ポルノグラフィティ、変わらぬ声量で「暁」も話題に まっすぐに歌を届けることへのこだわり

 冒頭で触れた通り、まさに全盛期はここから始まるんだと、自信を持って訴えかけてくるような「暁」は、疾走感のあるバンドサウンドと一度聴くと忘れられない、“立っている”メロディ、そして低音部分と強く美しい高音部分のコントラストが鮮やかかつ妖艶な、岡野のボーカルが響き渡る。ポルノグラフィティらしさと新しさが極上の熱を作り出している。

 同じくMVが公開されている「悪霊少女」は、スリリングなストリングスが推進力になった物語性のある楽曲を、岡野のレンジが広いボーカルでまたひとつ新しい景色を見せている。

ポルノグラフィティ『悪霊少女』MUSIC VIDEO

 強いバラードの「証言」は岡野の表情ある歌が、言葉一つひとつを心の深いところまで響かせてくれる。熱量が高いコンテンポラリーダンスが独特の世界観を生み、想像力を掻き立てられるMVも必見だ。曲によって全く違う新藤の言葉遣いや遊び、鮮やかな押し引きを見せてくれるテクニックはもちろん、特に「証言」に登場する主人公の心情の描き方、表現力は、これまでとは違ういい意味での異質さを感じ、大きな感動で包んでくれる。

ポルノグラフィティ『証言』MUSIC VIDEO

 さらに岡野のボーカルも進化→深化→新化と、ステージを更新し続けている。豊かな表現力、という言葉だけでは説明がつかない、豊潤で芳醇な歌。懐が深い歌というべきか、ボーカリストとしてまさに充実の時を迎えているのではないだろうか。ポルノグラフィティは2人であることを最大限に生かした音作りで、いかに言葉とメロディ、歌、熱をまっすぐに届けるか、ということにこだわり続けている。

 まだまだ先行き不安な世の中。不透明な社会。そんな中でポルノグラフィティの音楽は、聴き手の感情を揺さぶり、忘れていた何かを取り戻し、また、何かに気づかせてくれるーーそんなひと筋の光のような存在になってくれるはずだ。それこそが音楽の役割であり、表現者の強い思いだろう。

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