Kenta Dedachi、メジャー1stアルバムに込めた希望のメッセージ コロナ禍による心の変化を物語るパーソナルな作品

世界中の人に届けたいし、日本人としてのアイデンティティも持っていたい

ーーMichael Kanekoさんが参加した「Better days」は、スケールの大きいサウンドが広がる楽曲です。

Kenta Dedachi:アルバム制作の後半になって作った曲ですね。他の楽曲が出揃ってきた段階で、プロデューサーのKOSENさんと「もう1曲、エモーショナルでドラマティックな曲がほしいね」という話になって。映画を観ているような曲というのかな。

ーーKOSENさんとの制作はデビュー当初から続いているし、Kentaさんの音楽制作に欠かせないパートナーですね。

Kenta Dedachi:17歳のときから一緒に曲を作ってますからね。たくさん作ってきたので、ときどき同じような曲になりかけるというか、「このアイデア、前もやったよね」みたいなこともあるんですよ。それを乗り越えて素晴らしい曲ができたときはすごく嬉しいし、KOSENさんはストレスフリーと言いますか、最高のパートナーですね。

ーー「Better days」の歌詞は、“良かった日々”を想起するような内容。かなり切ないですね。

Kenta Dedachi:仲がいいハニームーンのフェーズを終えて、意見が合わなかったり、難しい問題が起きて。二人とも良かった頃のことを思い出しながら過ごしているという曲ですね。ちょっと救いがないというか、どうすればいいかわからなくなっているというか。

ーーそういう曲の書き方は、Kentaさんにとって新しいスタイルなのでは?

Kenta Dedachi:本当にそうだと思います。以前はハッピーエンディングにしたい気持ちが強くて、シリアスな曲であっても、最後は希望が感じられるフレーズを入れてたんですよ。「Better days」も最初はそうしようと思っていたんですが、マネージャーが「この曲の歌詞は暗いままでもいいんじゃない?」と言ってくれて。僕も「それはアリかも」と思ったんです。悲しいまま、ディプレッシング(憂鬱)な曲にしようと。

 でも、聴こえ方はポップだと思うんですよ。アメリカのポップスにも、“I hate you”しか歌っていないようなポップソングがたくさんあるので、それと似た感じなのかなって。

ーーなるほど。英語圏の音楽からは今も刺激を受けていますか?

Kenta Dedachi:はい。この曲を作っていたときも、悲しいバラードのヒット曲をたくさん聴いて、リファレンスにしてました。

ーー続く「Green Eyed Monster」も印象に残りました。ジャズの要素を取り入れつつ、ダークな雰囲気もあって、すごく個性的ですね。

Kenta Dedachi:最初は弾き語りで作って、3月の国技館でのイベント『ギタージャンボリー 』(J-WAVE TOKYO GUITAR JAMBOREE 2022 supported by 奥村組)やワンマンライブ『Transit Jam』でも披露したんですよ。その後Kibunyaさんにアレンジしてもらったら、まるでリミックスみたいなサウンドになって。あまりにも他の曲と違いすぎたから、「これ、アルバムに入れて大丈夫かな?」と思ったんですが、最終的にはアルバムに欠かせない曲になりましたね。この曲のおかげでアルバムのダイナミズムが増したし、飽きないで聴ける作品になったなと。

ーー“緑色の目の怪物”というモチーフについては?

Kenta Dedachi:シェイクスピアの『オセロ』に出て来る言葉なんですよ。妬みを怪物に例えてるんですけど、僕自身もコロナ禍のなかで、友達を妬む気持ちがあったし、そのときの感情をそのまま歌ってみたくて。

ーーアルバムの終盤にはアコースティックな手触りの楽曲が収められています。「Dandy Lion」はアコギの弾き語りですね。

Kenta Dedachi:アルバムのなかでいちばん最後にレコーディングした曲ですね。他の曲がすべて出揃ったときに、「もう1曲、Kentaらしい曲を録ってみない?」という話になって。せっかくだから新しい曲を作っちゃおうと思って、レコ—ディングの2日前に家でパッと作ったのが「Dandy Lion」だったんです。時間があれば、もうちょっとアレンジしようかなと考えたでしょうけど、とにかく2日しかなかったので、そのとき自分のなかにあったものをバッと出して。歌もギターも一発録りで、すごく好きな曲になりました。

ーー「Dandy Lion」は“Dandelion”(タンポポ)とリンクしてるんですよね?

