ASIAN KUNG-FU GENERATION、『プラネットフォークス』横浜アリーナ公演直前インタビュー 新体制で提示するバンドの最新形

バンドをコミュニティとして捉え直すことができた

ーーそれで言うと今年夏フェスにも出演して。『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2022 in EZO』と『SUMMER SONIC 2022』がありましたけど、フェスのセットリストも『プラネットフォークス』の世界観になっていましたね。

後藤:それはなんていうんだろう、僕らとしても1つの反省材料としてあります(笑)。今年は(『SUMMER SONIC』に出演した)Primal ScreamやKASABIAN、Kula Shakerを意識するあまり、我々のロックキッズとしてのUKロックへの憧れがものすごくメラメラと燃え上がってしまったんですよね。そういう中、USインディみたいなマナーとかパワーポップを全開にしてぶつかっていくと折り合いが悪いかなみたいな気持ちになってしまって。だからだいぶ『SUMMER SONIC』モードだったんですよ。夏前から『SUMMER SONIC』だったんです、俺たち(笑)。『RISING SUN』に出たときに、若干「あれ、アジカン渋いぞ」みたいな空気がありまして。それについては事実かなと(笑)。

ーーなるほど(笑)。

後藤:ただ、今の自分たちに自信があるからこそ選んだセットリストというか。みんなで話したのは、それは「リライト」とかそういう曲が人気なのはわかると。ただ、俺たちはずっとトランスフォームし続けているので、とにもかくにも『プラネットフォークス』が好きじゃないとか聴いたこともないっていう人がどんどん増え続けていくのならば俺たちはこのまま歩んでいけないっていうことだから、今年は自分たちの今の状態のよさを信じて、今の我々のモードやムードと波長の合う人、分かち合えそうな人たちに向けて演奏するのが正しいやり方なのかなって。そういう話はしたんですよね。たとえ「アジカン渋いぜ」っていう意見があったとしても。でも予想以上に渋いぞっていう。反省はしてます(笑)。でも後悔はしてないです。いいセットリストでやれたなって思う。

ーーまさにそうだと思います。アジカンは今いい感じなんだなと思いました。実際『SUMMER SONIC』では前がKula Shaker、後ろがPrimal Screamというスロットだったわけですけど、いかがでしたか?

喜多:Kula Shakerは解散前に山ちゃんと神奈川県民ホールに観にいったりしていたので、かなりファン目線でも観ていたし、次、ちょっと頑張らなきゃなっていう目線でも観てたし。なんかぐちゃぐちゃのままステージに上がりました(笑)。でもすごくいいライブができたと思います。

山田:大阪が野外で、東京がメッセの室内だったんですけど、東京でやったときに、演奏しながら結構感動していたんです。『プラネットフォークス』の曲たちはこういう空間の方が合うのかなと。自分が思っていた以上にフィットして、グっとくる瞬間が多かったですね。

ーーそんなフェスがあり、またツアーが始まって。10月27日には横浜アリーナ公演が待っているわけですが、横アリでワンマンをやるのは7年ぶり、『Wonder Future』のツアー以来で。横浜というのはアジカンにとって大事な街ですし、ずっと『NANO-MUGEN FES.』」を開催してきた横浜アリーナは特別な場所ですよね。

喜多:もうホームといっていいんじゃないですかね。やっている回数的には。

山田:やっぱり『NANO-MUGEN』の印象が強いですからね。

伊地知:まさにホームですよね。特別な場所というよりは今までやってきた……最初にやったライブハウス、下北沢SHELTERもホームみたいな気持ちなんですけど、その気持ちにちょっと近いような感じがします。またここでできるんだ、ここでできるバンドでいたいなと思う場所ですね。

後藤:横アリ、デカいですからね。でも、ずっと『NANO-MUGEN』をやってきた場所なので、ある種のホーム感というのはあります。やっぱり特別な時間にしたいという気持ちはありますね。前回のワンマンのことはあまり覚えていなくて、むしろ昔、『ファンクラブ』の頃にやった横浜アリーナ2デイズとかのことの方が記憶にあります。ただ、その時プレッシャーを感じたこととか、楽しかったことより「これは試練だな」と思ったことの方がよく覚えていますけど、そういうことを乗り越えて今は楽しくやれるようになりました。

