Survive Said The Prophet、苦難と向き合う過程が新たな物語へ コロナ禍での“ネガティブな感情表現の変化”も明かす

サバプロ、ネガティブな感情表現の変化

クリス・クラメットと共にポートランドで制作した理由

ーーまた、今作はアメリカのポートランドに約1カ月滞在し、初期からの付き合いであるプロデューサーのクリス・クラメットとタッグを組んで制作されました。この制作手法を選んだ理由は?

Yosh:安定感なのかな。

Tatsuya:安定感と原点回帰、リスタートみたいな。僕が加入して最初にレコーディングしたアルバムが『FIXED』で、クリスとはそこからの付き合いなんですけど、そういう意味も含めて原点回帰でリスタート、そして安定感というところで彼に戻っていったのかなと思います。

Yosh:実は『FIXED』以降、ちょっとずつ制作のフォーメーションを変えたりしていたんですよ。例えばShowだけポートランドに行ってドラムを録って、そのデータをもとに日本で作業をしたり。こないだのリテイクベスト(『To Redefine / To Be Defined』)に関しては日本で録って、ポートランドでミックスしてもらったりしながら、バンドやクリスのレベルがどれだけ上がっているかをチェックするという。そういう意味では、間違いなくクリスはサバプロの一部ですよ。

Ivan:あと、今回は4人でアメリカで過ごすという時間もかけがえなくて。それこそぐちゃぐちゃな時期もあったし、いろいろ変動があった上で改めてこの4人で過ごそうというところも、特に今回は大きかったですね。

Tatsuya:このアルバムのクライマックスはそこだと思います。

Yosh:三部作のフィナーレだね(笑)。

Show

ーー気心が知れた相手だし、やりやすさもあるとは思いますが、それを求めたわけではないですよね。

Yosh:それだけじゃないですね。東京から離れれば離れるほど、自分じゃない自分が出てくることってあるじゃないですか。僕はそれをポートランドで感じたときがあって。

Tatsuya:北海道に行ったり九州に行ったりと、本州から離れるだけでも羽を伸ばせたりするんですけど、ポートランドはそれの長距離版なんですよね。

Show:あと、ほかのエンジニアさんが悪いとかじゃなくて、クリスにレコーディングをしてもらったものを聴くと、デモの段階からすごく変わるんです。普通、プリプロからそのままレコーディングに入ると、曲としてそんなに差は生じないはずで、実際ほかのエンジニアさんとやったりすると良くも悪くもイメージどおりで、音が綺麗になったとかそういうところが変わるぐらい。それがクリスの場合、プリプロからの大きな変化を毎回感じられる面白さが、僕としてはすごくあって。『Inside Your Head』はさっきYoshが言ったように、僕だけクリスのところに行ってドラムを録って、そのあと違うプロデューサーにまとめてもらったんですが、クリスとは長年一緒にやっている分、僕らが求めているものと合致しやすい。それが楽だというよりも、彼に頼むと「そうそう、こうだよね」って求めている音を出してくれるから、そういう意味で戻っていくというのはありますよね。

Tatsuya

ーー楽曲制作の時期によるものなのか、あるいは皆さんの精神的状態が反映されたのか、このアルバムの楽曲ってサウンドも含めてすごく生命力に満ちているというか、キラキラしているように感じられるんです。歌われている歌詞には闇の部分も含まれているんですが。

Yosh:うんうん(笑)。

Tatsuya:「闇の部分も含まれている」。それ、めちゃくちゃいい表現ですね(笑)。

ーーだけど、サウンドからはポジティブな印象を受け取ることができる。それが聴いたときの気持ちよさにもつながっている気がしました。

Ivan:今までになかった一体感は以前よりも絶対的に強いと思います。

Tatsuya:コロナを経てアメリカでのレコーディングに向かうことで、「4人でこれからやっていく」という一体感がより強まりましたし。

Yosh:キラキラしようとしてそうなったわけではなく、たぶん闇を隠すためのキラキラ感じゃないですかね(笑)。HappyやLuckyだけですべて終わるわけでもなければ、ずっとダウナーで生きていけるわけでもないっていう、その侘び寂びみたいな感覚が出ているのかな。

