花澤香菜、“ポーカーフェイス”ではいられないハイテンションなライブ なかのZEROワンマンで届けた最高の今

花澤香菜、なかのZEROワンマンレポ

 2022年9月10日、花澤香菜のワンマンライブ『HANAZAWA KANA Live 2022 “Pokerface” supported by 明治』がなかのZERO 大ホールで開催された。高校の将棋部を舞台にしたラブコメディ『それでも歩は寄せてくる』TVアニメのオープニングテーマを務めた「駆け引きはポーカーフェイス」シングルリリースに伴うライブである。

 その終盤で、彼女は歌手活動について「私以上でも私以下でもない、この瞬間の私を見てもらう」ことだと述べ、「今の私が正解で最高なんだと思わせてくれる」とファンに感謝した。声優として大成功を収めながらも、まったく別口から音楽ファンも獲得してきた花澤香菜という歌手の真価が発揮された夜だった。

 会場が暗転し、ステージ上の幕が開くと、ギターとバンドマスターの北川勝利(ROUND TABLE)、ギターの山之内俊夫、ベースの千ヶ崎学、キーボードの末永華子、ドラムの多田涼馬、パーカッションとマニピュレーターの毛利泰士からなるバンドがステージに登場した。猛者揃いだ。

花澤香菜

 花澤香菜は、白い衣装に身を包んでいた。会場では、ファンの振る将棋の駒の形をしたアクリルプレートライトが青く光る。今回のライブではステージ装飾の至るところに将棋の駒の形が用いられていた。

 ライブの冒頭を飾ったのは、ドリーミーな「青い鳥」。2013年のデビューアルバム『claire』の1曲目だ。花澤の甘く、澄んだ歌声が会場を包みこんでいく。楽曲の終わりで、腕をくるくると回す姿もキュートだ。この日の「ブルーベリーナイト」ではパーカッションが活躍し、リズムにはラテンのフレイバーも漂っていた。

 MCでは、7月にリリースされた『駆け引きはポーカーフェイス』にちなんだライブだと言いつつも、「こんな服を着ている時点ではしゃいでます」と、ポーカーフェイスどころではない興奮を隠さず、ファンに「一緒にはしゃいでみる?」と呼びかけた。すると、北川に「落ち着いて」「2曲目にして早くない?」と笑いながら突っこまれた。『駆け引きはポーカーフェイス』にかけて、花澤が「すんとした目で私を見て」とファンに呼びかけると、視線を受けて北川が「演奏しづらい」と笑う一幕も。

花澤香菜

 「Don’t Know Why」は、シンセドラムが80年代テイストで、ステージ上の映像も80年代風味に。「You Can Make Me Dance」では、ギターのカッティングが心地いい。「スパニッシュ・アパートメント」は心地良いソウルナンバーだ。この日の「運命の扉」はビートが強いアレンジに。

 MCでは、先日出演した『アニサマ』(『Animelo Summer Live 2022 -Sparkle-』)の話題も。さらに、文化放送のレギュラー番組『明治 presents 花澤香菜のひとりでできるかな?』で、自分から“水着回”をやると言いだし、リスナーへの電話で何色の水着を着ていると思うかを聞いた話などを披露。さらに、子供の頃にとんかつ屋の「さぼてん」に行くときにはしゃいだという話題など、花澤のテンションの高さが伝わるMCが続いた。

 そこから雰囲気は一転して、「GSSP」「YESTERDAY BOYFRIEND」といったミディアムナンバーのコーナーへ。「青い夜だけの」は、北川のアコースティックギターとともに歌われた。

 MCでは、海外の空港で怪しまれないようにポーカーフェイスをしてしまうなど、引き続き『駆け引きはポーカーフェイス』にちなんだ話題が展開された。

 続く「Merry Go Round」は高揚感に満ちており、生演奏で輝きをさらに増していた。花澤は「うわー!」と叫びながらファンを煽り、ウェーブを起こさせる。「LOVE IS WONDER」にはジャズの要素も。そして、ステージから花澤の姿が消えたと思うと、ショルダーシンセサイザーを抱えた末永がセンターに立ち、バンドメンバーによる白熱したセッションが繰り広げられる。続く「駆け引きはポーカーフェイス」でステージに戻った花澤はこの日のために作ってもらったという着物風のドレスに衣装チェンジ。『それでも歩は寄せてくる』のアニメーションをバックに会場を盛り上げる。バンドの演奏も熱を帯びていた。

 MCでは、同曲でTVアニメのオープニングを担当したことにふれ、自身が坂本真綾のライブで「マジックナンバー」(TVアニメ『こばと。』OP曲)を聴いたときに号泣したが、それを作ったのは北川だという話題も飛びだした(作編曲を担当)。

 「Nobody Knows」は、実にグルーヴィーな演奏。ピアノのソロで幕を開けた「ユメノキオク」では疾走感に満ちた演奏を聴かせ、ギターのふたりが花澤香菜のそばで演奏するシーンも。「SHINOBI-NAI」には多彩なリズムが登場し、パーカッシブな演奏が刺激的だった。「息吹 イン ザ ウィンド」では、楽曲とダイナミックな演奏が、花澤のボーカルの陰の魅力を見事に引きだしていた。

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