Tokimeki Records、『透明なガール』に仕掛けられた細やかな”妄想”の種ーーアルバムリリースを機にプロジェクトを紐解く

 都会の夜の帳を舞台に、ノスタルジックな音楽を届ける音楽プロジェクトTokimeki Recordsが、10月5日に初のオリジナルアルバム『透明なガール』をリリースする。80~90年代の邦・洋楽の名曲群をカバーするプロジェクトとして2019年に始動したTokimeki Recordsは、アイドルソングからシティポップ、R&B、フュージョンバンドと、幅広いカバー曲のチョイスで注目を集めていた。楽曲毎にフィーチャリングボーカルを変えていたが、今年の春から女性ボーカル・ひかりに固定。今春から初秋までに7曲のオリジナルシングルを発表した。

数多くのプレイリストに登場した「Sweet Escape feat.ひかり」

 8月10日にデジタルリリースされた「Sweet Escape feat.ひかり」は、リリースと同時に各サブスクリプション音楽配信サービスにて、数多くのプレイリストにピックアップされた。例えばSpotifyでは「シティ・ポップの今」「都会の空と音楽と」「Spotify Japan 急上昇チャート」「Buzz Tracker #バズトラ」「キラキラポップ:ジャパン」「Women’s Voice」「Tokyo Super Hits!」などにピックアップされたが、ポイントは「都会の空と音楽と」といった大人の年齢層を狙ったプレイリストと同時に、TikTokとSpotifyが共同で作っている若年層に向けた「Buzz Tracker #バズトラ」と、さまざまなタイプのプレイリストに同時にピックアップされたことだ(※1)。これは、前述した“注目を集めている”のが真実であった証とも言える。爽やかで少し大人っぽい雰囲気のアップチューン「Sweet Escape feat.ひかり」は、まさに夏を彩るにぴったりな1曲だったし、シンセサウンドとエレクトリックブギーをここまで前面に出した楽曲は各プレイリストの中で埋もれることなく、その存在感を発揮していたことも大きい。そして多くのプレイリストにピックアップされたことにより、Tokimeki Recordsの存在が一気に知られることとなった。

Sweet Escape - Tokimeki Records feat. ひかり (Official Music Video)

 9月7日にデジタルリリースされた最新シングル「One More Kiss feat.ひかり」は、「Sweet Escape feat.ひかり」に続き、iTunes Store Chart R&B/ソウルで1位を獲得している(※2)。エレクトリックブギーを軸にした滑らかなグルーヴ、様々な音色のシンセを駆使した緻密なアレンジによる楽曲のストーリー性、空間の奥行きを意識した音の配置、そして、ひかりの丁寧なニュアンスと独特のリズム感にみるアンニュイなボーカルと、そのサウンドだけでも非常にハイクオリティなTokimeki Recordsだが、面白さは他にもある。SNSを中心にしたコンセプチュアルなビジュアル展開や、綿密に練られた歌詞は楽曲のイマジネーションを広げる大きな役割を担っている。同時にTokimeki Recordsの世界観をわかりやすく広めるためのきっかけにもなっていると言える。

One More Kiss - Tokimeki Records feat. ひかり [ Lyric Video ]

漫画との連動で存在感を増す「古町ミナ」

『透明なガール』限定CD

 このビジュアル展開のシンボルになっているのが、古町ミナ(読み:コマチミナ)である。架空のキャラクターでありながら本年5月にリリースされた「You Are Nobody  feat.ひかり」以降のシングルのジャケットやミュージックビデオに起用されている。先日公開になったアルバム『透明なガール』のジャケットを飾っているのも彼女だ。限定で発売されるCDのジャケットは彼女が描かれたピクチャーレーベル。レコードやCDを買い漁っていた往年の音楽マニアにとっては、懐かしさとエモさを感じるデザインなのではないだろうか。

 さらには、この春から古町ミナ名義でTwitterがスタートし、彼女を主人公にしたTwitter漫画もスタート。古町ミナの日常を綴っているこの漫画では、夏の休日のワンシーンに出てくる海の家の看板が神奈川県一色海岸近くにあるカフェ「ESCAPE」だったり、仕事中の昼休みの制服から彼女の職業を想像させたり、飽きさせない仕掛けでユーザーを楽しませている。また最新シングル「One More Kiss feat.ひかり」のジャケットには浴衣姿の古町ミナが登場するが、時を同じくして音楽配信サービスなどに使われている、顎から胸元までを映した実写のキービジュアルの女性を浴衣姿の写真に変えるなど、古町ミナに少し現実味を感じさせる演出も。Tokimeki Recordsは、この春からフルアルバム『透明なガール』のリリースに向け、古町ミナという人物を使い、聴き手のイマジネーションを刺激し続けることで、アルバムへの期待値に繋げることに成功している。

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