Tatsuya:今回、プリプロを始めたのが1年前ぐらいかな。その前はバラバラで作業していたんですが、あるタイミングからIvanの家に僕とShowで集まって、ギターのフレーズを決めたりしていたんですけど、まずこのバラバラの状態を固めて前へ進まなくちゃっていうポジティブなパワーはあったと思う。それがプリプロを進めていく中で形になって、「今回どんなアルバムになるんだろう?」と思いながらアメリカに行った。特に今回はメンバー4人だけで行ったから、4人で過ごす濃い時間がポジティブなパワーになって、それがアルバムに入っているのかな。

オーディエンスの存在で実感した“コミュニケーションの大切さ”

ーーもちろん、意図的なキラキラ感ではないと僕も思っていて、自然と湧いてきた生命力の強さが今まで以上に湧き出ているのかなと。

Yosh:間違いなく出ているし、ただ出ているだけじゃなくて、今回はそれを“見せたかった”んだと思うんです。こういう音になったのは、そういう願いから来ているのかな。

ーーなおかつ、鉄壁で無駄のないアンサンブルになっています。

Tatsuya:フレーズひとつへの時間の費やし方は、今までで一番濃かったと思います。それこそベーシストがいない状態で、「ベースのフレーズはどうする?」っていうのをみんなで集まって考えたし、今までだったら誰かに任せていたことを、みんなでじっくり取り組んだ。そういう意味でも、アンサンブルとして完成されているのかなと思います。

ーーなるほど。

Show:端的に言うと、5人が4人になったことは大きくて。超シンプルなことなんですよね。で、それとは別に、これまでの作品では「怒っている曲とか攻撃的な曲を入れなきゃダメだよね」みたいな強迫観念がどこかにあって、そういう話し合いが必ず起きていたんですけど、今回はなかったんですよ。タイトルに「Hate」と「Fail」っていうネガティブなワードが入っている分、怒りはきっとあるんでしょうけど、その表現の仕方が年齢を重ねて、コロナを経て変わった部分は全員にあったと思うんです。怒るにしても「どういう表現で怒るか?」っていうのがそのまま作品に出た結果、そう感じていただけたのかもしれませんね。

Ivan:あと、音楽をやれること自体に、今までよりありがたみを感じたことも大きかった。何もできなかった時期が2年もあったし、それこそ最初は前が見えない状態でずっと進んでいたので、改めて僕らもすごくワクワクしていたと思うから。

Beauty Queen | Official Music Video / Survive Said The Prophet

ーーでも、そういうサウンドに乗るのが、この歌詞なんですよね。

Yosh:これでもハッピーを探しているつもりなんですけどね(笑)。

ーーわかります。闇の中で手を伸ばして、次の一歩を探しているストーリーだなと歌詞を読んで感じました。たぶん、リスナーがここから次のアクションを探すような、その起爆剤となるアルバムなんじゃないかと。

Yosh:そう受け取ってもらえて嬉しいです。

ーーこの時代を経て何かメッセージを届けようとすると、ネガティブさとポジティブさの匙加減が実はすごく難しいと思うんです。今だからこそのメッセージなのか、それとも変わらず届けたいものとしてあるのか、Yoshさん自身はいかがですか?

