まらしぃ、待望の全国ツアーへ コロナ禍を経て変化したリアルのライブに対する意識

武道館、野音……まらしぃが重ねてきた感慨深いライブの数々

(写真=ishizaka daisuke)

——翌2021年には日本武道館で単独公演『marasy piano live in BUDOKAN』も行いました。ステージから、どんな景色が見えましたか?

まらしぃ:ぐるっと見渡せるセットで、皆さんの顔が見えて。当時も緊急事態宣言など厳しいタイミングだったので、チケットを買っても来られなかったという方もいたと思います。同時にオンラインで配信も行いましたが、そんな状況のなかでも感染症対策をしながらライブをやれたことは感慨深かったです。武道館のステージに立てたのは、音楽をやっているものとして光栄でした。

——まらしぃさんは、ピアノ文化〜ボカロ文化〜アニメ文化〜ゲーム文化などなど、いろんなカルチャーを横断されていると思います。今やボカロ文化圏も、解釈や表現がどんどん広がってきています。そんななか、まらしぃさんは“弾いてみた”を通して解釈を広げた開拓者です。

まらしぃ:武道館のセットリスト、曲順を見ていると感慨深かったです。それこそ「ネイティブフェイス」は武道館でも弾きたかったんですよ。

——あらためて武道館公演について、エピソードをお聞きしてもよろしいですか?

まらしぃ:前日は眠れなかったですね(笑)。ふだん、あまり気負う方ではないんですけど。なんだか寝つけなくて。

——当日は、高揚感で乗り切ったと。

まらしぃ:はい、終わったらぐっすりと眠れました(苦笑)。

——そんな武道館公演を経て、今年6月には『まらフェス2022』を日比谷野外大音楽堂で開催。CDとして武道館公演でのライブ映像DVD付きのEP『まらフェス2022 EP』もリリースされました。前向きかつポジティブな雰囲気が伝わるライブでしたよね。

まらしぃ:開催できてよかったですし、晴れてよかったなと。道理的には以前中止となった大阪でリベンジしたかったのですが、スケジュールが難しくて。場所は変わってしまいましたが、止まっていた『まらフェス』を動かすことができて嬉しかったです。ようやくでしたね。

——野外で聴くピアノの音色は格別に気持ちがいいです。音が空へ向かって突き抜けていくんですよね。

まらしぃ:貴重だと思います。とても素敵な空間でした。kors kさんとのユニット・maras kでは、客席のペンライトの光が綺麗でしたし、H ZETT Mさんとの共演が楽しくて。めっちゃ好きなんですよ、ZETTさん。10年前、自分が駆け出しのときに初めてご一緒させていただいて。当時は演奏についていくだけでも大変で、とにかく必死だったんです。最近は、ほんの少しだけ楽しめるようになって。ZETTさんも素敵で、僕が楽しんでいるのを嗅ぎとったのか、演奏でいい感じに2人で遊ぶことができました。

——まらしぃさんの音楽活動は前例のないところから、道なき道を開拓しながら歩まれてきましたもんね。となると、ポップフィールドから道なき道を開拓されたH ZETT Mさんとの交流は心強いですよね。

まらしぃ:僕は先輩後輩とか、そんなに知り合いもいないのでZETTさんを見て勉強させてもらいましたし、刺激を受けました。

——ちなみに、この数年の間にピアノでの“弾いてみた”ブームがネットやテレビなど様々なメディアで取り上げられましたよね。まらしぃさんに憧れていた子たちも育って、ふと振り返ってみたら後輩がたくさんいるんじゃないですか?

まらしぃ:盛り上がっていて嬉しいです。ストリートピアノとかね。ピアノって、大人になると習い事として手を出しづらいじゃないですか。でも、途中で辞めてしまった方でも、好きな曲を弾けるようになったら楽しいですから再開してほしいですよね。

——まさにそれ、まらしぃさんだ。

まらしぃ:あ、そうですね(笑)。いま流行っている好きな曲のサビのメロディだけでも弾けたら、本当に楽しいですから。僕はもろもろの事情で顔を出していないので、ストリートピアノなど遊びに行けませんけど(苦笑)。

——最初はバレなくても、ピアノを弾いたらわかりますよね(苦笑)。ちなみに、この数年ネット音楽シーンの移り変わりもスピード感が早くて。2012年、米津玄師さんがシーンを切り開いた後は、ピアノサウンドも耳に残るYOASOBIや、ずっと真夜中でいいのに。、ヨルシカなど、ボカロ文化圏の幅をより飛び越えてきました。もはやメインストリームをネットカルチャーが塗り替える時代となりましたね。

まらしぃ:もともと始まりはマニアックでサブカルチャーなシーンだったと思うんですけど、作品のクオリティは高かったんですよ。10年前のボカロソングやアニメソングが、いまになって再評価されることも増えていますから。単純に、大きな変化が起きたというより、昔に比べてSNSが広がって、自分が好きなものをアピールできる場が増えましたよね。昔はもっとクローズドだったかもしれないですけど。

——動画を編集したり投稿すること自体が、世の中でもマニアックなことではなくなりましたもんね。情報発信のクオリティも上がりました。

まらしぃ:共有、話題に上る頻度が高くなったことによって、広がるべくして作品が評価されているんだろうなと思っています。

——納得です。そして、満を持してといいますか、12月から全国ツアー『marasy piano live tour 2022-2023』が始まります。どんな内容になりますか? なんて、さすがにまだ言えないですかね(苦笑)。

まらしぃ:ははは(笑)。それこそ、コロナ禍になって、今年の秋冬だともう3年になるので。パンデミック前と後で、ライブに対しての意識が変わったんですよ。以前から、まらしぃを知ってくださっていたファンの方はもちろん、まだライブを観たことがない、配信で知ってくださった方々にも観ていただきたいですね。前を向けるような、楽しいライブにしたいと思っています。ありがたいことにピアノ1本で、日本武道館だったり、生ピアノで京都、名古屋、そして東京・サントリーホールで弾かせていただいた経験も増えたので、次に活かしていきたいなと。

——唯一無二のアーティスト性により磨きをかけてきた数年ですよね。

まらしぃ:ありがとうございます。

——ツアーでやる予定の曲を少し、内緒で教えてくれませんか?

まらしぃ:どうなんですかねえ。あ、「Happy Birthday to You」はやるかな(苦笑)。

——ははは(笑)。いつものファンサービスだ。

まらしぃ:僕の場合は3年ぶりにやっとみんなに会いに行けるので、純粋にピアノを聴いてもらいたいなと思っています。

——そういえば、ツアーにあたって作品を出す予定はないんですか?

まらしぃ:どうでしょうね(笑)。

——というかツアーですけど、全国を周りきれていないですよね? もっと本数を増やしてほしいです。

まらしぃ:ははは(苦笑)。もうちょっと行きたいですよね。コロナの状況もみながら増やせたらいいです。

——楽しみにしています。

まらしぃ:ありがとうございます。是非、みなさん遊びにいらしてください!!!

■ツアー情報
まらしぃ『marasy piano live tour 2022/2023』
出演:まらしぃ / marasy

2022年12月3日(土)長野・まつもと市民芸術館
2022年12月4日(日)名古屋・名古屋市公会堂
2022年12月11日(日)東京・立川ステージガーデン
2023年1月8日(日)大阪・サンケイブリーゼ
2023年1月9日(月祝)福岡・キャナルシティ劇場

コンサート詳細はこちら
企画/制作:Subcul-rise Record / Worldapart ltd.

まらしぃ オフィシャルサイト

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