報
ずっと真夜中でいいのに。「残機」
TVアニメ『チェンソーマン』エンディングテーマ
配信中/ダウンロード&ストリーミングはこちら

ずっと真夜中でいいのに。公式HP

■番組情報
TVアニメ『チェンソーマン』
毎週火曜日24:00よりテレビ東京系6局ネットにて放送中
(テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送)
(C)藤本タツキ/集英社・MAPPA

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