Yosh:人間なので、自分が思うことをどうキャッチして、どう聴こえるものにするのか、読めるものにするのか、触れるものにするのかって変わってくると思うんですよ。歌詞に関して昔はよく「英語でわかんねえよ」とか「日本語を使えよ」とか言われてきたので、一時期は「伝わらなきゃそれでいいさ」と思っていた時期があったんですけど、やっぱりアニメのタイアップをやったり、海外に行ってその日本語を現地の人が歌っているところを見た瞬間に、根本的に考え方が変わって。キャッチしてくれるオーディエンスがいるんだから、コミュニケーションを大切にしようと思うようになりました。だから「Papersky」の〈理想が理想となっても/見えそうで見えなくなっても〉っていうラインは、まさにそれです。とはいえ、病んでますけどね(笑)。ただ、病んでいても答えにならないからアウトプットを探すわけであって、そのアウトプットがうまくいったんだなと今日話しながら実感できたので、嬉しいです。

ーー楽曲も非常にバラエティ豊かで、「Beauty Queen」や「Hopelessly young」といった王道感の強い曲もあれば、「Hateful Failures Pt.2」から「Prayer」までで魅せるムーディさも個性的で、緩急に富んだ流れが気持ちいい。今作は間違いなく、サバプロにとって新たなマスターピースになると思っています。だからこそ、このアルバムを携えたツアーがどうなるのか、今からすごく楽しみなんです。

Yosh:こればかりは、やってみないとわからないですね。レコーディングとは違ってナマモノですし、だけど今まで以上に早く聴かせたいなという強い思いもメンバーから感じられて。

ーーライブでどんどん化けていきそうな曲ばかりですものね。

Tatsuya:今、「お前ら、しっかりやれよ!」と優しく言われたようで、かなりハードルが上がりましたね(笑)。

Yosh:僕もオーディエンスのリアクションを経てすごい化けると思ってます。みんなが歌えるようになったら相当よくなると思うし、僕らのアルバムに関しては、オーディエンスと歌うことがひとつの意味として大きいので。

Tatsuya:今回はまたそういう曲が多いんだよね。

ーーそういう意味では、二段階を踏んで化けていきそうですよね。

Ivan:ああ、声が出せない状態からと、声が出せるようになってからと。そう考えると、楽しみが増えますね。

■アルバム情報
Survive Said The Prophet
6th Album『Hateful Failures』
2022年10月12日(水)
・初回生産限定盤(CD+DVD)¥4,200+tax
・通常盤初回仕様(CD)¥3,000+tax

【収録内容】
CD ※初回・通常盤ともに共通
01. Hateful Failures Pt.1
02. Mary
03. Drive Far
04. Beauty Queen
05. Papersky
06. Win / Lose
07. Hopelessly young
08. Hateful Failures Pt.2
09. 624
10. Prayer

初回生産限定盤DVD
『Making Of “Hateful Failures”
- at Interlace Audio, Portland, USA -』

■ライブ情報
『Hateful Failures Tour』
・2022年10月21日(金)/金沢EIGHT HALL
開場18:15/開演19:00

・2022年10月22日(土)/新潟LOTS
開場17:15/開演18:00

・2022年11月4日(金)/名古屋ダイアモンドホール
開場18:00/開演19:00

・2022年11月19日(土)/仙台Rensa
開場17:15/開演18:00

・2022年11月25日(金)/Zepp Osaka Bayside
開場18:00/開演19:00

・2022年11月27日(日)/福岡 BEAT STATION
開場17:15/開演18:00

・2022年12月3日(土)/広島クラブクアトロ
開場17:15/開演18:00

・2022年12月4日(日)/高松オリーブホール
開場17:15/開演18:00

・2022年12月8日(木)/札幌 PENNY LANE24
開場18:15/開演19:00

・2022年12月10日(土)/苫小牧 ELLCUBE
開場17:15/開演18:00

・2022年12月20日(火)/EX THEATER ROPPONGI
開場18:00/開演19:00

<チケット>
サバカル1F立見:6,500円(税込)
サバカル2F指定席:6,500円(税込)
一般1F立見:5,500円(税込)
一般2F指定席:5,500円(税込)

一般発売:10月8日(土)10:00~
受付:https://eplus.jp/sstp/

Survive Said The Prophet Official Website

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