『京都大作戦』、3年ぶりに全日程開催された4日間を総括レポート 10-FEETと全てのアーティストが繋いだ“ライブへの想い”

『京都大作戦 2022』総括レポート

Dragon Ash、マキシマム ザ ホルモン、四星球……各バンドが叩きつけた矜持

 長きに渡って『京都大作戦』に出演し続けているDragon Ashは、最近久々にライブで解禁され始めた「Fantasista」を「お待たせ!」と言って満を持して披露。Kj(Vo/Gt)の圧倒的なステージ掌握力も含め、まさに「俺たちのライブを取り戻しに行く」という堂々たる宣言に受け取れた。それを他のバンドの主催フェスでやれてしまうのがDragon Ashの凄みであるが、短い持ち時間の中で「ROCKET DIVE」(hide with Spread Beaver)や「ハローフィクサー」(10-FEET/『10-feat』収録)とカバー尽くしのセットリストになったことも含め、コロナ禍以降の彼らのステージにおいて特別なものになったことは間違いないだろう。

 Ken Yokoyamaは「自分の方がバンド歴は長いけど」と前置きしつつ、毎年『京都大作戦』を作り上げている10-FEETへのリスペクトを表明。「何を信じたらいいかわからない世の中で、唯一確かなのは音楽がここで鳴っていること」だと語り、ロックフェスを築き上げることの真髄を今一度音楽に込めてみせた。

 ヨーロッパツアーや『HELLFEST 2022』出演を経て、ますます強靭になって戻ってきたマキシマム ザ ホルモンは『時にはまゆ毛を剃らせな祭』という独自のテーマを掲げてオンステージ。ダイスケはん、マキシマムザ亮君、上ちゃんは、ヨーロッパでナメられないために眉毛を剃って過ごしていたそうだが、『京都大作戦』のステージでも、まさかの眉毛剃りを生披露。そこから「皆殺しのメロディ」「ロッキンポ殺し」「Kill all the 394」と畳み掛けてオーディエンスを“皆殺し”にした後、「恋のスペルマ」で一気に昇天させる圧巻のライブだった。直後の10-FEETのライブにもメンバーの眉毛を剃るためにダイスケはんとナヲが登場し、10-FEETは3人とも綺麗に眉毛を失うことになったのだが、ヤバTのもりもりもとといい、何かと“毛”がなくなりがちな今年の『京都大作戦』であった。

 新型コロナウイルス感染により、残念ながら出演キャンセルとなってしまったバンドがいる一方、ピンチヒッターとして2週連続で出演することになったバンドもいる。

 10-FEETと同じく京都を代表するバンド ROTTENGRAFFTYは、初日出演時には「立ち止まったとき、いつでも手を差し伸べてくれるのが10-FEETでした」と盟友への感謝を語り、ピンチヒッターとして出演した3日目には、キャンセルとなってしまったACIDMANに想いを馳せることで、助け合いながら前進していく大切さを身をもってステージで表現してみせた。

ROTTENGRAFFTY

 四星球は、2日目出演時に「なぜか『京都大作戦』にはいつも代打でしか呼ばれないんです。来年はちゃんと呼んでくださいー!」と言い放ち、笑いと悲壮を混ぜ合わせながらコミックバンドの矜持を叩きつけたのだが、翌週のクリープハイプのキャンセルでまさかの2週連続出演を果たすこととなり、しっかり“代打の神様”としての伏線を回収。しかも「四星球が出演すると中止にならない」という冗談みたいな言霊まで現実にしてしまったのだからすごい。謎の新曲「UMA WITH A MISSION」や、NAOKIにせんとくんのコスプレをさせたインパクトも相まって(しかも激似だった)、今年の『京都大作戦』の中でも特に記憶に残るライブとなった。

 もちろん、牛若ノ舞台の充実ぶりも忘れてはいけない。京都出身の新星 Hakubiや、「10-FEETより宇治の血が濃い!」と豪語する夜の本気ダンス、10-FEETに憧れたところからバンドが始まったLONGMAN、メタルコアやヘヴィメタルを出自とするPaleduskやTHE冠、10-FEETと同じく地元を拠点に活動するSHANKやAge Factory、技巧派ミクスチャーを叩きつけるSPARK!!SOUND!!SHOW!!やSuspended 4th、入場規制で人が溢れたSaucy Dogやgo!go!vanillas、貫禄の存在感を見せつけたNAMBA69、上江洌.清作&The BK Sounds!!……など、若手から中堅/ベテランまで多様なスタイルのアーティストが入り乱れる。それは『京都大作戦』が表面上のジャンルではなく、核の部分で10-FEETと共鳴したアーティストたちが“自分らしいライブ”をかませる場所であるということだ。さらにそこには、既存のロックの壁を打ち壊し、ライブハウスを主戦場にしながらときには大規模なライブも行い、直近では初のホールツアーも開催、TAKUMAがソロデビューを果たすなど、10-FEET自身がキャリアを通して幅広いフィールドで活動することを肯定してきた意味も、大きく表れている。

 そしてやはり、『京都大作戦』の最大の宿敵である天候にも触れておかねばならない。4日間とも決して快適な天候とは言い難く、開催日に台風の直撃こそなかったものの、初日は猛暑、2日目は雨天、3日目は雷雨、4日目が強いて言うなら穏やかな曇りといったところ。何かと雨が心配される『京都大作戦』だが、初日は不意打ちを食らうような猛暑(最高気温38度超え)で、早速このフェスなりの洗礼を浴びたような気分になったが、“太陽と音楽”という至極シンプルな光景を目の当たりにして「これぞ夏フェスだよな」という感慨に浸れたのも紛れもない事実だ。2日目は自他共に認める雨バンド G-FREAK FACTORYの出演も相まってか、朝から雨に。しかし自分達の出番ではしっかり太陽を呼び込んでいたことを見ると、10-FEETと同じく25周年を迎えたG-FREAK FACTORYも間違いなく“持っている”バンドなのだと思わされた。台風をやり過ごして1週空いた3日目は、『京都大作戦』で雷雨にまつわる伝説を数々残しているROTTENGRAFFTYの前で、またしても雷雨による一時中断が発生。その後も雨が降り続ける1日となり、一筋縄では“成功”をプレゼントしてくれない太陽が丘の空の厳しさを思い知った。とはいえ、そこを乗り越えた4日目は、地面のぬかるみこそ残っていたものの、全日程通して最も快適な天気となり、気持ちよく終幕を迎えることができたのではないだろうか。

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