米山舞、イラストレーション×音楽で追求する新たな自己表現 Eve「YOKU」MVや存流&明透のキャラデザ制作で得た経験
「絵もアニメもイラストもMVも中間みたいなものがあっても面白い」
――世界観をアニメやイラストで表現していくEveさんのようなアーティストやバーチャルシンガーが近年増えていますが、米山さんから見てそういう傾向はどう思いますか。
米山:私たちと同じで純粋にアニメを楽しんできた世代なので、必然的にそういうイメージを使いたいと思うんじゃないでしょうか。見ている側も違和感なく表現の一環として受け入れられてるところを見ると、私のような仕事をしている人間にとってはありがたい流れです。
――今後も音楽関連の仕事はしていきたいですか。
米山:そうですね。音楽関連の仕事と言うのが正確かわかりませんが、自主製作の一環で動く絵があり、そこに音楽が合致するものがあればぜひやりたいです。短編やMVよりももっと短い、5秒とか10秒の作品とかもいいですし、絵とは異なる表現方法が生まれると思うので、色々と実験してみたいと思っています。
――音楽や映像はいわゆる時間芸術ですが、イラストは空間芸術です。それぞれ異なる分野ではありますが、ご自身では意識分けはあるのでしょうか。
米山:確かに、映像作りと絵作りは全く違います。一枚で見せる絵を一筆ずつ意図を込めるのと、流れで1つのものを表現するのは別かなと感じているので、自分も脳を切り替えて作るようにはしていますね。
映像の話で言うと次につながる動きを絵ではない部分でどう表現しようとか、撮影技法を使って繋げるとか、そういう映像表現は絵とは異なるセンスだと思います。自分はどちらかというと絵を見せるタイプなので、リズムを意識することについてはまだまだなんですけど、実際に映像を作る時には互いの良い部分を盛り込めるようにはしているます。
『00:00:00:00』(シーケンス)
――ロンドンの『START ART FAIR 2021』に出品した『00:00:00:00』(シーケンス)は、空間芸術と時間芸術の要素を両方持っていますね。
米山:そうですね。アニメ業界にいましたから、一枚一枚の絵の連続によって一連の流れ、いわばシーケンスが完成している、という当たり前のことですがそれを撮影やイラスト表現により再認識・拡張したいなと思ってああいった出力方法になりました。
それと、時間芸術のノウハウも織り交ぜてみたら違う感じ方が生まれるんじゃないかと思いました。自分は中間的なものを目指しているんです。絵もアニメもイラストもMVも中間みたいなものがあっても面白いんじゃないかと思って。
――確かに、活動分野が広いこともありますが、どの分野にもスッポリと当てはまらない中間的な狙いの作品が多い印象です。
米山:グラデーションがあった方が自分を肯定しやすいんです。すでに確立されたものだと、それは自分が作った基準じゃないところでの競い合いになりますから。
――個展も開かれていますし、直近ではホテルの部屋の監修もされるなど、ますます活動領域が広くなっています。
米山:展示を一番の活動にしたいと思っています。自分が表現するもの・面白いと思ってるものがどこまでいけるのか、実験したり試してみたいと思っています。
――米山さんの活躍を見ていると、アニメーターのキャリアのあり方は、もっと多彩なものにできるように思えてきます。
米山:本当にそう思います。もちろん、先人の築いてきた文脈や作品ががあればこそで、それを受けた自分たちがまた新たな可能性を拡げて行くことが大事なのではないかと思って模索しています。