jon-YAKITORY、新曲「謀反くん」に無名の歌い手・Yupman起用 Adoに続くヒットとなるか

jon-YAKITORY feat.Yupman「謀反くん」

 そんなjon-YAKITORYが新曲「謀反くん」をリリースした。「シカバネーゼ」や「無知ンち」を彷彿とさせるキャッチーなタイトルの本曲は、シンガーとしてYupmanを迎えている。男声であるということ以外の情報を一切公開していない歌い手だ。これまで、ブレイク直前のAdoの起用や、クリエイター同士の新たな出逢いとコンテンツ制作の可能性を広げるWEBプラットフォーム『MECRE』を通して出会ったシユイとのコラボなど、ブレイク前の歌い手を発見し、その魅力を的確に汲み取った楽曲とのマッチでボカロシーンを盛り上げてきたjon-YAKITORY。

 そんな彼がYupmanと作り上げた今作は、冒頭の淡々としたビートとクラップに続き、右から左へと流れていくサイレンが耳を掴む。シンプルながらどこか混沌を思わせるトラックに乗るメロディは、これまでのボーカロイド界隈に多かったような極端に広い音程を行き来するメロディラインではない。どちらかというとシンプルなメロディを辿るYupmanの歌声は歌詞から連想できるような激しい歌声でも冷笑的な歌声でもなく、言葉の隅々に歌詞とマッチするような衝動を思わせる歌い回しが散りばめられた、抑揚やニュアンスに富んだ歌声だ。サビで頻出する〈ごめんなさい〉の歌詞は特に様々なニュアンスで歌われており、主旋律の後ろで鳴っているコーラスでも、吐き捨てるようなものから笑いを含んだものまで表現の異なる〈ごめんなさい〉を聴くことができる。jon-YAKITORYによるミニマルなメロディと音作り、歌詞に頻出するキーワードの配置が、Yupmanの歌声の絶妙な変化を目立たせることに成功しているのだろう。歌声には明るい成分も十分に感じられどこか爽やかさを残しているため、曲調を問わず、明るい楽曲も暗い楽曲も違和感なく歌いこなせそうな歌い手という印象だ。

 また、楽曲は2分17秒という短さ。サビの後半でリズムを変化させたり、2コーラス目はAメロのあとにガットギターを用いたフラメンコ風の軽やかな落ちサビに突入し雰囲気を変えるなど、短い中で様々な工夫が凝らされているため、Yupmanの歌声とともに聴きどころ満載である。

謀反くん / jon-YAKITORY feat. Yupman -MUHONKUN-

 今作の「謀反くん」を聴くだけでも、様々な音楽性をミックスしてオリジナリティある1曲に仕上げるjon-YAKITORYのソングライティング力と、ボーカルの魅力と楽曲を融合させる優れたバランス感を聴き取ることができる。その作曲力と先見の明は、ボカロPとしてはもちろんのこと、作曲家としてもこれからのボカロシーン、ネットシーンを盛り上げていくだろう。そして、謎めいた歌い手・Yupmanの今後の動向に注目だ。

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