ーーその横浜アリーナにはゲストも登場します。ROTH BART BARONの三船雅也さん、羊文学の塩塚モエカさん、chelmicoのRachelさん、OMSBさんという、アルバムにも参加していたミュージシャンたちとステージでも共演するわけですが、改めて、今回彼らと一緒にやったことはアジカンにどんな変化をもたらしたと思いますか?

後藤:バンドの存在やあり方をもう少し開いたものにできたんじゃないですかね。10年20年遡れば、ロックとかバンドってもう少し窮屈なものだったと思うんですよ。バンドはメンバー以外の人を入れてやるなっていう空気もあっただろうし。ましてやバンドマンが別のバンドに客演するというのは、いろんな縛りからよしとされていない空気があったというか。それに比べたら今は横の繋がりを重視する時代になってきて。みんないろんなところで一緒にクリエイティブな作業をしましょうっていうことが増えてきたし、ソーシャルネットワークも発達しているので誰とでもいろんな思いつきを形にできたりする。バンドはバンドなんだけど、もう少し開いてコミュニティとして捉え直すことができたんじゃないかなっていう気がします。

ーー潔さんはああやっていろいろなゲストが参加してアルバムを作るというのはどうでした?

伊地知:前作はWeezerのリヴァース・クオモとか、これまでもいろいろな人に曲を提供してもらったことはあって。プロデューサーを立てるということはまだしたことがないんですけど、その前に、メンバーで考えたアイデアをいろんな人と共有して、ゲストミュージシャンに入ってもらって新しいアジカンの扉を開いてもらうということがまだまだできるなと思いました。特に今回、ゴッチの人選でラッパーが入ってくれましたけど、そうなるとやっぱりこちら側のプレイスタイルも変わるので。4人でしかできなかったことではなくなってくるんですよね。それがライブでどうなるのかなっていう。そこでまた一歩進めるんじゃないかなと思います。

ーーRachelさんとOMSBさんが参加した「星の夜、ひかりの街」がライブで鳴ったときにどうなるのかはすごく楽しみですね。でも25周年のライブのときは4人だけでやったりもしていたし、どっちもやれる自由さがすごくいいですよね。

伊地知:あのときはすごく新鮮で嬉しかったし、両方できるのは強みですよね。

ーー三船さんにしろモエカさんにしろすごくオリジナルな感性をもったアーティストだと思うんです。後藤さんが彼らと一緒に作りたいと思った理由はどういうところにあるんですか?

後藤:はっきりいえばネット上が音源に埋め尽くされているというか、誰しもが毎日曲を作っているし、水曜日と金曜日にものすごい数の楽曲がアップされているような世の中で、水面を突き抜けて浮かび上がってくるような個性が彼らの魅力なんじゃないかなって。声だけでなく、楽曲も含めてね。そういう人と一緒に音楽やってみたいなって、やっぱり思っちゃいますよね。あとは楽曲を共作するにしてもボーカルで参加してもらうにしても、あれは誰なんだろうっていうところを超えた魅力、ある種のシグネチャーがあるというのは大きな魅力だなと思います。

ーーわかりました。ライブでさらにどんな化学反応が起きるのか、楽しみにしています。最後に改めて、今回生中継もされる横浜アリーナのライブに向けて、見どころを一言お願いします。

山田:今回はステージ演出も凝ったものになっていますし、見応えもあるのではないかと。本当に今、自分たちもライブをやりながら感動する瞬間が多いので、そういうものが届けばいいなと思います。ぜひ楽しみにしていただければ。

■放送情報
『生中継!ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2022 「プラネットフォークス」』
10月27日(木)横浜アリーナ公演をWOWOWプラスにて独占生中継
詳細はこちら

ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2022 「プラネットフォークス」ツアーサイト

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