ano×尾崎世界観のタッグで広がる救いの連鎖 “普通”に悩む人にこそ聴いてほしい「普変」が放つ特別な輝き
そして、だからこそこの曲は特別な輝きを放っているのだと思う。ラジオ番組で尾崎と共演した際、anoは「自分自身すぎて、自分じゃ歌詞に昇華できないから、尾崎さんが僕の悩みを曲にしてくれたら、僕は救われます」と言っていた(※3)。外からふと投げ込まれた言葉が、誰にも見せてこなかった、自分の心の穴におそろしいほどジャストフィットしてしまった瞬間。この曲を作った人は、今この曲を聴いている私のことなんて知らないはずなのに、それでもなぜだか見つけてもらえた瞬間。おそらくanoはクリープハイプの音楽に触れる中でそういったマジカルな瞬間を体験し、だからこそ尾崎を信頼して曲を書いてほしいと依頼したのだろう。そして尾崎は、彼女の“悩み”に肉薄するような、anoの曲の歌詞として嘘のないものを書き下ろした。それはまさに〈誰かの中にこの手を 突っ込んで引きずり出す〉行為。言い当てられる側にとって“救われる”と“傷口にぶっ刺さる”とは紙一重であり、anoはそれを承知して依頼したし、尾崎もその想いを汲んで真正面から書いたのだろう。その上でanoは様々な感情を抱えながら歌う。アーティストとして互いを信頼する歌い手と書き手が火花を散らしている。あどけなさ、寂しさ、臆病になってしまう気持ち、それでも必死に生きている様子……その全てを発露させるようなanoのボーカルは、この曲ならではのものだ。
希望に満ちたメッセージを高らかに歌っている曲ではない。むしろ今ある感情をとにかく出しているような感じで、曲が終わるまでに何かが解決するわけでもない。しかし、anoがかつてクリープハイプの曲を聴いて“一緒に落ち込んでくれる”と思ったのと同じように、この曲だからこそ心を許せるというリスナーも少なくないだろう。そしてこの曲をリスナーが受け取った時、尾崎からanoへ、anoからリスナーへと“救い”が連鎖する。孤独同士が、孤独なまま、繋がるということ。ここにポップミュージックの美しさが体現されている。
※1 https://www.youtube.com/watch?v=3v8dTqraEG4
※2 https://realsound.jp/2020/10/post-642092.html
※3 https://www.billboard-japan.com/special/detail/3588
■リリース情報
ano
「普変」
10月12日(水)リリース
配信:https://TF.lnk.to/ano_fuhen
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