Lead、ファンとの歩みの中で見つけた「導標」 デビュー20周年迎えた現在地を語る
2002年に平均年齢14.5歳でデビューし、現在はそれぞれがミュージカルなどでも活躍中のLead。デビュー20周年を迎えた7月31日には、デビューからのシングル表題曲37曲に加え、Leaders(Leadファンの愛称)への感謝の気持ちを込めて書き下ろした新曲「導標(みちしるべ)」を収録した初のオールシングルベストアルバム『Lead the Best “導標”』をリリース。パワフルかつシンクロ感溢れるパフォーマンスで三浦大知やw-inds.ら事務所の仲間たちにも一目置かれている彼らだが、自らのこれまでをどう振り返っているのだろうか。新曲「導標」に込めた思いを紐解きつつ、これまでの人気楽曲やライブについてなど、さまざまな切り口で20年のあれこれを語ってもらった。(古知屋ジュン)【インタビュー最後にプレゼント情報あり】
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「導標」は20周年期間中にも育っていく曲
――20周年、おめでとうございます。今日はまず、ベストアルバムに収録された新曲「導標」について聞いていければと思います。20年間のいろんな思いが凝縮された一曲だと思うのですが、歌詞にデビューからのすべてのシングルタイトルを年代順に入れていこうというのは鍵本さんのアイデアだそうですね。
鍵本輝(以下、鍵本):僕らは15周年のときにもそれまでを振り返ったような「Beautiful Day」(2017年)をリリースしているんですが、今回はベストアルバムの最後の曲ということで、それとはまた観点の違う、大きな節目ならではの意味を持たせたものにしたいなと思っていまして。20周年の今だからこそ書ける曲って何だろうな? と考えた時に、全部のタイトルを入れてみよう! と。この全タイトルを盛り込んでいくという作業は“楽しい”の割合のほうが大きかったんですけど、広げようと思えばどこまでも広げられるので「曲の尺感、どうしようか?」というのが個人的には悩みどころでしたね。
――Leadの楽曲の中でも6分超の曲は珍しいですよね。
鍵本:思いやエピソードを詰め込もうと思えば8分、9分とどんどん長くなってしまうので、さすがに怒られそうだなと思って(笑)。
――個人的に考えるこの歌詞の凄いところは、時期ごとのグループの表舞台を飾るシングルのタイトルを散りばめながら、並行してその舞台裏のストーリーをストレートに伝えているところなんですよね。この辺りはやはり、ご本人たちでないと書けない内容なんだろうなと思ったんですが。作詞のクレジットは鍵本さんと谷内(伸也)さんになっていますが、どう書き分けたんですか?
鍵本:まず全体のたたきを僕が作って、後半の「Bumblebee」(2018年)から「Sonic Boom」(2021年)までを伸ちゃんに託した感じです。
――ちなみに古屋さんは、その歌詞を読んでどう思われたんですか?
古屋敬多(以下、古屋):僕はただただ、感動しました。当時のそれぞれの思いもちゃんと汲み取ってくれているし、全てに嘘がなかったので。部分的に僕も書ければと思っていたんですけど、もらった第一稿の時点でほぼ完璧だったので、そんな隙もなかったですね。
鍵本:最初はみんなで書きたいと思っていて「とりあえずベースだけ作っちゃうから、細かいところはみんなで話し合って作っていこう」と言っていたんですけど、第1稿で敬多が「いや、これでしょう」って。
――ストリート時代に福岡から大阪にやって来る古屋さんを残りの3人で迎えに行っていたり、デビューして2人ずつに分かれて同居されたりと、微笑ましいエピソードから始まって。タイトルだけではなくて、たとえば「GET WILD LIFE」(2003年)の歌詞をオマージュした〈腰履きジーンズ いつかのTuxedo〉(原曲では〈腰ばきジーンズ 俺らのタキシード〉)とか、「サクラ」(2014年)と卒業された中土居(宏宜)さんのソロ曲「君~さくら~」(2009年)をかけたのかな? と思う箇所もあったりして、Leadのこれまでをコラージュするセンスが絶妙でした。
谷内伸也(以下、谷内):ちょっと回想モードに入っているというかね。ストリート時代やデビュー当時からの歴史を振り返ってシングルのタイトルを入れていくというので、自分でも「エモいな」と思いつつリリックを書いていました。書きながら、デビュー当時の自分たちの希望にあふれた感じだとか、そのあとの時期の葛藤だとかが昨日のことのように蘇ってきましたね。
鍵本:歌詞を書くにあたって、熱量を一番大事にしたいというのはありました。技術的な部分も大事だと思いますけど、この曲には何よりも気持ちがこもっていないとダメだなって。この機会に自分の思いを全部さらけ出して伝えてみようかなと思って書き始めて、だからこそ気持ちが乗ったというのもあるかもしれないです。
――10周年記念の写真集『Document』のインタビューなどでも語られていてご存じの方も多いかもしれませんが、リリースやライブの間隔が空いてグループとしてもがき苦しんでいた時期がわりと長くて、でもそんな空気感も包み隠さずに伝えようと考えていたんですか?
