JIROが語る、尽きることないプレイヤーとしての刺激や発見 GLAYがライブやツアーを大切にする理由も明かす
GLAYが通算60作目となるシングル『Only One,Only You』をリリースする。リード曲「Only One,Only You」は、先が見えない世界の現状を背景にした、強いメッセージを反映した楽曲。重厚でドラマティックなバンドサウンドも含め、ロックバンドとしての矜持を感じさせるナンバーに仕上がっている。さらにアレンジに80KIDZが参加した「GALAXY」、緊張感に溢れたサウンドとエモーショナルな旋律を軸にしたミディアムチューン「クロムノワール」、そして、ファンクラブライブ『We♡Happy Swing』第3弾のために書き下ろした 「WE♡HAPPY SWING』(2022年7月31日千葉・幕張メッセ公演で披露した際の音源)を収録。現在のGLAYのモードがダイレクトに伝わるシングルとなっている。
リアルサウンドでは、JIRO(Ba)にインタビュー。ニューシングルの制作、通算1000回を超えたライブに対するスタンスなどについて語ってもらった。(森朋之)
ベースを弾くことがますます面白くなっている
ーーまずは昨年10月から今年の2月にかけて行われたアルバム『FREEDOM ONLY』のツアーについて聞かせてください。振り返ってみるとどんなツアーでしたか? 現在もそうですが、コロナ禍のツアーは本当に大変だと思います。
JIRO:そうですね。以前のように盛り上げるのも難しいし、特にフロントマンであるTERUは最初のうちはいつもどおりできないことに戸惑いを感じていたみたいですけど、ツアーが進むにつれて「こうすれば声を出せなくても盛り上げられる」という感覚を掴んできて。お客さんとのコミュニケーションに対しては昔から敏感な人だし、さすがだなという気持ちが強かったです。演奏的にはそんなに影響がなかったかな。ステージをしっかり作り上げて、それを観て楽しんでもらおうという感覚だったと思います。本来のシンプルな形に戻った感じもありましたね。
ーーライブの原点に立ち返ったのかも。セットリストについては?
JIRO:『FREEDOM ONLY』はBPM的に緩めの曲が多いアルバムだったんですよ。なのでTAKUROからは(2days公演の)「初日、2日目でアルバムの新曲を半々で分けて、その他は盛り上がる曲で構成してもいいよ」と言われていたんですけど、いろいろ考えて、「コロナ禍で声が出せないからこそ、“聴いてもらう”というスタンスがいいんじゃないか」と思って構成しました。その結果、演奏に徹することができたし、メリハリもしっかりつけられたんじゃないかなと。
ーーなるほど。ツアー終了後はオフの時間もあったんですか?
JIRO:はい。コロナ禍になってからは、リハーサルやライブ、レコーディングの時間以外は比較的自由に使えることが多いので。あとは各々がその時間をどう使うか? ということですね。自分のことで言えば、今年前半は次の制作に向けたデモテープ作りをやろうと思っていたんです。ドラムサンプラーとか、新しい機材もいくつか買って、打ち込み的なことも勉強したくて。YouTubeを見ながらいろいろやってたんですけど、関連動画でベースのことも出てくるわけですよ。それを見ているうちに自分でもベースで試してみたくなって「どれどれ」と弾き始めると止まらなくなっちゃって(笑)。結局、買った機材は放置して、ベースを弾いていることが多かったですね。聴く音楽も変わってきたんですよ。今までロックミュージックばかり聴いてきたんですけど、70年代のディスコからはじまって、最近のR&Bだったり。最近はLizzoの「About Damn Time」のベースをよく練習しています。
ーーロックバンドのベースとはまったく違いますよね。
JIRO:そうですね。それが今後のGLAYにどう反映されるのか、あるいは反映されないのかはわからないですけど。ただ、ここに来てベースを弾くことがますます面白くなっているんですよね。いい扉が開きかけていると思います。YouTubeを見ていると、若くてベースが上手い人がゴロゴロいるんですよ。すごいプレイを見ると、刺激を受けますね。
時間をかけて制作できるというメリットも
ーーでは、ニューシングル『Only One,Only You』について聞かせてください。表題曲は厚みのあるサウンドメイク、力強く、ドラマティックな旋律を軸にしたバラードナンバー。JIROさんはどんな印象を持っていますか?
