松下洸平、再デビューから1年経つ音楽活動への手応え 徳永英明やwacciとの共演も振り返る

 松尾潔プロデュースによるシングル『つよがり』で昨年8月に2度目のメジャーデビューを果たし、昨年12月に1stミニアルバム『あなた』を発表、今年1月には全国ツアー『KOUHEI MATSUSHITA LIVE TOUR 2022 〜CANVAS~』を開催するなど、俳優のみならず、アーティストとしても充実した活動を展開している松下洸平。ライブではカバーも含め、幅広いポップスを歌で表現しているが、彼の音楽におけるルーツや制作の刺激はどのようなものなのだろうか。『2022 FNS歌謡祭 夏』(フジテレビ系)出演も話題になったばかりの松下に、これまでのキャリアや、再デビュー後の手応え、今ハマっている音楽などについて話を聞いた。(森朋之)

「やっぱり音楽っていいな」という刺激を受けた原点

ーー松下さんの音楽的なルーツや、音楽に興味を持ったきっかけを教えてください。

松下洸平(以下、松下):家族はソウルやディスコサウンドが好きで、僕も子どもの頃からそういう音楽に触れていたんです。物心ついたときからブラックカルチャーに興味があったというか、中学生の頃に兄がヒップホップを聴き始めた影響で僕もいろいろ聴くようになって、その流れでR&Bが好きになりました。自分でも歌ってみたいと思ったきっかけは、映画『Sister Act 2(天使にラブ・ソングを2)』なんです。「芝居って素敵だな」ではなくて「やっぱり音楽っていいな」という刺激を受けたんですけど、今でもときどき観返しますね。例えば悩んだときや立ち止まってしまいそうなときに観ると、自分のルーツに立ち戻れるというか、「こういう楽しさ、ときめきを求めて始めたんだよな」って思い出すんですよね。常に原点にある作品です。

ーー教会を舞台にしたミュージカルが原点というのは、俳優と音楽の両軸で活動している松下さんの在り方につながってますよね。ソングライティングはいつ頃から始めたんですか?

松下:音楽の専門学校に入ってからなので、19歳とか20歳のときですね。当時は楽器が弾けなかったので、歌詞を書いて、鼻歌で歌っていました。「こんな曲なんだけど」と友達のミュージシャンに聴いてもらって、伴奏をつけてもらってたんです。在学中にオリジナル曲を数曲作って、学校内のオーディションに参加したんですよ。勝ち進むと外部のレコード会社や事務所の方に聴いてもらえるんですけど、たまたま最後まで行けて、レーベルの方の前で歌える機会をもらえて。そのときに声をかけていただいたのが、この業界に入ったきっかけですね。鼻歌で作った歌を形にしていったところから、いろんな人と繋がることができました。当時から一緒に音楽を作ってくれていたのがカンノケンタロウなんです。

ーーNulbarichのメンバーとしても活躍しているギタリストですね。

松下:彼とは学生のときからずっと一緒に曲を作ったり、路上ライブをやったりしていて。でも、僕のほうが先にデビューが決まって、役者も始めてまったく違う世界に飛び込むようになったので、活動のフィールドが変わって、ほとんど連絡も取らなくなってしまったんです。そこから数年が経って、あるとき共通の知り合いに「カンちゃん、元気にしてるのかな?」って聞いたら、「Nulbarichで武道館ライブとかやってるよ」と言われて。僕はまだテレビにも出ていなかったのでちょっと複雑な気持ちになったんですよね、そのとき。

ーー「そんなにすごいことになってるのか」みたいな?

松下:そうですね。Nulbarichは大好きで聴いていたんですけど、当時はメンバーをオープンにしていなかったので、カンちゃんがギターを弾いてることも知らなかったんです。そこからさらに数年が経って、去年もう1回音楽活動を始めることになったときに、真っ先に声をかけたのがカンちゃんだったんですよ。「また音楽をやるから、サポートしてほしい」と連絡したら、二つ返事で「やろう」と言ってくれて。楽曲のアレンジやレコーディング、ツアーのバンマス(バンドマスター)までやってくれてるんです。

ーーしばらく離れていた2人の道がまた1つになったと。松下さんは昨年8月にシングル『つよがり』で再メジャーデビューを果たし、その後ミニアルバム『あなた』や配信シングル「KISS」をリリース、全国ツアーも開催しましたが、ここまでの手応えはいかがですか?

松下:役者業を始めたときとすごく似ていて、難しいなって思うんです。もちろん楽しい仕事だし、「どんなものを作れるんだろう?」とワクワクしていたんですが、実際に始まってみると「こんなに大変だとは……」と思って。ライブやツアーも、音楽番組もそうなんですが、常に納得の行くパフォーマンスができているかといえば、正直まだ自信はないです。やればやるほど深いなと思うし、まだまだ学ばなくちゃいけないことがたくさんあって。今は自分磨きの段階ですね。

ーー試行錯誤の途中だと。

松下:そうですね。いろいろな機会をいただくなかで、自分に足りないスキル、表現方法を獲得していくしかないし、それは現場でやっていくしかないので。その感覚も芝居に似てるんですよ。演技のレッスンのなかで得られることもありますけど、やっぱり現場を重ねるしかなくて。どれだけ練習して準備しても、舞台の上で緊張して何もできなかったこともあって。日々、違うお客さんの前で同じ芝居をすることの難しさも、実際にやってみないとわからないことなので、音楽活動においても、その洗礼を浴びているところです。先輩の背中を見て、いろいろなことを学んでいるのも芝居と同じですね。

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