Kenta Dedachi:そうですね。歌詞のテーマはタンポポなんですけど、“Dandy Lion”にするとツイストがかかって面白いかなと。“ダンディ”って言うと大人っぽさを思い描くかもしれないですけど、僕にとってはかわいいイメージなんですよね。映画『フォレスト・ガンプ/一期一会』の最初のほうに、フォレストが初めてスクールバスに乗るシーンがあって。フォレストは足が悪いんですけど、ジェニーに「足、どうしたの?」と聞かれて、「My legs are just fine and dandy」と答えるんです。「ぜんぜん大丈夫だよ」みたいな意味なんですけど、そのセリフがすごく好きで。自分にとっての“ダンディ”は、男らしさとはちょっと違うというか。

ーーなるほど。Kentaさんの楽曲、マッチョなイメージはないですよね。

Kenta Dedachi:(笑)。そうですね。確かにマッチョなところはないかも。

ーーそしてアルバムの最後を飾る「Rewind」もオーガニックな雰囲気の楽曲です。

Kenta Dedachi:「これまでもたくさんのことを乗り越えてきた。それを思い出して前に進もう」ということを歌っている曲ですね。Renatoさんと初めて作った曲なんですけど、制作したのはコロナ禍に入る前で、いま聴くと「声が若いな」って思います。最初にできた曲をアルバムの最後に置くのも面白いし、アルバムのメッセージにも合ってるんですよ。軽くてハッピーな雰囲気もいいし、気に入ってますね。

ーーシンガーとしても変化しているんですね。

Kenta Dedachi:それはあると思います。声の出し方、表現も変わってきてるし、それを感じられるアルバムでもあるのかなと。

ーーCDのBonus Discには、アルバム収録曲の英語バージョンやシングル曲「Jasmine」の日本語バージョン、小坂忠さん、AmPm、FAITH、The Burning Deadwoodsらとのコラボ曲、客演曲が収録されています。

Kenta Dedachi:曲を作るときは、まず英語で歌うんですよ。歌詞は全て英語で完成させるので、日本語の歌詞を混ぜるときも英語のニュアンスや世界観を大事にしていて。せっかくCDを出すので、英語バージョンも聴いてもらいたかったんですよね。コラボ曲をまとめたのも初めてです。いろんな方とご一緒してきたなって改めて実感しました。

AmPm / more feat. DedachiKenta & FUNTYME(Lyric video)
FAITH × DedachiKenta - Unbreakable (Official Music Video Full Size ver.)

ーー特に小坂忠さんをフィーチャーした「アイ・キャン・オンリー・イマジン feat.小坂忠」は貴重な音源ですよね。

Kenta Dedachi:本当にそうですね。小坂忠さんは今年の4月に天国に召されましたけど、一緒にコラボさせてもらったことで得られたことがたくさんあったし、彼との出会いによって今の自分があると思っているので。

DedachiKenta / アイ・キャン・オンリー・イマジン feat. 小坂忠
The Burning Deadwoods / No Other Way feat. DedachiKenta & Sincere(Official Music Video)

ーーアルバム『Midnight Sun』はKentaさんの音楽の深まりを感じさせると同時に、国境を越える力を持った作品だと思います。やはり世界中のリスナーに聴いてほしい思いは強いですか?

Kenta Dedachi:うん、そうですね。世界中の人に届けたいし、もちろん日本のみなさんにも楽しんでほしくて。そのために歌詞に日本語を入れているし、日本人としてのアイデンティティを常に持っていたいという気持ちもありますね。BTSがアメリカでビッグになって大きな影響を与えていますけど、日本のアーティストとして、そういう存在の一人になれたらすごいことだと思うので。

Kenta Dedachi『Midnight Sun』

■リリース情報
Kenta Dedachi
メジャー1stアルバム『Midnight Sun』
2022年7月27日(水)配信リリース
2022年8月24日(水)CDリリース
完全生産限定盤 2CD(Disc1 + Bonus Disc)¥5,500(税込)

<収録内容>
・Disc1 ※配信内容と同じ
01. Midnight Sun
02. New Beginning
03. Sparkling Lemonade
04. Tattooed Hollywood
05. Fire and Gold
06. Better days
07. Green Eyed Monster
08. Beau
09. Strawberry Psycho
10. Jasmine
11. Stay with me
12. Dandy Lion
13. Rewind
・Bonus Disc ※CDのみ
01. Strawberry Psycho (Eng.Ver.)
02. Stay with me (Eng.Ver.)
03. Fire and Gold (Eng.Ver.)
04. Beau (Eng.Ver.)
05. Sparkling Lemonade (Eng.Ver.)
06. New Beginning (Eng.Ver.)
07. more feat. DedachiKenta & FUNTYME – AmPm
08. Unbreakable – FAITH × DedachiKenta
09. Walking In The Rain (Alright)
10. No Other Way feat. DedachiKenta & Sincere – The Burning Deadwoods
11. Jasmine (Jpn Ver.)
12. アイ・キャン・オンリー・イマジン feat.小坂忠
13. Where We Started (Acapella Ver.)

公式サイト

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