鍵本:そうですね、「導標」というタイトルを掲げた時点で、僕らのストーリーを歌うしかないと思っていましたから。
谷内:20周年だから改めてというのではなく、僕らのストーリーを歌う上で避けて通れない部分でもありますね。
鍵本:これは確かに自分たちの、ただの友達同士が仲間になっていったストーリーではあるんですけど、誰だって生きていれば挫折だったり上手くいかないことが絶対にあるから、そういう時に「Leadもこういう時期、あったよね」みたいな感じで思い出してほしいというか……1人で悩んでいる人にもこの曲で「いや、俺たちもいるよ」って、寄り添える瞬間になったらいいなとは思っていました。
古屋:その時期があったから、Leadersと一つになってまた一緒に歩んでいこうという気持ちになれたし、それがなかったらその後の10年もなかったと思うので。
――もがきにもがいて満身創痍のような状態から、グループとして改めて現実と向き合うモードに変わったのは、歌詞の中にもありますが“第一章”終盤の「HURRICANE」(2011年)辺りですか?
谷内:「HURRICANE」や「Wanna Be With You」「Still」(ともに2012年)辺りですかね。CDが出せずに「24HRS」や、僕らが作詞で参加したシングルとはバージョンが違う「Wanna Be~」を2011年に配信リリースしたりしたんですけど、僕らの抱えている気持ちを歌詞にしたり、よりクリエイティブ面に関わるようになったことをLeadersが熱く受け止めてくれたのがすごく大きくて、それも励みになりました。
鍵本:リリースがなかなかできないことや、結果が出なかったことを誰かのせいにしていたり……そういう時期を経て、自分たちにとって一番大事な人たちは誰なのかを改めて気付かされたのがちょうど「HURRICANE」の時だったんです。やっぱり僕たちにはLeadersのみんながいてくれないとダメなんだなって、ステージに立ちながら感謝の思いを改めて感じていたと思います。
古屋:リリースもなかなかできなかったりして、ちょっと腐っちゃうみたいな時期もあったりしましたけど、この時期からは自分たちから動いていくことも増えたし、シンプルに「忙しいって幸せなことなんだな」とも改めて気づかされましたね。
――ジャケットの手を差し伸べているポーズと、最後の方の歌詞の〈手を取ってくれた人〉もリンクしているんでしょうかね。試行錯誤しながらも諦めず、この先も進んでいく……というような前向きなニュアンスで曲が終わっていて、そこも含めてLeadersの方々にとっては嬉しい作品になったのではと思います。
谷内:僕は輝からのバトンを受けて、「Bumblebee」のくだりからはこれからのLeadを感じてもらおうと書いたつもりなので、そう感じていただけるなら嬉しいです。
――歌やラップについても、これまでになくエモーショナルなアプローチだなと感じましたが、レコーディングに関してはすんなりいったんですか?
鍵本:すんなりでしたね。「もうちょっと感情を乗せてほしい」という要望が出たりはしましたけども。歌詞と同じように、この曲では上手い下手より、気持ちを込めよう! ということだったので。
古屋:輝がディレクションでも関わってくれたので、要望がダイレクトに伝わるのもよかったなと思います。個人的には最後のサビのリズムが変則的に3連になるところがあるんですけど、最初は今の歌詞とは言い回しが違ったので上手くハマらなくて……その場で「こういう言い回しの方がいいんじゃない?」と、より良くなるところを探りながら進めていきました。
鍵本:この最後のサビで3連を採用するかどうか、僕とディレクターさんとでけっこう議論しましたね。当初の音源のアレンジは3連じゃなかったので、3連になった想定で歌ってもらって、敬多の歌に合わせて最終的なアレンジが完成したという。
古屋:僕はブースの中で2人のやりとりを聞いていたんですけど、やっぱりこれは輝が思いを込めて作ってくれた曲だから、輝の意見を大事にしたいなと思ってフォローに入っていました。
――そこも含めて絶妙な仕上がりだと思いました。終盤の字余り気味の熱気のこもったラップからも思いが伝わりますね。
谷内:出だしはオートチューンでメロを生かしてコーラスも重ねて……という感じなんですけど、最後はもうメロ抜きでリリックを読むようなポエトリーラップに初挑戦しました。輝が元々入れていたのがそういうテイストだったので、それを自分の中に落とし込む形にして。
――歌割りは自然に決まったんですか?
鍵本:最初の段階でなんとなくは決めていましたね。この人が歌ったほうがここの歌詞はすんなり入ってくるだろうとか、あとはメロディラインのキーの高さで誰が適任かなとか。サビは絶対、敬多の伸びやかな声で聴きたいなと思っていました。
――Leadといえば夏っぽい爽やかな楽曲が多いイメージだったので、ウェットな感じからスタートするのも意外でした。
谷内:イントロから哀愁漂ってますもんね。
鍵本:どういうアプローチにしようか迷ったんです。でも構成的にバラードで押し切るつもりも全くなくて、途中でもう完全にイメージを変えてやろうとは思っていましたね。1コーラス目だけ哀愁感やエモさを表現しつつ、後半はちょっとLeadらしい感じを出したくて。僕が作ったトラックの段階ではもう少しダンサブルだったんですけど、nishi-kenさんのアレンジでスタイリッシュな雰囲気に変わりました。そういう化学反応を楽しみたくてお願いしたというのもあるんですけど、上京してからの2コーラス目は〈東京〉というワードから始まるので、nishi-kenさんが都会的な感じを意識してエレピのフレーズを入れてくれたり……僕にはない観点だったので、改めてお願いしてよかったなと思いました。
――なるほど。この曲に振りはつくんですか?
鍵本:振りはなくていいかなと思っています。2コーラス目以降はビートも入っていますし、踊ったほうが自分たちらしいかなとも考えたんですけど、ちょっと情報過多すぎない? ということで。最初は踊らずに表現してみて、ライブを進めるうちに見せ方が完成していくと思うので、20周年期間中に育っていく曲かもしれないとは思っています。