DISH//、雨を吹き飛ばすほどの熱いライブ “宇宙”をテーマにした恒例のコニファーフォレスト公演レポ

 DISH//の結成日は、2011年12月25日。彼らにとって2022年の1年間は結成10周年イヤーであり、4人は様々な挑戦を重ねながら、ファンと共にメモリアルイヤーを駆け抜けている。その一環として、8月27日に富士急ハイランドコニファーフォレストで開催されたのが、単独野外ライブ『DISH// SUMMER AMUSEMENT ’22 -PLANET-』だ。

「宇宙がテーマです。音楽がどこまでもどこまでも広がっていきますように。スラッシャー(DISH//のファンの呼称)の心の中でなんどもなんども思い出せますように。そんな一日になりますように。そして宇宙で一番笑顔が充満する空間になりますように。」

 北村匠海(Vo/Gt)のコメントを通して事前に発表されていたように、今回のライブのテーマは宇宙であった。フードエリア「PLANET KITCHEN」では、「UFOワッフルバーガー」や「流れ星スムージー」などの宇宙をモチーフにしたフードが販売されていて、入場エントランスは、往年のSF映画に登場する工業都市を模したデザインが施されていた。ライブが始まる前にもかかわらず、会場全体から、規格外のエンターテインメント空間を創り出そうとするメンバーとスタッフの熱い心意気が伝わってきて、思わず胸が高まった。加えて、開演直前のSEとして流れていたのは、Van Halenの「Jump」。同曲は、近未来のエンタメ空間を描いた2018年の映画『レディ・プレイヤー1』で大々的にフィーチャーされていた楽曲であり、今回のライブの世界観を彩る上で重要な役割を果たしていたように思う。

 開演時間を少し過ぎた頃、ステージ上の巨大ビジョンに、壮大な銀河を巡るオープニング映像が映し出される。次第に地球へと接近していき、地球との距離を表す数値「〜KM FROM EARTH」が限りなくゼロに近づいた時、ドローンで会場を上空から撮影した映像がビジョンに投影される。粋な演出に息を呑んだ瞬間、白いスモークの奥からメンバー4人とサポートメンバーが現れる。そして、フロアの興奮が冷めやらぬ内に、オープニングナンバー「Shout it out」へ。灼熱の太陽がギラつく映像をバックにしながら、熱い歌と演奏を届ける4人の姿に痺れた。特に、2番のサビの最後で感極まるようにシャウトした北村の姿が胸を打った。続けて、鮮烈なロックバイブスを轟かせる「rock'n'roller」「FLAME」が次々とドロップされていく。冒頭から立て続けで披露したロックチューン3連打を通して、DISH//のロックバンドとしての矜持を高らかに掲げてみせた4人。特に、泉大智(Dr)のパワフルなドラムは圧巻で、また、「FLAME」の間奏における、矢部昌暉(Cho/Gt)のライトタッピングを駆使したギターソロは鮮やかな輝きを放っていた。

 なお、DISH//は、1週間前に開催された『EBiDAN THE LIVE 2022 〜EBiDAN AWARDS〜』のステージをもってスターダストプロモーション所属の若手アーティスト集団・EBiDANを卒業したばかり。つまり、今回のコニファーフォレスト公演は、DISH//として新しいスタートを切るという深い意義が宿ったライブでもあった。MCでの直接的な言及こそなかったものの、彼らを長年追いかけ続けているファンは、その新しい一歩の重みを確かに感じ取っていたと思う。実際に、コニファーフォレストのステージの広さに負けじと、渾身のパフォーマンスを届ける4人の姿は頼もしく、そして彼らの軽やかで優雅なパフォーマンスは、もはや余裕すら感じさせるものだった。これまでの全ての経験を糧にして、再び力強く歩み出した今のDISH//の姿は、やはり眩しい。

 初めてのMCパートで、北村は「機嫌いいじゃねえか、空!」「これだよな、野外はやっぱり」と万感の思いを漏らした。というのも、DISH//がコニファーフォレストで野外ライブを行うのは今回で3度目だが、前々回(2019年)も前回(2021年)も、残念ながら天候に恵まれなかったという経緯があったのだ。初めて天候に恵まれた中でコニファーフォレストのステージに立つ4人の晴れやかな表情が忘れられない(なお、このMCパートでは、矢部だけが「雨が降る」と予想していて、メンバーみんなで無視していたという楽屋でのエピソードが明かされた)。そして、北村の「懐かしい曲やろうかな、せっかく太陽も機嫌良いし!」という言葉を受けて、矢部が作詞作曲を手掛けた楽曲「僕の太陽」が披露される。北村の伸びやかな歌声と相まって、ステージの向こうに広がる青空と真っ白な雲がとても美しく見えた。橘柊生(DJ/Key)の清廉なピアノの調べから幕を開けた「ありのまんまが愛しい君へ」では、北村が晴れ渡る青空を仰ぎながら、〈空見上げよう〉と優しく歌い上げる一幕も。これこそまさに、野外ライブならではの醍醐味だ。

橘柊生(DJ/Key)

 「こんな世の中だけど、息をしていて、明日があって、夢もあるかもしれない。辛いこともあって、どうなるか分からない毎日だけど、でも『大丈夫だよ』と伝えたい」。北村が切実な想いを丁寧に伝えた後に披露されたのは、7月にリリースされた新曲「しわくちゃな雲を抱いて」だ。ドラマ『ユニコーンに乗って』(TBS系)の主題歌として耳にしていた同曲だが、音源で聴くよりも深く、そして温かく〈大丈夫〉という言葉が胸に響いた。

北村匠海(Vo/Gt)

 「Shall We Dance????」「HIGH-VOLTAGE DANCER」の2連打を通して、ダンスロックバンドとしての気概を見せつけた後、続く「宇宙船」では、北村が自転車に乗って会場を走り回る嬉しいサプライズが届けられた(自転車のカゴには、タオルに包まれたエイリアンの姿が。言うまでもなく、映画『E.T.』へオマージュを捧げた演出だろう)。しかし、このブロックから次第に降り始めた小雨が徐々に激しさを増していき、「宇宙船」が終わったタイミングで、一時ライブを中断して、スタッフの手によってステージ上に防雨対策が施されていく。橘は、「雨が降ってきて、やっと楽しくなってきたな!」と叫び、その声に、レインコートを着終えた観客がめいっぱいの拍手で応える。そして、それぞれのメンバーが夏の思い出を語り合う流れから、橘が「この大人数に見られながら、花火をやりたい」と宣言。北村から「雨の中、花火やるやついないって」というツッコミを受けながら、手持ちの花火に着火すると、突然ステージ上手方向から大きな打ち上げ花火が上がるサプライズ演出が。

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