ASIAN KUNG-FU GENERATION、『プラネットフォークス』横浜アリーナ公演直前インタビュー 新体制で提示するバンドの最新形

アジカン、横アリ公演への思い

 今年5月からスタートし、夏フェスシーズンを挟んで進んでいるASIAN KUNG-FU GENERATIONのツアー『ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2022「プラネットフォークス」』。そのツアーの最終盤となる横浜アリーナ公演が10月27日に開催される。「WOWOWプラス」で生中継もされるこのライブには、アルバム『プラネットフォークス』にも参加した三船雅也(ROTH BART BARON)、塩塚モエカ(羊文学)、Rachel(chelmico)、OMSBもゲストとして出演することが決まっており、アジカンにとってもゆかりの深い場所で、スペシャルな一夜が繰り広げられることになる。

 そんな横浜アリーナ公演に向けて、アジカンのメンバー4人にインタビュー。ツアーを回っている中で得た手応え、横浜アリーナという会場への思い、そして新しい挑戦となった『プラネットフォークス』についてなど、アジカンの「今」を語ってもらった。その「今」が表現され尽くすであろう横浜アリーナ公演、ぜひその目で目撃してほしい。(小川智宏)

毎夜毎夜、美しい瞬間が訪れているツアー

ーー3月に『プラネットフォークス』をリリースして、5月からツアーが展開されています。7月までの前半戦を回っての手応えはいかがですか?

喜多建介(以下、喜多):すごく手応えを感じながら回れていると思いますね。久々の大規模なツアーですが、サポートメンバーとしてMOP of HEADのGeorgeくんとRopesのAchicoさんにも参加してもらって、すごくいい形でアルバムの曲たちを見せることができている感じがしています。1本1本、ライブ音源を聴いてしっかり反省しながらツアーを回っているんですけど、それを聴いていても自分も他のメンバーも含めてすごくよくなっているのがわかるので、ステージに出るまでは緊張もありますけど、毎回楽しみが勝るというか。いいライブを見せたいなっていう気持ちがいつもより強いですね。

伊地知潔(以下、伊地):毎回セットリストをちょっと変えていて、柔軟性が出てきているなと思います。それを楽しくみんなで演奏できるというのは今まであまりなかったなと。昔の曲とかレアな曲も結構入れているので、見なきゃ損なんじゃないかなっていう(笑)。それぐらいのものができているんじゃないかなと思います。あとはちょっとネタバレになっちゃうんですけど、今回はメンバー4人が横並びになるセッティングになっていて。ドラマーって普通は前にボーカルがいるので、生まれて初めてフロントマンみたいな新鮮な気持ちで演奏ができています(笑)。

山田貴洋(以下、山田):お客さんもずっと待っていてくれたっていう感じがします。まだ制約がある中ですけど、それを超えた一体感が生まれているというか。自分たちも自信を持って演奏できているからこそ、いいライブができているのだと思うのですが、お客さんもちゃんと受け止めてくれて本当に喜んで帰ってくれているんだろうなということが伝わってきます。まだいろいろ心配なこともあると思うんですけど、いざ会場でライブをしていると「大丈夫だな」と思えますね。

後藤正文

ーー後藤さんはいかがですか?

後藤正文(以下、後藤):新体制みたいなメンバー編成で回っていて。形になるのにどのぐらい時間がかかるのかなという心配はないわけではなかったのですが、サポートの2人が非常に音楽的理解の解像度の高い人たちだったので、すんなり形になって。もちろん、これまでサポートしてくれていたシモリョー(the chef cooks me)から引き継がれたものもあると思うんですけど、こんなに演奏面においてストレスが少なくツアーができているっていうのは久々かなと思います。

 こういう時代なのでメンタリティの変化というのもあって、簡単にいうと「ライブをできるだけでもありがたい」っていう気持ちは以前より遥かに強いですね。1本1本、そこに捧げる気持ちが強いような気がしますし、それがツアーをよくしているのかなと。若い頃は「なんかよくないな」と感じた時はある種の捨て鉢状態で、本当に破滅的にしていくこともロックの醍醐味、みたいな倒錯も自分の中にあって。台無しになる一歩手前ギリギリで「結果大丈夫だったね」みたいな夜もたくさんありましたけど、今はもうそっちには向かっていかないですね。どうにかしてこの夜を豊かにしよう、幸せにしようという気持ちは以前より強いし、最後まで諦めないメンタリティでやっているので。毎夜毎夜、美しい瞬間が訪れているツアーだなと思います。

喜多建介

ーーなるほど。やる側も、もちろん受け取る側も、よりピュアにエンジョイできているということなんでしょうね。『プラネットフォークス』も音楽的なチャレンジがなされていたアルバムですが、あの曲たちをライブでやることについてはいかがですか?

山田:抽象的な表現ですけど、スケールが大きい曲が多いので、今回がホールツアーでよかったなと。演奏していてすごく気持ちがいいし、ホール映えする感じがする。何重にもなったコーラスを主に僕と喜多くんとアチコさんで振り分けているので、ツアー前からミーティングを細かく行ってきました。ツアーが始まってからも試行錯誤はあるんですけど、そういうのも含めて今の自分たちにフィットしているのかなと思うし、気持ちよさや楽しさもありますね。

喜多:『プラネットフォークス』はUKサイケから影響を受けた部分もありますが、そういう曲たちは音の広がりとか、本当にやっていて気持ちいいです。

後藤:アルバムの曲をやっていると、作品がリスナーに届いているというか、アルバムを聴いてライブに来てくださっている感じはしますね。「TOUR『プラネットフォークス』」って言ってますからね。長いキャリアの中で、そういったときには「あいつらアルバムの曲やり倒すぞ」みたいなイメージもあると思うので(笑)。でも、それが今アルバムを作る意味でもあったりするというか。ツアーでどうやるかみたいなね。

 録音物って考えるとほとんどプレイリストになっていて、アルバム1枚まるっと聴いてくれるようなリスナーは年々減っているのかもしれないですけど、とはいえアルバムを中心にライブをやるとなったら、昔の曲との親和性とかもあるじゃないですか。デビューアルバムの中にも『プラネットフォークス』でやろうとしたような音楽性だったり、メッセージだったり、詞の含意だったり、そういうものと繋がるものがあったりするので。僕らとしては新作を通してこれまでのアジカンを編み直しながらセットリストを考えたりしているから。ライブを通して僕たちがどうしてこういうアルバムを作ったのかっていうことを観客のみんなと共有できているんじゃないのかなっていう手応えは毎晩感じていますね。

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