JIRO:洋楽テイストの曲だなと。それこそ海外のR&Bを聴いていると、イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、エンディングが同じコード進行で、メロディや上に乗っている音が変わっていく曲がけっこうあって。「Only One,Only You」も、ちょっとそういう匂いがするので。TAKUROは少し前からL.A.に住んでいるので、自然とそういう音楽の影響を受けているのかもしれないですね。
ーーベースラインは、どんなアプローチだったんですか?
JIRO:“俺のベースはこうあるべき!”ということではなくて、楽曲に寄り添おうと思っていました。ミックス作業のときに、TAKUROが「音像的にもっとローの音域がほしい」と言っていて。エンジニアの方やプロデューサーの亀田誠治さんが試行錯誤していたんですけど、作業をしているうちにローの音域がベースのフレーズとかぶってきたんですよ。「だったら違うアプローチにするよ」と、ベースラインを自分の家で録り直したんです。最近はスケジュール的にも余裕があるので、そういうこともできるようになったし、しっかり時間をかけて制作できていて。ベースにもさらに向き合えていて、悪いことばかりじゃないなと思いますね。
ーー2曲目の「GALAXY」はエレクトロユニット80KIDZとのコラボレーション楽曲。80KIDZと一緒に制作することになったのは、どういう経緯だったんですか?
JIRO:TERUがアイデアを出したんじゃなかったかな。僕も以前から80KIDZの音楽が好きでよく聴いていたんですけど、GLAYの音楽とリンクするイメージがなくて。最初は「どうなるんだろう?」という感じだったんですけど、1発目に送ってくれたアレンジが想像をはるかに超えるカッコよさで、めちゃくちゃ興奮しましたね。彼らはいろんなアーティストとコラボレーションしているし、姿勢が柔軟なんです。ロックバンドと一緒にやってもしっかり自分たちのカラーを残せるのはすごいし、刺激を受けました。レコーディングのときも、すごく細かいところまで音を突き詰めていて。BPMも絶妙なんですよ。ダンス畑の人たちなので、人間がノリやすいビートがわかっていて。自分たちだけでアレンジしていたらもっと速くしていたと思うし、GLAYによくある高速の8ビートの曲になっていたんじゃないかな。80KIDZのおかげでさらにグルーヴィーになったし、新しい発見がたくさんありました。
ーー「GALAXY」は『FREEDOM ONLY』ツアーでも披露していましたよね。しかも1曲目で。
JIRO:年明けの公演から1曲目にしました。新曲を1曲目に持ってくることで、集中して聴いてもらえるし、昔はよく新曲を1曲目にやっていたんですよ。「GALAXY」は華やかなサウンドだし、盛り上がれる曲なので、みんな気に入ってくれるんじゃないかなと思って。実際、すごくインパクトがあったし、評判もよかったですね。
ーー3曲目の「クロムノワール」も、7月に行われたファンクラブツアーで披露していましたね。
JIRO:はい。「クロムノワール」もオーケストラ以外のアレンジ自体はシンプルなんですけど、曲全体に張り詰めた空気があって。演奏していて心地よかったです。音数が少なくて、メンバー4人で奏でるメロディと歌でグルーヴを構築しなくちゃいけないから、かなり緊張感があるんですよ。以前だったらプレッシャーで吐きそうになってたかもしれないけど(笑)、今は楽しく演奏できていますね。
ーーアンサンブルにも深みが増している?
JIRO:そうだと思います。それぞれ押し引きが上手くなっていると思うし、演奏自体もよくなっているんじゃないかなと。